2025/12/23
駐日ジョージア・レジャバ大使には幾度も地元箱根、湯河原にお越し頂いてきましたので、今回私がジョージアを訪問することになりました。
ジョージアは人口380万人の中央アジアから欧州へのハブと呼べる地域にあります。大相撲では栃ノ心関、黒海関、臥牙丸関などを輩出していることでも知られています。
政治的には現与党が2024年の議会選挙により4期連続で政権を維持していますが、野党は選挙結果を受け入れず、抗議活動が行われました。外交政策としては、2024年11月にコバヒゼ首相がEU加盟交渉を2028年末まで開始せず、EUからの全ての予算支援を拒否する旨発表しています。一方、中国とは「戦略的パートナーシップの確立に関する共同声明」を発表しています。アジアインフラ投資銀行(AIIB)にも参加しています。ロシアとは2008年の南オセチア紛争以降現在に至るまで外交関係は断絶していますが、ロシアによるウクライナ侵攻により多くのロシア人が流入し経済成長の要因にもなったと言われています。
日本には元駐ジョージア大使の上原忠晴理事長による日本ジョージア商工会議所が設立されており、日本企業の対ジョージア投資誘致及び両国間の貿易促進が進められています。Toyota Caucasus LLC(自動車卸売業)など21社が進出しています(2024年)。街中でも日本車(中古車を含む)を見かけることが多く、親日国と言えます。
ジョージア初日は、ビジネス・テクノロジー大学(BTU)のエヌキゼ学長との面会からスタートです。BTUは来年10年目を迎える大学ですが、イノベーションとテクノロジーをミッションにデジタル人材を育成しています。AI分野、コンピューターサイエンス分野の博士、修士号のコースにも力を入れており、学生数は1万人になります。そのうち女性の割合は4割です。
BTUはUN Womenと日本の支援でウクライナ難民の女性・女児の強靭化のプロジェクトを進めています。起業家を目指すウクライナ人女性を対象にICT研修を含む職業訓練を日本のODAで実施しました。「プログラミング教育、STEM教育は強化していく必要がある」とエヌキゼ学長から、日本の支援へのお礼の言葉もありました。ドイツの大学から支援を受けたラボではXR、VR、ARの研修の様子も見せていただきました。デジタルツインでトビリシの課題解決にヒントを得る方法もありそうです。

ジョージア2日目はツカルトゥボへ。アレクサンドレ・オノプリシヴィリ・リゾート開発庁長官とリラ副長官は先月来日された時以来の再会です。観光局からはオミアゼ観光庁長官にもご協力頂いています。ツカルトゥボは自然に湧き出すラドン含有の炭酸鉱泉(約33〜35度)を療養に用いてきたところです。1920年に温泉療養地化し、ソ連時代には年間約10万〜12万人程が訪れる人気観光地でありました。
今回の訪問は、地方自治体間の交流を意識してのことです。2018年には滋賀県彦根市とムツヘタ市との間で「観光および歴史遺産活用分野における覚書」が締結されました。2025年5月には茨城県牛久市の市長一行がテラヴィ市を訪問し、姉妹都市提携に向けた協議を実施しています。地元、湯河原町には2025年11月にジョージア・リゾート開発庁長官一行がお越しになり、ツカルトゥボ市とのオンラインミーティングが11月月末に開かれました。共に温泉で有名な町であることから、ゲナディ・ブランチヴァゼ市長、ティムラズ・チェイヴィリオン市議会議長と内藤喜文湯河原町長、村瀬公大町議会議長が既に意見交換をしています。
イメレティ州のザルカリアニ知事との面談を行いました。文化遺産にも恵まれた地域でワインと食は観光資産となっています。観光DMOやウェルビーイングについての他、行政におけるAIの活用についても意見交換しました。アナログ規制改革を私からは紹介したところ、ジョージアでは行政のドキュメントは全てデジタル化、アーカイブ化している事例を紹介いただきました。検察庁でもデジタル化したドキュメントをもとに業務を進めることができるようになっているそうです。不動産登記や起業、パスポートの発行などデジタル化を通じて時間短縮が可能になった事例もお話しいただきました。ジョージアではマイナンバーカードを使っていないので、本人確認の方法について尋ねたところ、ID番号と名前と顔と携帯番号を使っているようです。少子化対策や子育て世帯への支援策、都市への集中、地方創生など幅広い議論ができました。

