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グラドルのガチで爽快な戦い 『アイドル新党』(書評)

2015/10/27

川上伊織

川上伊織

51cqz-MWAuL._SX352_BO1,204,203,200_書籍:『アイドル新党』
著者:原 宏一
出版:徳馬書店
発行:2012.9.7

「マキちゃん」は、レディースの頭を張ってた元ヤンキーで、旬の過ぎた売れないグラビアアイドル、25歳。プライドが高くてワガママで、アタマも当然よろしくない。そんなマキちゃんが、「マキはもうダメだ」と見切りをつけた所属事務所の社長の気まぐれで、政治家を目指すことになった。「選対の翁」と呼ばれる伝説の選挙屋の力を借りて、マネージャーの山崎とマキちゃんの二人三脚の戦いが始まった――。

こんな茶化した設定で読めるのだろうかと疑ったが、意外にも飽きさせない。最近の選挙は「地盤・看板・カバン」ではなく、「ワンフレーズ・ボランティア・スキンシップ」が票を左右すると語る翁の教えもあながち間違ってはいないし、当落を決めるのは、最後は候補者の人間力だという説にも頷ける。そして面白いことに、元ヤングラドルのマキちゃんはそうした政治家としての要素をすでに備えていた。

レクチャーされた情報を自分なりにかみくだいて目の前の聴衆に届ける。親との確執も下世話な中傷ビラも、素直な思いを自分の言葉で語って、ファンの心を掴んだ。ピンチをチャンスに変える弁才が、マキちゃんにはあったのだ。

「うちらだってちゃんと税金払ってんのに、うちらの声って市のエライさんにマジ届いてないじゃん。みんなが子ども産むとき、お金はないし病院はないしで、どんだけ苦労した?産んでからもお金はないし保育園はないしで、どんだけ困ってる?少子化って騒いでるくせに、うちらの声なんか聞いちゃいねえんだよ。だから、マキが言うことにした。マキをスピーカーにしてよ。マキに投票して当選させれば大声で文句言って、お金も保育園も分捕ってくるからさ!」

熱が入るあまり、リクルートシャツの第一ボタンと第二ボタンを引きちぎった姿でこんな演説をされたら、良識と常識があるマダムには反発を買いそうだが、ヤンママ系やグラドル好きのオタク系、そしてオヤジたちは目を輝かせる。マキちゃんの戦いは、破天荒でいて現実的で、突拍子もないけど魅力的だ。数々の選挙運動のアイディアも面白い。「選挙とはかくあるべし」と凝り固まった頭に刺激を与えてくれる一冊である。

 

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川上伊織

川上伊織

零細メディアにて約7年間、本の紹介コーナーを担当。絵本からビジネス書まで多岐にわたって、要約、書評、著者インタビュー、文学賞の取材などを行う。選挙に関わる人たちの近くで仕事をするようになって久しいものの、選挙の知識は相変わらず門前の小僧程度。日々精進します。

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