民主の風、小池旋風……東京都議会議員選挙(以下、都議選)の結果はその時の政治トレンドを反映しやすく、過去の選挙では結果が一言で説明できるキャッチフレーズが使われてきた。しかし、6月22日に投開票された2025年都議選を象徴する言葉はなかなか浮かんでこない。選挙結果のポイントが多岐に渡り、かつ大勢とは矛盾する結果もみられたためだ。このコラム記事では、今回の都議選の結果を詳報しながら、これからの選挙についても展望していく。
まず、今回の開票結果はこの図の通りとなった。
第1党に返り咲いた都民ファーストの会は37人中31人が当選して、第1党に返り咲き。前回の2021年都議選では新人候補が全敗したが、今回は荒川区や板橋区、小平市、日野市でトップ当選、議席を失っていた中央区や目黒区、葛飾区、江戸川区でも新人候補が接戦をくぐり抜けて議席を奪還した。最激戦区となった世田谷区でも新人が食い込み、2017年以来の2議席を占有した。
立憲民主党は都政の「野党第1党」に躍進。昨年の都議補選組も含めて現職が議席を維持したのに加えて、品川区や八王子市では新人候補が議席を維持し、大田区や町田市では新人候補が議席を獲得した。
また、国民民主党は都議選前後で政党支持率が激しく上下したものの、当選枠が少ない2人区の港区、複数政党の指定席化も見られていた4人区の新宿区、江東区、葛飾区を含む9選挙区で1議席ずつ獲得して「躍進」「伸長」という評価で着地した。
初めての都議選となった参政党は候補者4人中3人が当選するという成果を上げた。
そして、無所属は当初15人(このうち3人が自民党追加公認に)が当選して前回選挙よりも4倍相当の議席数となった。1人区の千代田区と武蔵野市、小金井市では女性候補が当選。10人以上の乱戦となった江東区や品川区、大田区、江戸川区、八王子市でもそれぞれ1議席を獲得している。
一方、改選前に第1党だった自民党は42人公認のうち当選は18人にとどまり、選挙後に追加公認した3人を含めても現在の定数127になってから最低の議席数となった。現時点で第2党に踏みとどまっているものの、第4党の立憲民主党が当選した同党推薦候補全員を会派入りさせれば会派順が入れ替わる可能性もあるほど肉薄する結果となっている。
厳しい結果となったのが公明党だ。擁立数を1議席絞って、不記載問題に揺れる自民とは距離を置くなど慎重な姿勢で臨んだが、新宿区と大田区で現職3人が落選し、36年ぶりに全員当選が叶わなかった。2023年統一地方選での練馬ショック、2024年衆院選小選挙区での敗北に続き、党本部を擁する新宿区での敗北をめぐっては一部メディアが当確を打ち間違える異例の事態も発生し、いかにこの結果が意外だったかを物語っている。
日本共産党は改選前より5議席減らした結果となった。北区、板橋区では勇退したベテランから引き継いだ新人が議席を死守したものの、葛飾区と品川区では都議団幹部として屋台骨を支えてきた2人が落選するなど現職の敗北も相次いだ。今後の党勢拡大を考えると、数字上の議席減以上に重たい宿題が残ったとも言える。
また、日本維新の会はこの選挙戦で都議会議席を失った。6人の公認候補は当落ラインにもかからずに沈む結果となった。
公認候補者数が自民党と並んで最多の42人だった再生の道も議席獲得には届かなかった。
今回の都議選で注目されたのがSNSやYouTubeを利用した選挙運動だ。選挙ドットコムが独自にYouTube上の動画再生回数を集計したところ、選挙期間中に「政党名+都議選」のキーワードで検索した際の動画再生回数は、政党別にみると再生の道が最多の約3217万回でした。2番手の国民民主党(約1430万回)、れいわ新選組(1169万回)をはるかに上回る回数だった。
YouTube上では再生の道候補者に好意的な内容の討論会切り抜きなどもまわっていたが、昨年の「石丸現象」と大きく異なったのは、いわゆる「インフルエンサーチャンネル」とのコラボが少なかった点だ。知事選の時には石丸氏が「中田敦彦のYouTube大学」や「NewsPicks /ニューズピックス」などに出演し、その切り抜きが量産されたのに比べると、都議選ではこうした広がりはあまり見られなかった。
結果的に、公認候補42人の得票数合計は40万7025票(小数点第一位で四捨五入)で、昨年都知事選で石丸氏が獲得した約166万票の4分の1以下にとどまった。選挙ドットコムがJX通信社と共同で行った事前の情勢調査では再生の道が国民民主党や日本維新の会支持層からの一部支持の受け皿となり、投票結果では候補者を1人に絞った墨田区や北多摩三で当選ラインに2ポイント差まで迫ったが当選には届かなかった。
一方、同じくSNSでの発信を強みとしている参政党は躍進。支持が広がっている要因を問われた神谷宗幣代表は「明らかにインターネットの影響がある」と語った。特徴的だったのはTikTokの活用方法だ。政党の公式アカウントだけでなく、政党や候補者とは関係のない第三者による動画、さらには地域支部や地方議員といった「セカンドパーティー」による発信も活発に行われていた。同党は全国各地の支部や党員を増やし、地域ごとに選挙態勢を構築するという地に足をつけた活動をしてきたが、これがネット上でも展開されて支持拡大に活かされている様子が見えた。
「自民大敗、都民ファーストが第1党返り咲き」(読売)「自民大敗で過去最低議席に 都民ファが第1党復帰」(朝日)「自民惨敗、過去最低議席」(毎日)・・・・・・都議選後の各紙の見出しは、都政の第一党をめぐる結果を軸に書かれているものが多い。これは全体を象徴する内容なのだが結果の詳細を見ると矛盾するような事象も散見された。
例えば、都民ファは第一党を奪還したものの、小池知事の国会議員時代の地元である練馬区で現職幹部が落選。政治の新興勢力が次々と出てきた中で、急速に「既成政党化」して批判を浴びる立場へと移り代わっているようにも感じた。また、自民党は歴史的敗北と評される一方で、最激戦区の世田谷区では現職幹部がゼロ打ちで当確、品川区では新人候補が8年ぶりに議席を奪還するなど、個別の選挙区では強さを見せた。
また、7つある1人区のうち3選挙区で無所属候補が当選。特に、千代田区の選挙結果は象徴的で、保守分裂や候補者の属性(所属や性別)から無所属女性候補が浮かびあがり、現職をわずか246票差で破るという波乱の結果となった。
中~大選挙区が多い都議選では政党ラベルが勝敗を大きく分けてきたが、政治不信が広がる中でこうした政党ラベル自体に嫌気がさしている有権者も少なくない。そのため、保守かリベラルかといった従来の軸だけでなく、政党所属か無所属かといった広い軸から、あるいは特定の政策分野のような狭い軸なまで、多様な比較軸が選挙の行方を左右するようになってきた。
今回の都議選で投票率が5割弱まで持ち直した一因には、候補者が増えた点も指摘されている。これからも政治家の側には有権者への選択肢を提示することが、有権者の側は選択肢から選び抜く努力が求められ続けている。この解説が、皆さんの政治への理解を深める一助となれば幸いです。
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