2025/8/14
グローバルファンド日本委員会議員タスクフォース(FGFJ)によるザンビア視察。逢沢一郎議員、藤井一博議員、秋野公造議員、おおつき紅葉議員、高木真理議員、福田徹議員、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)からは、ダイアン・スチュアート渉外局ドナー・リレーションズ部長と、馬渕俊介保健システム・パンデミック対策部長が参加され、主催の(公財)日本国際交流センター(JCIE)の皆さんも同行されました。

日本が創設に関わり現在も主要ドナーである世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の支援の成果と課題を、実地にて確認することを目的にザンビアに向かいました。
1、エイズ・結核・マラリアの罹患と死亡の減少、現在の課題
2、保健システム強化(保健人材、検査ラボ、サプライチェーン、サーベイランス、保健財政など)におけるザンビア政府の施策とグローバルファンド支援の現状
3、ザンビアの感染症対策におけるコミュニティ組織やNGO・NPOの役割
4、援助からの自立に向けたグローバルファンドの支援
5、ザンビアにおける、グローバルファンドと他の保健分野国際機関の支援の補完関係や多国間機関ならではの役割と課題の抽出
さらには、日本企業の製品やサービス、技術の活用についてもヒアリングできました。
ザンビア共和国は民族は73部族、英語が公用語で8割近くはキリスト教。元首はハカインデ・ヒチレマ大統領です。人口は2000万人で増加率は2.3%、平均寿命は66歳と高めです。
鉱業は銅、コバルドなどを輸出。鉱山開発と観光(ホテル経営)にも中国の進出が顕著、空港も中国資本です。街中では「中国、韓国、日本、どこから来たの?」と声をかけられますが「出身の村にはJICAがいたんだ」と話してくれる人もいて、日本に好意的な様子も感じられます。
※※※
ザンビア初日は国立マラリア根絶センターの視察から。このセンターは1997年に設立され、設立当時はマラリア対策センターと呼ばれていました。ザンビアにおけるマラリア対策の設計、実施、監視の責任を担って来た機関に、予防、根絶、治療、研究まで幅広い分野をカバーしている専門家が集まっています。確固たる政治的コミットメントを背景とした戦略的投資により、まさに同センターがビジョンとして掲げる「A malaria-free Zambia」(マラリアゼロの国、ザンビア)に向かって進んでいます。グローバルファンドをはじめ、多様な組織と強固なパートナーシップを築いているのも特徴です。気候変動等による影響でマラリアの発生件数は近年増加傾向にあり、かつては夜蚊に刺されてマラリアに罹患することが多かったのですが、蚊の行動が変わってきて昼間も蚊に刺される可能性が高くなってきています。

グローバルファンドの援助により特に妊婦や5歳未満の子供を対象に蚊帳を提供しています。忌避剤の効果は3年程度と思われるので、3年に1度蚊帳を渡したり、9ヶ月のこどものはしかのワクチン時に蚊帳を渡したりと、工夫しているそうです。一方で「漁師が蚊帳を漁に使ってしまう」という問題が発生しているというエピソードも紹介いただきました。
感染が出ていないエリアでは再発させないようにし、感染の低いエリアでは根絶を目指し、感染者数や死亡者数が多いエリアでは対策を強化する、とエリアに分けて対策をしていると話していただきました。
さらに、コミュニティヘルスワーカーたちは、疾患毎に分けるのではなく、あらゆる疾患に対応できるようにしていますし、検査や薬の処方もできる訓練を積んだボランティアにも活躍してもらっています。一方で、アメリカの政策転換の影響等もあり、グローバルファンドからの資金の減額で、ボランティアが報告をするための携帯電話や自転車などの予算を維持できるかが課題になってきており、迅速検査のキットや薬の確保、薬剤耐性の研究も難しくなりつつあります。
毎日3人がマラリアで死亡している現状を考えると、ザンビアにとってマラリアは一番大きな公衆衛生上の問題です。関係者からは対策を強化していきたいという強い意志が感じられました。

