投票用紙が足りない!韓国統一地方選で露呈した選管のずさんな実態と再選挙論が広がらない理由

2026/07/31

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選挙ドットコム編集部

2026年6月16日に公開された「選挙ドットコムちゃんねる」では、韓国の統一地方選挙で発生した投票用紙の不足問題について、元朝日新聞政治部記者の鈴木拓也氏が解説します。日本とは異なる中央選挙管理委員会の仕組みや、浮かび上がった組織の問題点、再選挙論が広がらない理由にも迫ります。

MC期日前氏:今回、韓国の統一地方選挙で投票用紙の不足問題がありました。韓国の選挙管理委員会(選管)は日本と全然違うとのことですが、韓国の中央選管は完全に独立した機関になっているんですね。

鈴木氏:そうですね。中央選管の委員は9人います。そのうち3人が大統領による任命、3人が国会からの指名、残りの3人が大法院長、日本でいう最高裁判所長官による指名です。

その中央選管の委員長は慣例で大法院の判事が務めることになっています。大法院を退職して就くのではなく、非常勤で兼務する形です。大法院の判事をやりながら中央選管の委員長もやっているんですよね。

MC期日前氏:じゃあ絶対に捕まらないのでは?

鈴木氏:でも、今回の事態を受けて、責任をとって中央選管の委員長は辞任したので、今はもう中央選管の委員長ではありません。

たぶん今回捜査対象で……韓国あるあるでおそらくですが、誰かが人身御供になり(笑)、逮捕される。「ちゃんと捜査しました」と国民に示すことで一区切りつける、という落としどころになるのではないでしょうか。(中略)

MC期日前氏:韓国の選管がかなり独立したポジションに置かれているのは、過去の民主化運動の影響が大きいのでしょうか?

鈴木氏:そこが一番大きいと思います。1980年代の民主化以前、朴正煕氏や全斗煥氏などによる軍事独裁政権の時代には権力が集中し、実質的な三権分立が機能していませんでした。そうした独裁体制に二度と戻してはならないという意識は、保守派も含めて韓国内のコンセンサスとして存在します。

軍事独裁時代は政権に都合の良いような恣意的な選挙が行われていたため、「選挙は公正に行われなければならない」という強い思いがあります。そのため、行政府からは大統領指名の3人、立法府である国会から3人、司法から3人の「3・3・3」で中央選管は構成されているんですよね。(中略)

MC期日前氏:僕も色々ニュースをみていたんですけど、選管は採用を独自に行えるため、家族や親族を優先的に採用する縁故採用が横行していたり、選挙期間中の最も忙しい時期に職員が急に休職する割合が増えるといった問題も指摘されてるんですよね。

本来一番働かなければいけない時期に休みを申請し、それが許されてきた。このことで韓国国民の間でも選管に対する不満が溜まっているのではないでしょうか?

鈴木氏:今回のような実態が表に出たことで、不満はかなり溜まっていると思います。一方で、韓国は選管に限らず「労働者の権利」に対する意識が日本以上に強いお国柄でもあります。労働組合が非常に強いんです。(中略)

特に大企業の労組は非常に強く、労組の委員長には学生時代に民主化運動のリーダーだったような方が多くいます。労組は今の革新政権・与党の大きな支持勢力です。そのため、「休むこと」を労働者の権利として主張することに対して、日本ほど強い批判が起きにくい空気感があります。

ただ、今回はずさんなことをしていたうえに休みを主張していたというところがあるので、国民も呆れている部分はありますね。

MC期日前氏:今回の選挙に関して「やり直しすべきだ」という議論はあると思いますが、韓国のメインストリーム(主流)の意見になっているのでしょうか?

鈴木氏:メインストリームにはならないと思います。

今回の統一地方選挙の一番の目玉は「ソウル市長選」でした。日本で言えば東京都知事選ですが、それ以上の政治的意味があるんですよね。韓国の人口約5300万人のうち、約半数がソウル首都圏に集中しています。

韓国の選挙では、南部の右側が保守、左側が進歩(革新)の支持層が多い地域で、それほど票が動きません。一方で、ソウルを含む北部は、毎回勝敗が入れ替わる「スイングステート」です。そのためソウル市長選を制することは、4年後の大統領選に向けた最大の有力候補へ躍り出ることを意味します。(中略)

MC期日前氏:首都のトップを制することが大統領への道につながるわけですね。

鈴木氏:そうです。で、やり直しの話に戻ると、今回のソウル市長選は得票率49%対48%という大激戦でした。

保守系の「国民の力」から出馬した呉世勲(オ・セフン)氏が勝利したのですが、開票翌日の朝まで票が割れており、「国民の力」側は呉世勲氏が敗れるとみていました。さらに、保守層の多い地域で投票用紙の不足が相次いだことから、「不正選挙だ!再選挙をしろ!」と大騒ぎしていたんです。

ところが、開票が進むにつれて呉世勲氏が猛追して僅差で逆転勝利しました。勝った瞬間、「国民の力」の幹部はみんな黙ってしまった(笑)。勝ったんだから再選挙しないほうがいいと、トーンダウンしてしまったんですよ。

MC期日前氏:あまりに人間くさい展開ですね(笑)。

鈴木氏:そうなんです。なので、与野党で「やり直すべきだ」と盛り上がる空気にはなっていません。「国民の力」の候補が敗れた一部の地方選挙では再選挙を要求する声が挙がっているものの、最も重要なソウル市長選挙で勝っているので、勢いはなくなっていますね。

MC期日前氏:再選挙論者も一枚岩ではないのですね。

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選挙ドットコム編集部

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