
5月28日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」では、高市政権が掲げる国論を二分する政策の一環で進められているインテリジェンス強化の最新動向を毎日新聞政治部の田中裕之記者が解説します!5月27日に成立した今国会の目玉法案・国家情報局設置法は「第一歩」に過ぎない!?次に控える政策とその課題、そして私たちが知るべきインテリジェンスの世界水準とは?選挙芸人・山本期日前氏が深掘りします。
MC期日前氏 本日扱いたいテーマなんですけども。国家情報局について色んな動きが出てきたので、ぜひ田中さんに解説いただきたいなと思います。
田中記者:昨日(5月27日)、「国家情報局」と「国家情報会議」を創設する法律というのが参院本会議で可決・成立しました。 これは高市(早苗)総理が国論を二分するような改革と衆議院選挙で言っていた、インテリジェンス機能を強化する法案で、なおかつこの特別国会の重要広範議案という、与野党で「これは総理大臣が重要な議案だから答弁してください」と言っていた目玉法案の一つだったんだけれども、それが成立しました。

改めておさらいのために簡単に説明すると、総理大臣を議長とする「国家情報会議」があり、その下に内閣情報調査室という内閣官房の組織を格上げする形で「国家情報局」にする。「インテリジェンス・コミュニティ」って言い方をするんですけれども、政府内で警察庁、外務省、防衛省、公安調査庁を中心に情報収集活動をしているんです。 そのインテリジェンス・コミュニティの省庁に対して情報のアクセス権って言うんですけど、「こういう情報を出してくれ」という風に義務付ける権限、総合調整する権限を国家情報局に与えて、それによって総理官邸の情報集約・分析機能を強化するという法律になります。調査権限だとか捜査権限を新しく与えられているというよりも政府内の情報機関の組織改革なんですね。高市さんは「第一歩」という風におっしゃっていて、高市さんが目指しているインテリジェンス強化の最初の第一段階ということになります。
(中略)
MC期日前氏:例えば、今まで働いてた内調の方が格上げされたことによる変化みたいなことはありますか?
田中記者:(内調トップの)内閣情報官が「国家情報局長」になることで格が上がって、偉くなります。別組織として、外交・安全保障の司令塔である国家安全保障会議(NSC)と国家安全保障局(NSS)というのがあるんですけど、そこと同格になるので。インテリジェンス・コミュニティの人たちはそこにも情報を届けたんだけれども、そこと同格になることによって、同じようにインテリジェンス・コミュニティの省庁に情報を吸い上げることができるようになります。
(中略)
田中記者:第一段階として組織は改革しました、第二段階として、何をする・させるのという本格的な議論が夏にできる有識者会議で進んでいきます。 その中で本質的な事として「世界のインテリジェンス機能の能力がどういうレベルなのか」ということをまず知っておく必要があると思うんですよ。
MC期日前氏:海外が進んでて、日本が遅れてるんじゃないかみたいなイメージがありますけど。
田中記者:アメリカのCIAやFBI、イギリスだったらMI6とか映画の世界みたい話があるじゃない。じゃあそれは実際どうなってんのっていう話です。この表を見てもらうと、インテリジェンスの収集手法は、実は細分化されて結構あるんです。主な方法と言われるものとして「HUMINT(ヒューミント)」「SIGINT(シギント)」があります。

ヒューミントっていうのは「ヒューマン・インテリジェンス(人的情報収集)」。これは分かりやすくて、人を介した情報活動、いわゆるスパイ活動です。
重要なのは「シギント」ってやつね。「シグナル・インテリジェンス(通信傍受情報)」の略で、インターネットの通信とか電話とかクレジットカード情報とかを傍受するんだけれども、これが今、特にアメリカとかインテリジェンス能力が高い国の主流とも言えるものです。
MC期日前氏:じゃあよくスパイ映画とかアニメとかに出てくるやつは、今は主流ではないんですね。
田中記者:そこでしか取れない情報もあるんだけれども、ヒューミントって危ないじゃん。バレたら何されるかわかんないでしょ。下手したら命を取られかねないじゃん。(中略)一方、シギントは人命を危険にさらす必要がない手法なわけですよ。しかも、今みんなインターネットを使ってるからハッキングみたいな形で取れちゃうわけじゃん。こっちの方が、今主流というか重要性が増しています。 このシギントが具体的にどのように行われ、どんな情報を取っているのか、実は近年明らかになった事件があります。2023年4月にアメリカで起きた「テシェイラ事件」です。テシェイラって人の名前なんですけれども、アメリカのマサチューセッツ州の空軍州兵ジャック・テシェイラさん、当時21歳がゲーマーなんですけど、ゲーマーが集うSNSの「Discord(ディスコード)」っていうところにアメリカの機密文書を投稿しちゃったんですよ。
MC期日前氏:このディスコードは、アクセスできる人だけが入れるSNSですか?
田中記者:オンラインゲーマーが集う、仲間内のチャットみたいなところに機密文書を写メしたファイルを出しちゃったの。アメリカでは、その枚数が300枚とか350枚とも言われています。当然さ、そのオンラインゲーマー仲間も匿名の人が集まってるからさ、「すげえ。こんな面白いものを手に入れちゃった」と反応して、拡散させるに決まってんじゃん。