※※※
ザンビア2日目は朝8時のエライジャー・ムチマ保健大臣との面談からスタート。ザンビアにおける三大感染症(HIV、結核、マラリア)の現状について説明いただきました。3人に一人はマラリアに罹患している現状がデータからは出てきています。ただし死亡率は100,000人に6人まで下がっています。治療のみならず予防にも力を入れていること、地方部の対策を強化する必要があること、コロナの教訓からロジスティックスが重要であること、グローバルファンドや日本政府など国際機関との連携が不可欠であること、人材育成にも力を入れていること、医療システムが構築されていること、支援額の減少はそのまま薬の供給減になってしまうこと等ご報告いただきました。

予防薬はワクチンよりも安価であるため、5歳以下の子供に提供することでマラリア対策を進めることができますが、USAIDの解体の影響により「グローバルファンドが担当してる州では対策を継続できてもUSAIDの担当州では支援が止まってしまう」といったことが起きる可能性があります。全国規模で予防薬を提供しようとすると、対象年齢を下げていくことも検討されるなど、マラリア根絶が進んできたのにも関わらず、流れに逆行する現象が出てきているのが現実です。
ザンビア国会の厚労委員会では、医療品やサービスが必要な地域に確実に届いているかをモニターする役割も持っているとのことで、透明性が維持されていることは、支援の基礎になると思います。また国として、この政権では医療政策を一番の優先順位にしているので、テレメディシン(遠隔医療)を可能にする機材や救急車やトヨタのランドクルーザーなどが日本への要請として伝えられました。私からは、病院など施設だけでなく医師らを教育する人材育成も併せて行なっていくこともコメントさせていただきました。医師などのヘルスケアワーカーは55%の充足率(給与の支払いが難しいことも理由)ですが、一方でコミュニティヘルスケアワーカーは架け橋的な役割を果たしており、その地域に住み、信頼され、地域から給与が支払われている人々がいるのは、強みと思われます。コミュニティベースのボランティア(CBV)は多能型保健員(polyvalent health workers)と言われています。
「高齢の医師でも機材があれば遠隔診療が可能になり、地方の健康課題に対応できる」というムチマ保健大臣の言葉には、テクノロジー国家日本からの技術移転に期待する思いが込められていました。

続いてザンビア国立公衆衛生研究所を訪問しました。エビデンスベースで全国公衆衛生監視システムを主導するほか、コレラ、コロナ、ポリオ、エムポックスなど緊急事態への全国対応を調整するザンビア公衆衛生緊急対応センター(PHEOC)を運営しています。エビデンスベースド監視、イベントベースド監視、指標ベースド監視について詳しく説明して頂きました。1200のタブレットがデータ収集に使われているほか、緊急事態には移動式のラボも出動しています。全国サーベイランスシステムでは、電子媒体も活用して医療施設等から集まってきたデータからトレンドを読みます。イベントベースド監視では、コミュニティにおける現象を報告するシステムがあります。死亡率のサーベイランスも行なっています。このように複数の仕組みからデータが中央に集まってきます。このように集まってきたデータを、通常収集しているデータと組み合わせて使いやすいフォーマットにすることが公衆衛生上重要である、という考え方が伝わってきました。緊急事態への対応にあたるにはデータが基本です。本来診療などに充てられるべき時間のうち、報告レポートを書くためだけに3割の時間を割いてきたアフリカの保健の現場は今やデジタルの活用で改善されています。


ダッシュボードも見せていただきました。インフォメーションマネージメント、モニタリング、評価の専門家がいることで正確な分析につながっていると思います。毎週木曜日には、データに基づいた関係者会議が開催され、地域毎の分析、対応も可能になっています。コロナを機に急成長した感染症の対応体制、アフリカCDCのハブとして機能しているザンビアのモデルを他のアフリカ諸国に広げる事が効率的なのではないか、とも思われました。