ツカルトゥボ市はバランチヴァゼ市長との意見交換です。ラグビーのスタジアム建設によるスポーツ観光や医療観光の取り組みを強化しているところでホテルやサナトリウムの改修計画も進んでいます。温泉の出る70ヘクタールの公園があり、日本人の観光客も増えつつあるようです。
スパも訪問しました。医師が常駐しており、X線機械や血液検査や尿検査ができるラボも揃っています。医師の処方により、スパでのメニューが作られていきます。泥パックや水圧による療法など、ストレスを発散しリラックス効果も期待される施設になっています。数週間単位の長期滞在者が各国から来られているそうです。英語に対応していますので、ジョージア語が話せなくても問題ありません。

ジョージアの3日目。
経済持続発展省ではイオセリアニ次官、グブシゼ局長はじめ関係者と懇談しました。

国際関係、通信の分野で経済持続的発展省と総務省の間ではMOCが結ばれています。ジョージアではインターネットへのアクセスは民主主義に重要である、という考え方のもと5Gも推進してきました。行政のデジタル化も喫緊の課題ということで、出生証明書、死亡証明書などワンストップでオンラインで手続きできるようにしています。個人情報の保護、トラストマーキング、データマネージメント庁の役割、アジアと欧州のハブとしてケーブルを繋げる計画、防災の事前警告など多分野での意見交換を行いました。防災DXは日本への期待が大きいことを感じています。

財務省ではカカウリゼ次官、予算の透明性を担当するグルア担当官からプレゼンテーションをして頂きました。国だけでなく地方自治体でもE-Budget(電子予算)が遂行されており、予算と政策をリンクさせる考え方が取られています。ダッシュボードも予算の透明性、予算の管理、国民参加の分野で高い評価を得ています。オープン・バジェット・サーベイ2023によると、透明性ではジョージアが1位、日本は31位、予算管理ではジョージアが4位、日本は44位、国民参加ではジョージアが5位、日本が25位となっています。https://internationalbudget.org/open-budget-survey/rankings
優先順位や予算制約を意識した政策作りを進めている背景には、国民の理解、参加があると思われ、その点質問しました。100点満点を取るのは簡単な分野ではないものの、財務省のサイトを国民が見て国民の質問に対してフィードバックする取り組みや、オンラインで財政改革を公開する機会を通じて国民参加を促し、地方自治体でも同様の企画を進めているのだそうです。
各プロジェクトは、政策により収入を増やせるか、人口のうち何パーセントに影響するか、Co2削減に効果があるか、などポイント制になっており、3ポイントから0ポイントまで点数化されます。数値化させることで客観性、合理性を担保する仕組みと言えます。
戦略的重要政策、政策書類、予算フレームワークがリンクしていて、SDGs、ジェンダー、気候変動、部門別戦略など関連プログラムはタグ付けされています。ジェンダー分野では例えばUN WOMENと、気候変動ではEUと連携していることもあり、国際機関の予算とのタグ付けも意識されていることも分かりました。また、財務省の中にエレクトロニック国庫がありAIも活用していることが紹介され、デジタルラリの可能性についても言及がありました。





イノベーション技術庁(GITA)での意見交換ではカスラゼ長官と。2年前の来日時にはデジタル庁にも訪問いただきました。スタートアップエコシステムを意識したラボがあり、ハッカソンやインキュベーターとの連携も推進しています。年間40程度のスタートアップへの助成金を出しておりアワード表彰式の様子も紹介頂きました。
階段に書かれているメッセージも秀逸です。
IT企業には税制優遇もあり、外国人であってもITプロフェッショナルには特別住民票も用意されています。クタイシではデジタル博物館の建設のプランがあり、日本科学未来館との連携も視野に入っているそうです。

