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【衆院選2024】140円と630円。あなたの1票の値段を知っていますか?(原口和徳)

2024/10/12

原口和徳

原口和徳

衆議院議員総選挙(以下、衆院選)が10月15日公示、27日投開票の日程で行われます。過去3回の衆院選が、歴代ワースト3の投票率を記録していることもあり、選挙の際の「投票に行こう」という呼びかけも様々な形、内容で行われるようになってきています。

でも、1つの選挙区で十何万人と投票する中で「私の1票」はわざわざ投票に行くほどの価値、影響力をもっているのでしょうか。一票の値段を確認してみませんか。

「あなたの1票」が、政治家への年間140円の課金(応援)になる

政治家や政党の立場からすると、あなたの1票には①政党交付金の金額を決める力と②当選を左右する力があります。

図表1_政党交付金の算出方法

図表1の計算式にあるように、政党交付金の半分(得票数割)は、過去の国政選挙において獲得した票数に応じて配分されます。得票数割は、衆院選の結果と参議院議員選挙(以下、参院選)の結果で構成されています。

政党交付金(2024年)の総額は年間約315億円(2024年)ですので、このうちの1/4にあたる約79億円が衆院選での得票数に応じて、政党へと分配されます。衆院選は小選挙区と比例代表それぞれで支給額を算出するのですが、両者の総票数は約5,700万票とおおむね同一です。

そのため、政治家(政党)は、あなたの1票を得ることで、「 79億円 ÷ 5,700万 ≒ 約140円」(小選挙区70円、比例代表70円)の政党交付金を受け取れるようになります。

政党交付金をもらえるかどうか、ギリギリの政党も

また、政党交付金は一定の資格を満たした政党しか受け取ることができません。ここでも、あなたの1票が影響してきます。

図表2_政党交付金の変更を知らせる報道発表

国政選挙が終わると、総務省は図表2のように選挙の結果を踏まえた政党交付金の支給額の再計算を行います。2022年の参院選の結果、参政党が新たに政党交付金を受け取る資格を得たことがわかります。

政党交付金を受け取るためには、①政党所属の国会議員が5名以上となるか、②国会議員が1人以上且つ国政選挙での得票率の要件を満たす必要があります。そのため、所属する国会議員数が少ない政党にとっては、あなたの1票は年間1億円を超える政党交付金をもらえるかどうかを左右する票になっています。

例えば、所属する国会議員が3名の社民党は、前回衆院選での小選挙区での得票率は0.55%、比例代表での得票率は1.77%と、政党交付金を受け取る資格を満たしていません。(参院選で得票率の基準をクリアしているため、政党交付金は毎年受け取っています)

このように、小政党にとっては、あなたの1票が年間1億円を超える政党交付金をもらえるかどうかを左右する票になっています。

小選挙区の1割弱は「有権者の1%」の行動で結果が変わる

もちろん、あなたの1票には、選挙結果を左右するという意味での影響力もあります。前回衆院選では、小選挙区の1割程度は、その選挙区の有権者の1%程度の差で当選者が決まっていますし、比例代表ではすべての選挙区で有権者の1%以内の差で結果が変わります。(詳しい内容は、以下のリンク先を参照ください)

【関連記事】有権者の1%で1割弱の小選挙区は結果が変わる!知っておきたい1票の影響力

仮に、自分の選挙区では、どう考えても応援する候補者に勝ち目がないという状況でも、図表3が例示するように、比例代表において復活当選することがあることも押さえておきたいポイントです。

図表3_衆院選(2021年)における少数得票者の復活当選

また、前回衆院選では、れいわ新選組が比例代表(東海選挙区)で議席を得る権利を得ておきながら、有効な候補者がいなかったために、次点の公明党に議席を譲るということもありました。れいわ新選組は、小選挙区との重複立候補者を擁立していたものの、小選挙区での得票数が比例代表候補者としての条件(重複立候補の場合、小選挙区で有効投票数の1/10を確保しておく必要があります)を満たすことができなかったために生じた事態でした。

この時、れいわ新選組の上位であった候補者があと2,179票、自身の選挙区の有権者の0.50%の票を得ていれば、比例代表において、れいわ新選組は議席を獲得することができていました。

衆院選にかかる費用は670億円。有権者一人当たり約630円

また、私たち有権者が政治的な意思を表明するための手段でもある選挙は、「ただ(無料)」で行えているわけではありません。例えば、前回の衆院選を実施するために国が支出した金額は、約667億円でした。有権者の数は1億532万人ですので、有権者一人当たり634円を費やしたことになります。
言い換えると、投票よって政治的意思を表明する権利を、私たちは一人当たり634円のお金(税金)を払って購入していることになります。そんなのほしくないよ、という人もいるかもしれませんが、購入を辞退することはできません。

投票に行くための最後の後押しは、投票当日の行動を予め考えておくこと

「よし、今度は投票に行ってみよう」と思っても、残念ながら投票できなかったということもありえます。海外の調査では、投票しそびれた際の原因は「忘れていた」というものが最上位であったというものもあります。

「投票日は電車に乗って出かける前に投票に行こうと思っていたけど、朝、忙しく準備をしていたらもう駅のホームで電車に乗るところだった。引き返す余裕もなく、そのまま投票に行けなかった」なんていうこと、確かにありそうですよね。

そこで、ポイントになるのが、以下の条件を満たす計画、想像をしておくことです。

  • 何月何日の何時に投票所に行くのか。
  • どこから投票所に向かうのか(自宅から? 職場や学校から?)
  • 投票所に出かける前は何をしているのかを想像する(友人とランチ、部活やサークル、など)

できるだけ具体的に考えておくことが、計画とその実行を忘れないために重要です。

この記事を読んでくださった方はご自身の投票所がどこに設置されており、どのようにアクセスできるのかをご存じですか。よかったらまずはそこから調べてみませんか。


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原口和徳

原口和徳

けんみん会議/埼玉ローカル・マニフェスト推進ネットワーク 1982年埼玉県熊谷市出身。中央大学大学院公共政策研究科修了。早稲田大学マニフェスト研究所 議会改革調査部会スタッフとして、全国の議会改革の動向調査などを経験したのち、現所属にて市民の立場からのマニフェストの活用、主権者教育などの活動を行っている。

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