
韓国史上初となる女性の大統領であった朴槿恵氏が、韓国史上初めて弾劾されてから2カ月が経ちました。そして5月9日に朴氏の後任を選ぶ大統領選挙が行われ、最大野党「共に民主党」の文在寅氏が勝利しました。
各種報道では文氏を「反日」だとし、慰安婦問題や日韓合意について強硬な対応をするであろうことばかりが騒ぎ立てられているように見えます。しかし、そのような面ばかり注目していたのでは、韓国政治が置かれている状況は理解できません。改めて、文在寅新大統領と韓国を取り巻く環境を見てみましょう。
韓国では大統領制が採用されています。大統領は立法を行う国会から独立した存在であり、大統領独自に立法したり国会を解散したりすることはできません。つまり、文新大統領の政策が即、そのまま実行される訳ではありません。
また、立法機関である国会は大統領から独立した存在ですが、文氏が所属する「共に民主党」は300議席中119議席しか有しておらず、文氏を支持する政党で議会多数派を構成することは極めて困難な状況です。しかも、上記の通り韓国の国会には解散がなく、次の選挙は2020年までありません。
つまり、現在の文新大統領は極めて弱い立場にあるので、保守的な「自由韓国党」や「国民の党」と協力して国政を展開しなければなりません。そのため、実際に行われる政策は保守派と妥協したものになると予想されます。
韓国の調査機関によれば、有権者が新大統領に求めるのは「根深い汚職問題の解決と改革に取り組む意思」が27.5%、「国民生活と経済を回復させる能力」が24.5%、「国家の安全とリベラルな民主主義を守ること」が18.5%になっています。
朴元大統領弾劾に象徴される汚職対策や、社会問題である経済問題・財閥問題対策が何より求められています。北朝鮮の核問題が国際的な問題となっている中でも、外交・安全保障問題はそれほど有権者からの重要度は他のものよりも低く、ましてや対日外交はほぼ注目されていないと言っても過言ではないかもしません。
それでは文新大統領はどのように政策を進めていくと予想されるでしょうか?
第1に指摘しなければならないのは、文氏と敵対する中道・保守派が議会で過半数を取っているということです。そのため、文氏が財閥改革で革新的な主張を行ったところで、政策が実現するのは難しいでしょう。
第2に、文新大統領は既に穏健・現実主義的な政策へとシフトしているということです。例えば、文氏は経済政策顧問として保守系エコノミストの金光斗氏を抱えていますが、金氏は減税や規制緩和を主張するなど、議会多数派を占める中道・多数派の主張に親和的です。また、外交でも北朝鮮核問題対応の一環として検討されている米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)について、文氏はかつて対中関係の悪化など「得るより失うものが多い」と慎重姿勢を示していましたが、既に条件付きながらも設置を容認する姿勢を示しています。
このように、文氏は議会少数派と厳しい立場に置かれながらも、野党の中道・保守派と妥協していく姿勢を既に示しており、当面は突飛なことは起きないと考えられるでしょう。
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