ザンビア大学の医学部の学生達の活躍にも期待したいです。

JICA技術協力プロジェクト「感染症対策のためのラボサーベイランス強化プロジェクト」では、検体検査診断に基づく感染症流行状況監視の能力向上を目指しています。高優先度(コレラ下痢症や狂犬病)感染症の早期流行検知・対応能力を強化すること、信頼性の高いラボマネジメント能力を強化すること、サーベイランスのための公衆衛生検査室ネットワークを構築し、フィードバックやトレーニング等を通して検査の質を保つための質管理ネットワークを強化すること、これらもJICAの大きな貢献です。サーベイランスの検査体制を活用しコレラ薬剤感受性情報(抗菌薬治療の効きやすさ)の提供、コレラ流行状況の見える化により患者が集積しているクラスター形成の提示、患者情報リアルタイム分析による支援も、JICAの協力プロジェクトの成果です。

カニャマ第一次レベル病院もJICAの支援を受けて建設されたもので、外来診療、母子保健、基本的な救急医療サービスの提供をしています。プライマリヘルスケアの強化における日本とザンビアの協力の代表例です。帝王切開や基礎手術等のサービスが提供できるようにアップグレードされました。
ルサカ郡の5つの病院の病院運営管理能力を強化し、質の高い医療サービスを提供できるようにすることを目的に「カシオペアプロジェクト」もまたJICAにより推進されています。医薬品、機器、人材など資源が医療施設で効果的に活用されるように支援しています。病院マネージメントとしてミッション、ビジョン、バリューを立てて、シニアマネジメントが集まり病院の運営方針を決められるようになりました。日本の病院での研修等を通じてザンビアの病院運営がザンビアの人々の力で変わりつつあるようです。必須医薬品・医療材料の分野では、サプライヤーから臨床薬剤師の役割を果たせるようになり、代替薬の助言によって無駄なく薬が使われるようになりました。代替薬の知識がないと、使えるはずの薬がそのまま放置されてしまったことがあったそうですが、今は薬剤の適正使用が促進されています。また医療機器管理の分野では、故障報告から故障予防へ考え方がシフトされ、医療機器の稼働状況の定期報告、作業依頼カードの導入も進んでいます。感染予防管理の分野では、手術部位感染(SSI)サーベイランスを含む確立されたIPC(感染予防管理)実践を日常業務に組み込むようになりました。病院という現場でJICAが貢献しているこうしたプロジェクトは、保健省によるガイドラインや病院マネジメントハンドブックにも反映されています。

コミュニティに情報を届けるボランティア(給与は受け取っているようです)の活動の様子をお話しいただきました。妊婦や乳幼児には栄養が必要なこと、ゴミは集積所に持って行かないと洪水が起きた時に感染症が広がること、手を洗うときに石鹸を使うこと、綺麗な水を飲むことなど、基本的なことをポスター等と共に伝えています。赤ちゃんの栄養状態を図る時にはきき腕ではない方で図るなど細かく対応しています。チラシを渡してレクチャーをするだけでなく、いつでも質問できる、相談できる場所にボランティアがいることに誇りを感じていることも伝わってきました。実際に病院で結核の治療を受けた人からも話を聞きましたが、「ボランティアが6ヶ月にわたって薬をちゃんと飲んでいるかチェックをして、フォローアップもしてくれた」というエピソードも紹介されました。コレラに罹患した女性も、「ボランティアがバケツや石鹸など必要なものを持ってきてくれて水は沸騰させてから飲まなければいけないと教えてくれた」と話してくれました。ボランティアは1人あたり500人受け持っているそうで、週5日、毎日30人程度の健康管理に責任を持っています。コミュニティベースの活動の効果の高さを感じるヒアリングとなりました。
※※※※
ザンビア3日目。クリニック訪問など現場視察が続きます。