MC期日前氏:ゲーマーは拡散しますよね(笑)
田中記者:それをアメリカの新聞とかが当然かぎつけて、「なんじゃこれ」ということで大騒ぎになったのが2023年4月。そしてこのテシェイラ氏はFBIにスパイ防止法違反で逮捕された。
MC期日前氏 :ちゃんとそれがバレるっていう。
田中記者:流出した文書が結構ヤバイもので、さすがにそれはちょっとお見せするのは控えるけれども、写メでパチッとこう1枚あるんですよ。これ検索したら、アメリカ版『ニューズウィーク』のサイトとかにも出てくる。世界中で見られる状況になっています。
MC期日前氏:どんな内容が出ているんですか?
田中記者:その文書の一番上の方に「トップシークレット」って書いてあるんですよ。もうこの時点でやばいじゃん。書いてあるのは、例えば、ロシアのウクライナ侵攻を巡ってアメリカが情報を取っているんだけど、もう生々しいです。「ロシアの国防省が3月3日にウクライナ南部の都市オデーサ及びミコライウのウクライナ軍の拠点に対してミサイル攻撃を実施する計画を立てた。標的はウクライナ軍の装甲車両の修理工場」とまで書いてある。
MC期日前氏:ロシアの動きがアメリカに、人を介さずにバレている!
田中記者:筒抜けなわけですよ。しかも軍事計画のミサイル攻撃計画だよ。「準備ができ次第攻撃する」とか書かれてて、もう作戦を立てた日付やウクライナのどこを標的にしてるかまで分かっちゃってる。
MC期日前氏:ええ~!もう昔の傍受に成功しましたという次元じゃない。
田中記者:昔は日本が無線とかでそういう情報をかぎつけたみたいなのもあるんだけど、もう今はインターネット中心でバレている。アメリカ、ロシアだけじゃなくて、ウクライナに対してやった文書も流出してて、怖いよね。ウクライナを支援してるんだけど、ゼレンスキーが過激なことをやらないようにって、こっちも監視してるわけだからさ。支援はしてるけど、核戦争まで発展しないように、ウクライナの情報もロシアの情報も取ってるわけよ。
MC期日前氏:え、だから武器は送ったりとか支援はしてるけど、支援先が暴走しないような監視もしてるっていう。
田中記者:この文書もどうやって入手したかっていうところは、具体的には書いてないんだけど、シギントを意味する「SIG」って書いてある。僕も日本でこの文書を分析した専門家の人に取材をしたんですけれども、それがシギントを意味するものであると言っていました。その文章に「ファイブ・アイズ」、五つの目とも書いてあるんですよ。何のことかって言うと、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏の5カ国で機密情報を共有する枠組みがあって、それを「ファイブ・アイズ」っていうんですけど、そこにも「送ってますよ」っていうようなことも書いてありました。だから、この情報はイギリスも知っているわけです。
MC期日前氏:あ、そうなんすね。ロシアとウクライナに関して、他の国にも共有されていたんですね!他の国からしてもたまったもんじゃないですね。全ての情報がアメリカにバレているってことですか。
田中記者:バレてるね。だから(田中記者が取材した)その専門家は「アメリカはカードゲームで相手のカードを見ながらカードゲームしてるんだ」って言ってたね。こっちを見ながら外交のカードも戦争のカードも切れるわけですよ。この事件は3年前で、このレベルの情報を取るのがもう世界レベル、今のインテリジェンスの最先端というかアメリカのインテリジェンス能力の高さです。

