
SNSが選挙結果を左右する時代。しかし、私たちの画面に映る「盛り上がり」は、果たして社会の「真実」を映し出しているのでしょうか。選挙ドットコムとJX通信社の調査で、SNSの中で政治選挙情報の情報源として使われているツートップは「X(旧Twitter)」と「YouTube」です。2月18日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」では、東京大学大学院教授の鳥海不二夫氏と立命館大学准教授の谷原つかさ氏をゲストに迎え、衆院選期間中のXとYouTubeの調査データから見えた「ネット選挙」の実態と、その裏側にある構造的特徴を解説していただきました。
鳥海教授からはXの分析結果を伺います。政党の公式アカウントや党首のアカウントを中心に分析したところ、今回の衆院選でX上での拡散回数や拡散するアカウント数が最も多かったのは自民党でした。特に高市早苗氏に関連する投稿の伸びは凄まじく、前回の参議院選挙時と比較しても、拡散に関わるアカウント数が増加しています。
ただ、鳥海教授は「拡散の数が多ければ良いというものではない。結局、その拡散した先がどこなのかが重要」と指摘します。
鳥海教授が着目しているのが、拡散している「人」の属性です。政治に強い関心を持つコアな支持層は、プロフィール欄に支持政党や政治的信条を書き込む傾向があります。しかし、こうした「政治一色」の層がどれだけ熱心に拡散しても、その情報は同じような考えを持つフォロワーの間でループするだけで、外側の「一般層」には届きにくい側面があるといいます。
一方で、鳥海教授の経験則として、プロフィール欄に人気ゲーム・アニメの「ウマ娘」や趣味のキーワード、子育てなどの日常的な言葉を並べている「ライトな層」が拡散に加わっている政党は、選挙本番でも議席を伸ばす傾向があります。今回、この「ウマ娘」に象徴されるライト層のプロフィールが多く見られたのが自民党でした。前回の参院選では国民民主党や参政党に見られたこの現象が、今回は自民党に現れ、鳥海教授は「『ウマ娘が出てくる政党は勝ちそうかな』っていう予測指標になりかねないところがあります」と分析します。
政治や政党に強く染まっていない層が拡散したか否か、それが選挙の勝敗を占う重要な指標になっているのです。

YouTube空間を観測してきた谷原准教授は、政党公式ではない第三者による「切り抜き動画」や「解説動画」が再生数全体の7〜8割を占め、「基本的に高市さんを称賛する動画と中道を批判する動画でほとんどジャックされてたような状態」だった点を指摘します。
例えば高市総理の応援演説でのほのぼのするシーンが拡散された一方で、逆に中道改革連合に関しては各候補者の態度が悪いとされるシーンや討論会でうまく答えられなかったシーンなどが視聴されていました。
さらに、広告の影響も注目されていると言及します。高市氏のメッセージを紹介した政党の広告動画は再生数が1億回を上回り話題となりましたが、谷原准教授は「YouTube広告は、予算は必要条件なんだけど十分条件ではない。YouTubeは広告の品質も重視している」と指摘します。YouTubeはこうした運用の詳細を公表していませんが、動画がスキップされていないかや視聴維持率が高いかなども指標になっている可能性があるという推測のもとで「高市さんの広告はみんなが手を止めて見たのではないか。(中略)結局、高市さんの自力が凄すぎた」と予算以外の要素も絡んでいる可能性を示唆しました。

また、今後私たちがこうしたデータを見ていく上で留意すべき点もあるといいます。現在は「切り抜き動画」を含む短尺の「ショート動画」が再生数を多く占めていますが、こうしたショート動画は視聴時間に限らず、表示されれば即1カウントされるため数としては多く出る傾向が指摘されます。実際、アメリカの研究では党派性の強い動画の視聴時間の80%を0.6%のユーザーが回していたという分析結果が出ていると紹介。
日本のYouTubeでは保守的なコンテンツの再生数が多くみられる傾向もありますが、谷原准教授は「保守傾向が強い動画は一部の界隈で回っていただけという説もなきにしもあらずという感じです。むしろ、政党の広告とかの方が一般の方にはリーチした可能性はある」と実態を解説します。
今回のSNS分析から浮き彫りになったのは、SNSがもはや単なる情報の補助ツールではなく、民意の受け皿として巨大な力を持っているという現実です。しかし、同時にリスクも孕んでいます。これからのネット社会で、私たちはどう情報を取捨選択すべきなのでしょうか。
鳥海教授は人類の歴史の中でネットが普及したのは100年にも満たず、「我々は情報空間についてまだ全然知らなすぎる」と指摘。
情報社会における「エコーチェンバー」や「アテンション・エコノミー」といった概念の意味を知り、「その言葉の意味を知っているだけで、自分が見ているものの正体あるいはその裏にあるものが分かってくる。情報のリテラシーというよりは『情報空間のリテラシー』というものを高めるのがまず第一歩」と話します。また、情報の『偏食』を正すことも重要と言います。

そして、谷原准教授は、SNS上では第三者の解釈が自由に発信できる「論評過剰」な状態になっているからこそ、各党や候補者が発信する「一次情報」を自ら取りに行くことで「一次情報に基づいて自分の思考を形成する。『静かな空間で考える』ということがすごく貴重になっている」と話します
「ウマ娘層」を動かすほどの広がりと、アルゴリズムを味方につけるほどの熱狂。これらをいかに健全な民主主義のプロセスへと繋げていくか。SNSの数字に踊らされず、その裏にある構造を知ることが、デジタル時代の民主主義を守る第一歩となるのかもしれません。
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