結核の状況を見ると、ザンビアは世界のワースト21位という状況にあります。公益財団法人結核予防会(JATA)の事業地を訪問しました。コミュニティボランティアたちが歓迎してくれました。歌と踊りの上手な彼らは、ダンサーではなく、結核の検査を促すボランティア達で、コミュニティに出かけて行ってパフォーマンスをすることで地域の人々を集めているのだそうです。歌と踊りをきっかけに集まってきた地域の人々に結核の検査を促します。陽性患者が見つかったらコンタクトトレーシングをして、家族全員検査をすることになります。


ODA資金により日本のNGOが結核診断技術の向上を図るプロジェクトを実施中で、富士フィルムのX線撮影装置FDR Smartが活用されています。AI搭載X線撮影装置FDR Xairhaは低中所得国での結核検査に役立つとして、グローバルファンドを通じて調達されています。ザンビアはWHOが定める上位20の「結核高蔓延国」と「結核とHIVの重複蔓延国」に指定されています。HIV陽性者は結核にかかりやすいと言われていますが、HIVと結核両方に罹患している患者の割合は2018年60パーセントだったものが今は32パーセントにまで下がってきたとのこと。HIVの対策が進んできた成果といえますが、アメリカの支援が止まるとこの状況が悪化することが懸念されます。


富士フイルムのX線検査システムは、地元のベンダーによりメンテナンスできる体制で支えられています。南アフリカとドバイで地元のエンジニアがトレーニングを受けています。AIにより、結核と肺炎の可能性(High,Low)が出てきますので、医師の診断の助けになっています。デジタル化が進んでいるので課題は電力の供給。再生可能エネルギーのニーズが高いです。
巡回診療に使えるのがポータブルX線装置の機械です。3.5キロという持ち運び可能なサイズで首都ルサカから離れた場所でも写真を撮ってワッツアップにて共有、医師が見て最終診断していきます。一回の充電で100枚撮影できます。ザンビア政府の要請も強く、グローバルファンドで今年更に調達予定です。

トリートメントサイトであるZATULETでもコミュニティボランティアの皆さんが歓迎の歌を披露してくださいました。結核やハンセン病の診断や治療をしているクリニックです。日本の支援で歯科治療ができるようになっていますが、歯科医は予約制です。

HIV患者の中には薬の影響で肝臓が痛んでいることがあるそうで検査が必要です。機械は整っていますが、電力の関係で複数台同時に使うことはできません。8カ国と国境を接する内陸国ザンビアでは、ザンビア人に限らずクリニックに来られる外国人の治療にもあたっています。

「チャンピオン」と呼ばれる、元患者の皆さんの声を聞かせて頂きました。
「咳が出ていたのだが、肺炎なのか結核なのか分からなかったところ、ザトュレットのカウンセラーがやってきて、クリニックを紹介してもらった。HIV陽性者とコミュニティに疑われるのではないか、という恐怖心もあった。結核と診断され、家族と一緒に食事も出来ないし、孤立していた時期もあるが、薬を処方され今は完治した。」
「こどもが食欲がなく、体重が増えず気になっていたが、夫が死去したばかりで大変な時だったので、病院に行けないと、カウンセラーに言ったら、尿検査をするからと言われた。治療に繋げてもらえた。」
「夫がHIVで死亡したので、あなたも検査をしないといけない、と言われた。治療を受けて、その後再婚もできた。再婚した夫は予防的に薬を飲んでおり。陰性、生まれた子供も陰性で新しい暮らしをスタートさせることができた。」
現実問題として、スティグマのせいで薬を飲みたがらない、治療を避ける傾向もあったところ、クリニックのカウンセラーの活動のお陰で状況は改善しつつあります。しかし、依然として顔を隠して薬をとりにくる人も、あえて地元から離れたクリニッに来る人も、いるとのこと。私からメンタルケアについて質問したところ、患者の立場に立って、メンタルヘルスケアも行う、これがしっかり研修され実践されている事が強調されました。
ザンビア大学附属教育病院にも訪問し、HIV対応の話を聞かせていただきました。若い女性はキーポピュレーションと位置付けられ、アウトリーチを進めています。母子感染は減っているものの、母乳を飲んでいる間にこどもに感染してしまうリスクはまだ残っているようです。
この病院でのテレメディシン(遠隔医療)は、地方の病院から患者と共に医師が連絡をして、専門医からのアドバイスをもらう事ができる仕組みになっています。

