
昨今盛り上がりを見せるアメリカ大統領選挙では、不動産王のドナルド・トランプ氏が共和党の候補者となることが実質的に確定しました。
それを受けて、俳優のジョニー・デップ氏が「トランプが大統領になれば、彼はアメリカ最後の大統領になるだろう」と発言したことでも注目が集まっています。これは彼の過激な発言から想起される政治が、アメリカそのものを破滅に向かわせてしまうという危機感からの発言と捉えられています。しかし、そんなトランプ氏の発言も、アメリカ国民の支持を受けているからこそ拍手喝采を受けるというもの。今回は、8年前に国民の喝采を浴びて大統領に就任したオバマ氏と比較しながら、トランプ氏の発言を見てみましょう。
トランプ氏の過激な発言として特筆されるものは、外交や国際関係に関するものが多いです。例えば移民については以下のような発言をしています。
“メキシコ人は強姦魔である!メキシコとの国境に万里の長城を築き、その建設費はメキシコに払わせる!”
“不法移民は強制退去だ!”
ヒスパニック系―特にメキシコからの移民が多い米国では、移民に関する問題がしばしば取りざたされます。特に不法に米国に入国した“不法移民”への対応は国論を二分するものになっています。
オバマ大統領は8年前、ヒスパニック向けの政策を訴え、彼らの圧倒的支持を受けて当選を果たしました。そんなオバマ氏は公約としていた移民政策を実行し、米国内に多く存在する不法移民への救済策を実施。これには非常に大きな反対が巻き起こり、実際に法案も否決されたためオバマ氏はこれを大統領令(法的拘束力を持つ大統領の行政命令)として執行しました。しかしそれだけ反対が多かった政策です。トランプ氏は不法移民による国内治安の問題などを取り上げては、オバマ氏とは真逆の政策・発言を訴えています。
トランプ氏は“イスラム教徒の米国入国を完全に禁止すべきだ!”と発言しています。これはIS(過激派ムスリムによる「国家」)の台頭を背景に、米国内での銃乱射事件の犯人がムスリムであったことを受けての発言でした。
加えて日米関係に関しても、日米安保の片務的な防衛義務に言及し、“日本は核武装してもよいのではないか”といった発言もしています。
オバマ大統領の外交政策
かつて、イスラム諸国をはじめとする中東の国々へのメッセージとして、“テロとの戦いを終結させる”ことを訴え、平和な世界を目指すべく“ロシアと共に核兵器なき世界を主導する”と訴えており、トランプ氏とはまるで正反対の主張が見られます。
それではなぜ、オバマ大統領とトランプ氏は同じアメリカ国民の支持を受けているにもかかわらず、発言がこんなにも異なるのでしょうか。それは、オバマ大統領が訴え、国民の支持のもと取り組んだ政策が上手く作用しなかった部分が大きかったことが一つの理由として考えられます。
例えばオバマ氏が取り組んだ移民政策によって、治安が悪化したのではないか、という懸念も払拭できません。また、“テロとの戦いの終結”を実行すべく世界から米軍の撤退を進めた結果、中東地域ではISが勢力を拡大し、ロシアが台頭し新たな戦火を生んでしまいました。
2008年当時、国民の声をすくいあげる代弁者としてオバマ氏に寄せられた期待。その期待が一部裏切られたことへのアメリカ国民の失望感が、2016年の今、トランプ氏によってすくいあげられているのかもしれません。
大統領選で支持される候補者の「発言」は、アメリカ国民の「声」でもあります。今、アメリカではどんな「声」が主流なのかを意識することで、国際社会の見方もまたひとつ深みが増すのかもしれません。
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