(中略)
田中記者:この世界的なインテリジェンス機能のレベルの中で、じゃあ果たして、日本がどうすんだっていう話じゃないですか。これが日本でできるのかと言ったら、今の法制度じゃできないんですよ。日本で通信傍受が認められてるのは「司法傍受」で、「通信傍受法」に基づいて元々は組織犯罪に対して裁判所の令状(許可)があれば通信傍受できますよと定められています。組織的殺人とか組織的薬物事件とかの刑事事件に絡んで、警察・検察が逮捕・起訴して立件化するためにっていう仕組みはあるんだけれど、裁判所の許可を得ない、つまり「令状なしの行政傍受」は認められていません。
日本だと憲法問題も絡んでいます。憲法では「通信の秘密」を保障しているんですけれども、シギントにはこの問題があります。ただ、日本でも通信傍受が一定程度認められてるのは、法務省も一応政府見解を出していて、ちょっと難しいんですけど、憲法13条に生命、自由、幸福追求の権利を保障する条文があるんですよ。憲法9条があるのに自衛隊があることにも使われるロジックなんだけど、「そっちが優先する」と。生命、自由、幸福追求の権利が、憲法の規定より優先するよっていう解釈で、日本は自衛隊も持てるし、そして通信傍受もできるっていう憲法解釈で法務省もOKを出した。厳密に言うと憲法13条と12条なんだけどね。憲法上の通信の秘密っていうのも、憲法解釈によって一定程度認められるよっていう風にはしているけども、これをやるのは相当ハードだね。
MC期日前氏 相当反発来そうだと。これは与野党っていう感じになるんですかね?それとも与党の中でも割れる?
田中記者:与党は割れないかな。自民党はシギントに対して明確に、対外情報収集能力において、圧倒的な重要性を占めるのがシギントである。だから「優先強化」すべきだと提言している。強化じゃなくて『優先強化するべきだ』っていうところまで自民党は提言にまとめている。日本維新の会も大幅強化すべきだと言ってるね。だから与党は「やるべきだ」と言っている。言ってはいるんだけれども、いざやるとなったら、かなりの世論や野党からの反発があるんじゃないかな。本当に安倍政権の安保法制に匹敵するぐらいのハードな制度になるという感じはしますよね。
MC期日前氏:反対する側の主な理由は何ですか?
田中記者:それは「個人情報・プライバシー」ですね。今回の国家情報会議設置法案でも立憲民主党は参議院で反対に回ったけれども、そういう意見があるじゃないですか。国会で結構議論もあったし、あと最終盤に議員の事務所にファックスがすっげえ来たんだって「100枚ぐらい反対意見が来た」と言ってる議員もいました。
MC期日前氏:それは同じ人が大量に送ってるのか、それともやめてほしいって人がそれだけいるのか。
田中記者:わからないね。辻元清美さんがXに「文章も違うから同じ人ではないんじゃないか」っていうような書き込みをされたけれども(編集部補足:辻元清美氏公式Xの5月27日の投稿より一部引用「これまでも、注目法案については、事務所に「大量の」「ほぼ同じ文面の」ご意見が届くことはあった。/ しかし今回は、文言も形式もバラバラだった。/FAXの向こうに、ひとりひとりが見えた。)、ある種なんか組織的なところもあったかもしれないけどね。
MC期日前氏:ファックスで本当にお願いするパターンと、例えばそのファックスを大量に送ることによって、仕事をさせないっていう作戦みたいな、そういったところもあるんですかね。
田中記者:けど、あれだよね。単純にちょっと紙もったいないよね。環境には良くないね(小声)。メールだと意味ないし。結構さ、国会議員の皆さんもファックス番号とか公表したりするじゃない。「ファックスに送った方が気づいてもらえる」と思ったんだとは思うんだけど。
(中略)
田中記者:これまで「あんま盛り上がってないな」と思ったけど、法律が成立した時はNHKもトップニュースで扱ったし、最終局面では反対運動も含めて盛り上がりましたよね。でも、シギントをやろうとすればこれの比じゃないですよ。
MC期日前氏:これは今、どれくらいの確率で行われそうなんですか?

田中記者:とりあえず「案が出ている」くらいで、僕はまだ白紙状態だと思います。ただ、与党から強化を求める声が出ているし、インテリジェンスに詳しい人は、「シギントの議論はやんなきゃいけない」と言っている。難しいのは分かっているけど、やっぱり世界がこのレベルでしょ。
(中略)
田中記者:第二段階で、現実的に政府がやりそうなものは、自民と維新の連立合意文書に書かれていた「対外情報庁の設置」と「外国代理人登録制度」かな。
「対外情報庁」というのは、今外務省に「国際テロ情報収集ユニット」というテロ情報を人間が取りに行く部署があるんですけど、それを拡充する案が出てたりしています。
「外国代理人登録制度」の方は、外国政府の指示で来たエージェントが日本で活動する時に「事前に届け出してくださいよ」といって網をかけようっていうことです。具体的にどういう制度設計になるのかによって「プライバシーと個人情報はどうなんだ」という議論になってくるんだと思うんだけれども、それでもシギントに比べると割とソフトです。
MC期日前氏:これは本当にどうなるのか……。
この詳細は、ぜひ動画本編でご確認ください!
選挙ドットコムちゃんねる、ぜひ高評価とチャンネル登録をよろしくお願いいたします!
【有権者の心に響く第一印象を。選挙ドットコムで、あなたの情報を掲載しませんか?】
選挙ドットコムの政治家情報ページには、顔写真やSNSアカウントへのリンクなどを完全無料で掲載いただけます。
有権者の皆さまにとって、こうした情報は候補者一人ひとりを知るための大切な第一歩になります。
ぜひ、あなたのページを充実させて、有権者の皆さまとの距離をぐっと縮めてみませんか?
情報掲載をご希望の際は、こちらのフォームよりお送りください。皆さまからの情報をお待ちしております!
※申請は「政治家・候補者本人」または「政治家・候補者本人から承諾を得ている方」に限ります。承諾がない場合は掲載できませんこと、予めご了承ください。
この記事をシェアする
選挙ドットコムの最新記事をお届けします