予防と治療のためのセンターではカウンセラーがメンタルケアも行っています。HIVの治療を受ける時に夫と一緒に来てもらうようにしたりと工夫しているようですが、依然として女性は脆弱な状態に置かれており、離婚を切り出されたり、縁を切られたりしてしまうことはまだ起きているとうかがいました。
さらに、MSM(男性と性交渉する男性)、FSW(女性の性労働者)、TG(トランスジェンダー)、PWID (注射針を使っている人々)もリーチすべきターゲットにしています。彼らにアクセスするのは難しいのではないか、と質問したところ、「コミュニティと、ファシリティをつなぐチャンピオンたちがいる」「市民活動グループとも連携している」という話を紹介してくれました。
感銘を受けたのは、HIV予防に活躍しているALZ(Adaptive Leadership Zambia)と呼ばれる若いリーダーたちの存在です。

放課後に毎日25人ほどがセンターを訪れて、ピア教育を進めています。TikTokやフェイスブックも活用しつつ、リアルに集まる場所も作ることで、同世代でメンタルヘルスも含めた健康課題について向き合っています。コミュニティでは、お菓子や飲み物を用意して集まる機会も作っているそうで、HIVに対する偏見など世代間格差があるテーマにも若い人々が関わり上の世代の行動変容を促しているとの説明もありました。


スキットも披露してくれました。学校に赴いて、若者がいきいきと暮らすには自らの健康や身体、心と向き合う必要があることを伝える取り組みの一環で、寸劇なども作っています。ザンビアの未来を担う若きリーダー達の姿勢が心強く感じた時間でした。

※※※※
ザンビア4日目。最終日は国民健康保険制度(National Health Insurance Scheme: NHIS)の担当者との意見交換会からスタートです。貧困層や脆弱な人々に適用範囲を拡大した国民健康保険制度がザンビアにあります。ザンビア全国民の医療アクセスを改善し、医療制度の財源確保を目的としています。グローバルファンドは国家健康保険管理庁(NHIMA)に150万米ドルを拠出し、現金給付制度の対象となる貧困層及び脆弱な世帯をカバーすることにしました。
銀行や生命保険会社や鉱山会社などの大企業の従業員は収入の1%を保険料として払い、雇い主も1%払うことで保険制度を支えていますが、これら民間セクターの従業員の人数は多くありません。また、インフォーマルセクターの国民はどこに住んでいるかによって30から50ザンビアクワチャ払っています。1ヶ月に2.5米ドル払えば、家族7名が保険制度に入ることができる仕組みです。しかし、地方部では保険システム自体が知られておらず、脆弱層の加入は2万世帯にとどまっています。障害者を抱える世帯やHIV感染者を含む57,065人が保険に加入していますが、福祉で現金支給を受けているのは100万世帯以上いるので、カバーできている範囲はまだ小さいのが現実です。全体では公務員など含めて500万人がNHIMAの保険制度に入っていることになります。65歳以上は政府が保険料を支払うことで、保険制度の対象者にしています。
「支払いができない人たちは病院に行けないか、病院にきていても支払いができていない」状態を、改善するべく進められている保険制度。保険でカバーする範囲を工夫するなどしてはいるものの、現状はグローバルファンドの支援なしには維持することは難しそうです。
ザンビア教会保健協会(CHAZ)を訪問。病院だけでなくトレーニングスクールやコミュニティクリニックなど、保健省に次いで保健サービスを提供している機関となります。教会ネットワークを通じて地方部にも拠点を持っています。ZAMMSA(ザンビア医薬品・医療用品庁、医薬品・医療製品の保管と配給を行う政府機関)とも連携し、適切に医薬品を管理している様子を説明いただきました。ISOなど国際標準を満たすシステムで説明責任を果たすことを目指しています。グローバルファンドの支援を受けて拡張された医薬品倉庫も視察しました。電子物流管理情報システム(eLMIS)を通じて医療施設から毎月提出される電子報告書を通じて製品補充に対応しています。
「ワークショップ」と呼ばれる医療機器の修理ガレージがあり、安全に機械が使われるよう修理と訓練が行われています。JICA支援によるものです。

