
10月15日公示、10月27日投票の日程で第50回衆議院議員総選挙(以下、衆院選)が行われていますが、衆院選と同じタイミングで「最高裁判所裁判官の国民審査」も実施されます。
本記事では、最高裁判所や国民審査の仕組み、審査の対象となる裁判官の情報などをまとめました。

最高裁判所(以下、最高裁)は日本の司法の最高機関であり、「三審制」の最後の判断を下します。全国の裁判所は過去の最高裁の判断を重視することが多く、同じ問題を扱う場合は最高裁と同じ判断を下すことがほとんどですが、最高裁の判断によって法律や制度変更につながることもあります。
また、法令が憲法に違反していないかどうか最終的な判断を下す役割も担っており、「憲法の番人」とも呼ばれています。
最高裁の裁判官は長官1名、判事14名の計15名で構成されています。最高裁は非常に重い判断を下すため、さまざまな目線で法律を論じることができるよう、最高裁以外の裁判所判事だけでなく検察官、弁護士、行政官、学者といったさまざまな分野の出身者が集まっています。
15人の裁判官は5人ずつ3つの「小法廷」に分かれて所属しており、最高裁が担当する案件は基本的に小法廷ごとに分担して審理します。一方、憲法判断に関わるものや、過去の判例を変更するなど、重要な案件については15人全員が参加する「大法廷」で審理します。

最高裁の裁判官を国民が審査する制度で、衆院選と同時に行われます。裁判官としてふさわしいかどうかを有権者が判断して投票するもので、結果によっては裁判官を辞職させる「罷免」ができます。なお、今まで国民審査で罷免された裁判官はいません。
審査対象となるのは15人の裁判官のうち、就任後に一度も国民審査を受けていない、または前回の国民審査から10年が経過している裁判官です。ただ、最高裁の裁判官は60歳を過ぎて就任するケースが多く、70歳で定年を迎えるため、2回審査を受ける裁判官はほとんどいません。また、就任してから衆院選が実施される前に退官した場合は、審査を受けることはありません。
衆院選での投票の際に受け取る国民審査の投票用紙には、審査対象となる裁判官の名前が書かれており、有権者が罷免すべきと判断した裁判官の名前に「×」をつけることができます。この「×」が有効投票の過半数に達した裁判官は、法律に基づき罷免されることになります。
有権者が審査するうえでは、審査対象となる裁判官の、過去の裁判における判断が主な材料となります。一方、就任から日が浅く、最高裁判所での裁判をあまり担当していない裁判官を審査するケースもあり、その場合は少ない判断材料で審査する必要があることに加え、その後は審査されずに定年を迎える可能性が高いため、国民審査の現在のシステムは不完全だという意見もあるようです。
今回、審査対象となるのは下記の6名で、いずれも就任後初めて審査を受けます。
※経歴は最高裁のウェブサイトより引用、年齢は2024年10月27日時点
1958年9月1日生まれ、66歳。裁判官出身、第2小法廷。1985年に判事補任官。最高裁首席調査官、大阪高裁長官を経て2022年7月に就任
1960年2月13日生まれ、64歳。弁護士出身、第1小法廷。1986年に弁護士登録。三菱自動車工業社外取締役、日弁連知的財産センター委員長を経て2023年11月に就任
1957年11月10日生まれ、66歳。裁判官出身、第2小法廷。1983年に判事補任官。東京高裁長官を経て2022年6月に就任、2024年8月から長官
1961年4月3日生まれ、63歳。裁判官出身、第3小法廷。1987年に判事補任官。東京地裁所長、大阪高裁長官を経て2024年8月に就任
1958年1月4日生まれ、66歳。行政官出身、第3小法廷。1981年に外務省入省。国連大使を経て2024年4月に就任
1961年9月12日生まれ、63歳。裁判官出身、第1小法廷。1988年に判事補任官。最高裁事務総長、東京高裁長官を経て2024年9月に就任
最後に、今回の国民審査の対象になる裁判官が担当した主な裁判を紹介します。なお、平木正洋氏と中村慎氏は就任から間もないため、関与した主な裁判はありません。
尾島明氏:違憲
宮川美津子氏:違憲
今崎幸彦氏:違憲
石兼公博氏:違憲
戦後の1948年に施行された旧優生保護法のもとで、障害などを理由に不妊手術を強制されたのは憲法に違反するとして障害者らが訴えた訴訟の上告審で、最高裁は15人全員一致で「違憲」の判断を下しました。
手術を受けたのは2万5000人にのぼるといわれ、被害者らは「戦後最大の人権侵害」などと訴えていました。法律の規定を最高裁が憲法に違反すると判断したのは、旧優生保護法が戦後13例目となります。
尾島明氏:違憲状態
今崎幸彦氏:合憲
※宮川美津子氏と石兼公博氏は就任前のため担当せず
「1票の格差」が最大3.03倍だった2022年7月の参院選が投票価値の平等を定めた憲法に違反し無効であるかどうかが争われた訴訟は、各地の高等裁判所では選挙無効は認められなかったものの、憲法判断については「違憲」が1件、「違憲状態」が8件、「合憲」は7件と分かれていました。
上告審でどのような判断が下されるか注目されましたが、最高裁では尾島明氏ら2名が「違憲状態」、1名が「違憲」で選挙無効、今崎幸彦氏ら11名が「合憲」と判断が分かれ、最終的に「合区などにより最大格差は3倍程度で推移し、拡大傾向にあるとはいえない」ということで「合憲」の統一判断が下されました。
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