
昨日投開票が行われた第27回参議院議員通常選挙(以下、参院選)は、与党が過半数割れし、新興政党の参政党などが躍進すると激動の結果に終わりました。三連休の中日で投票率が下がる懸念もあった中で、投票率は前回を上回る57.91%、期日前投票は過去最高となりました。今回の参院選ではYouTube上の関連動画再生回数が昨年の衆院選や都知事選をはるかに上回る17億回超えに到達。しかし、選挙の過程では、分断をあおる言説やデマなどの問題への注目を集まりました。こうした結果を踏まえ、私たちは今後ネット時代の選挙とどう向き合うべきなのでしょうか。
修正履歴:7月25日に「サードパーティー」に関するデータを追記しました
選挙ドットコムの独自調査では、今回の参院選におけるYouTube関連動画の再生数が公示日から投開票前日までの17日間(7月3日~19日)で17億4823万1414回を超えました。これは昨年の東京都知事選(参院選と同じく選挙運動期間は17日間、約4億6600万回)や衆院選(12日間、約2億7400万回)を圧倒的に上回る数字です。

この膨大な再生数の内訳を見てみると、政党や候補者以外の「第三者」による動画が89.8%と圧倒的多数を占めていることがわかります。
特に再生回数が1万回以上の動画に絞って、発信者別の再生数割合をまとめると、「切り抜き系」が42.1%と圧倒的で、テレビ・新聞・雑誌が18.2%、WEBメディアが17.9%、学者・評論家・ジャーナリストが9.8%、タレント・YouTuberが9.0%と続きました。
発信者別の本数では、「切り抜き系」が27.9%、「テレビ・新聞・雑誌」が25.2%でした。
いわゆる「切り抜き系」動画は、インフルエンサーの発言だけでなく、テレビのニュース番組や討論会、新聞報道などを再編集したものが少なくありません。このデータは、ネット上で多くの人が依然としてテレビや新聞といった大手メディアの情報を求めているという実態を示唆しています。
では、具体的にどの政党が注目を集めたのでしょうか。政党名を含む動画の再生数では、参政党が約9億3952万回と他党を圧倒し、次いで自由民主党(約7億4360万回)、れいわ新選組(約5億4116万回)、国民民主党(4億9689万回)と続きます(数値はいずれも千の位で切り捨て)(※集計のシステム上、複数の政党名が含まれる場合はそれぞれの政党に1カウントしています)。

参政党と自民党の動画内容を比較すると、その傾向は大きく異なります。自民党関連動画に批判的な内容が多いのに対し、参政党関連動画は党を肯定的に捉える内容が多くを占めていました。特に、再生数上位は街頭演説やメディアインタビューの「切り抜き動画」などが中心で100万回再生を超え、その拡散力と注目度の高さが際立っていました。
TikTokでも参政党は他党を圧倒的な再生数を記録しており、動画系SNSを最大限に活用した戦略が功を奏したと言えるでしょう。

また、注目すべきは、これらの再生数の多い動画に、テレビや新聞報道の切り抜きが多く含まれていた点です。ネット上では「オールドメディア」という言葉も飛び交いますが、実際にはネットユーザーもテレビや新聞発の情報に関心を寄せていることが浮き彫りになりました。

今回の参院選で台風の目となった参政党は、選挙区で東京、埼玉、神奈川、愛知、大阪といった大選挙区に加え、議席の一部が規制政党の「指定席化」していた福岡、茨城でも議席を獲得。比例では立憲民主党と国民民主党に並ぶ7議席を獲得し、獲得議席数は自民党、立憲民主党、国民民主党に次ぐ4番手でした。
なぜこれほどまでに参政党が躍進したのか、そのヒントとなるのが同党の組織体制です。
「私が一番やっているのは組織作り」ーー参政党の神谷宗幣代表は選挙前に出演した選挙ドットコムちゃんねるでこのように語っていました。同党は党員組織を中心に地元活動、候補者選定、選挙運動をしており、党員の意見を元に国会議員が動くという明確な党の運営方針を掲げて「堅実に積み上げ、時にバズる」(神谷代表)ことを繰り返して成長していくビジョンを示しています。

創立メンバーの一人である早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏も、参院選投開票日の「選挙ドットコムちゃんねる」開票特番に出演した際、「風が吹いたときにのるための組織の足腰が強い」と解説。最初はSNSでの情報発信で党員を獲得し、その党員から集めた党費を地上戦に回すという、欧米では一般的な「近代政党」の運営手法が奏功したと分析します。
党員と党費の拡大という、まさに「地に根を張る」活動が、SNSという「風」に乗るための強固な土台となっていたと言えるでしょう。
こうした土台がある中で、同党が掲げた「日本人ファースト」に対する批判が集まった際にも同党の主張を支持する投稿が拡散されるなど、逆風すら追い風に変える勢いを保ちました。
今回の参院選は、ネット選挙のあり方を考える上でも重要なターニングポイントとなりました。
投票率は前回を上回る58.51%を記録し、期日前投票も過去最高となりました。ネット選挙が解禁された2013年の参院選から12年を経て、ようやく投票率が回復したとも言えるでしょう。
しかし、一方で懸念されるのは、ネット世論による「分断」です。過激な発言ほど拡散されやすいSNSの特性上、情報の質は玉石混交になりがちです。

選挙ドットコムがJX通信社と共同で7月12~13日に実施した意識調査では、「投票先を決める際に最も参考にするメディア」を択一回答で尋ねたところ、高齢者層が多い電話調査、比較的若年層が多いネット調査ともにテレビや新聞の割合が高く出ました。ネットの言説では、テレビや新聞などを「オールドメディア」として敵対視する言説も流行っていますが、特に選挙に関する情報はテレビや新聞の方に信頼が置かれている状況が伺えます。
また、「対決よりも解決」と訴える国民民主党が躍進を続け、「分断より解決」を掲げて30代を中心に候補者を擁立した新党「チームみらい」が議席を獲得したことも、有権者が冷静な議論を求めていることの表れかもしれません。
筆者は、ネット選挙によって有権者の判断材料が増えることで、有権者が日本の国や社会にとってより良き選択をする「投票の質」が向上することが最終目標だと考えています。今回の参院選は日本の政治・選挙史に残る転換点でしたが、「投票の質」向上に向けてはまだ多くの課題が残されています。
有権者の皆さん、そして政治・選挙に携わる皆さんには、まずこうした状況があるということを知っていただき、次の行動を考えていただければと思います。「マシな地獄を選ぶ」と言われてきた日本の選挙を、有権者が「ワクワクして投票先を選べる」ものにするため、私たち一人ひとりがネットとどう向き合うかが問われています。
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