国立心臓病院がザンビアの最後の訪問先になりました。2022年に開院した、ザンビアで唯一の循環器疾患の専門病院です。酸素プラント、非常用電源供給設備があります。医療用酸素は肺炎、出産合併症、早産、新型コロナ、重症マラリア、進行したHIVなどの治療に欠かせません。呼吸器疾患のみならず、子供から高齢者まで幅広い疾患で必要とされるので、酸素の供給量しか手術ができない、患者を受け入れらない、という状況を改善しようとしています。酸素プラント2基は、グローバルファンドによる資金供与によるもので、この病院をハブにルサカ州内の280の公立医療施設に酸素を供給しています。医療用酸素不足は、新型コロナ感染拡大時、特に低・中所得国の医療インフラの課題として浮上しました。地方部へシリンダーで運ぶ仕組みを安定的に運営していくことや、酸素パイプを取り扱う医療エンジニアのキャパシティビルディングを進めていくことも議題となりました。


また、心臓手術技術移転でも日本のNPOが貢献しています。1週間で5例程度の手術をしているそうで、ザンビアの医師が自ら手術ができるようになることを手助けするため、医師の後ろに立ってアドバイスすることに徹するという忍耐強いプログラムが進められています。テルモの機材なども活用されており、チーム医療の実践も伝えているところです。
ザンビアもいずれ支援から卒業する時が来るはずです。その日のための仕組みや施設、人材は育ちつつあると感じました。医療、健康は人間の安全保障とも密接に関わっていることを実感した視察となりました。

※※※
ザンビアの皆さんは大変穏やかで人間関係を構築しやすく、ミッションに対する取り組みも真剣であることが伝わってきました。日本へも大変好意的です。その理由のひとつは、TOYOTA,YAMAHA,HONDA,NISSAN,ISUZUなど日本車のブランド力。「日本車を乗ってみたい」と思っているザンビア人は多い、という話がムチマ保健大臣からもあったほどです。もう一つは日本人のプレゼンスです。NGO活動でザンビアの医療現場に関わっている日本人もいますし、日本での研修がJICAなどを通じて行われています。ザンビア大学の医学部生からも、若いコミュニティリーダーからも「日本に留学したい」という声が聞かれました。さらに北海道大学の拠点もザンビアにあります。ザンビア大学の獣医学部設立の支援もしてきました。ザンビア大学の獣医学部長は歴代北大の留学研究者とのこと。獣医学、人獣感染症、環境リスク、ワンヘルス、農学などを主な連携分野として、インターンシップの受け入れもしています。
最後に、実は日本人にとって意外と近いところに、ザンビアは存在していることを紹介します。それが10円玉。ザンビアの銅が使われています。トランジットも入れると約1日かけて訪問する国、ザンビアは少し遠い印象かもしれませんが、4日間の視察報告を通じて少しでも身近に感じていただければと思います。
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>牧島 かれん (マキシマ カレン)>ザンビア、TICAD9、アフリカ、グローバルヘルス、グローバルファンド、国際保健