議会では、サムハラゼ・ジョージア日本友好議員連盟会長とメズリニシヴィリオン議員と意見交換をしました。おふたりとも2年前に箱根を訪問してくださっておりトビリシでの再会を喜び合いました。「領土の一体性の問題を平和的に解決していきたい」という問題認識につきロシアを意識した言及がありました。ロシアとの間で貿易関係や人材交流はあるもののジョージアの国会議員はロシアの外交団と会うことはありません。
今ジョージアの1人あたりGDPは10,000ドルを超えてきています。経済成長率は7.2%なので、高い経済成長率が大きな特徴となっています。デジタル産業や観光産業は経常収支を黒字にする産業に成長しつつあります。サイバーセキュリティや防災について等共通のテーマにつき更にプロジェクトを具体化させていきたいと考えています。

JICAのプロジェクトで「一村一品ショップ」が11月にオープンしています。地域の特色ある産品をブランド化し、国内外に発信するローカルブランディングの手法です。
JICA協力隊員としてジョージアで活躍されている日本語教師、空手の先生、ウェブデザイナーのノマドワーカー、理学療法士、障害児者支援の方々のお話もうかがいました。日本語や日本文化への関心が高いこと、空手はドメスティックバイオレンスを受けた女性達へ指導していること、女性が1人で歩いていても問題なく治安が良いこと、物価が安く働きやすいこと、コワーキングスペースが充実していること、オリンピアンなどアスリートの療法にあたっていること、キャッシュレスが進んでいること、パラスポーツの振興も支援していること、温泉スパは日本人にも好まれる場所であることなど、ジョージアに暮らす日本人として感じていることを教えていただきました。
ジョージア最終日。ジョージアを代表する通信企業であるシルクネット社ではレバン・ブチュクリCCOらとの面会。行政と金融分野のデジタル化、AIエージェントの活用、デジタルデバイド対策、データセンター、黒海ケーブル、サイバーセキュリティなど幅広いテーマでの議論ができました。

法務省ではドゲブアゼ法務次官、モルゴシア法務次官と面会。法務省の重視しているものとして、人権保護、法の支配、裁判制度、行政サービスの向上など説明がありました。「誰ひとり残さない」というコンセプトがジョージアの法務省にもあり、山あいの集落には公共サービスを提供する車が運行しているそうです。私からは民事裁判のIT化やモデル定款の活用による起業のスピードアップについて日本の法務省の取り組みをご紹介しました。ジョージアはビジネスや不動産の登記に力を入れているので世界銀行でも高い評価を得ており、来年には国土の95%の地理データ化が完成するとのことです。地方から中央政府へデータの集中化を進めてきたこともうかがいました。
法務局では公共サービスホールを視察しました。個人から企業まであらゆる手続きをオンラインではなくホールへの訪問で実施したい人のために効率的に運営されています。オンライン手続きも可能ですが、起業などでじっくり相談したい人、カフェでコーヒーを飲みながら手続きしたい人などにも使いやすい環境になっていました。障害者へのアクセシビリティも確保されています。


パスポートの受け取りにかかる時間は5分程度で、施設内のチューブで窓口にまでパスポート等が送られてきます。人間が窓口を回る必要はなく、機械が届けてくれるシステムになっているのが印象的でした。

外務省ではフフティシアシヴィリ次官との面談を実施しました。今後デジタルの文脈でジョージアと具体的な政策議論を始めることにもなりました。防災、農業、人材交流と話題はつきぬほど、日本とジョージアとの間の交流を深める訪問となりました。

ジョージア政府、議会も訪問に関する報告をアップしていましたので参考までに掲載しておきます。
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