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有権者の1%で1割弱の小選挙区は結果が変わる!知っておきたい1票の影響力(原口和徳)

2023/9/28

原口和徳

原口和徳

解散総選挙(衆議院議員総選挙。以下、衆院選)の時期をめぐり、様々な報道がなされています。過去3回の衆院選が、歴代ワースト3の投票率を記録していることもあり、選挙の際の「投票に行こう」という呼びかけも様々な形で行われるようになってきています。

でも、1つの選挙区で十何万人と投票する中で「私の1票」はわざわざ投票に行くほどの価値、影響力をもっているのでしょうか。そんな疑問を持たれた方は、「1%」に着目して、あなたの1票の影響力について、確認してみませんか。

小選挙区の1割弱は、有権者の1%で結果を変えられる

前回の衆院選において、当選者と次点となった候補者の票差が最も少ないのは新潟第6区の130票差でした。新潟第6区の有権者数は27.3万人でしたので、有権者の0.05%程の差で勝敗が決しています。

図表1_衆院選(2021年)における接戦の小選挙区

図表1では、当選者と次点候補者の票数の差が当該選挙区の有権者数の1%に満たなかった選挙をまとめています。

289ある小選挙区の内、20選挙区、割合にして7%ほどの選挙区において、その選挙区の有権者の1%以下の票差によって勝敗が決しています。また、対象を有権者の2%以下の票差によって勝敗が決した小選挙区まで広げると42選挙区(全体の15%)、小選挙区の7か所に1つの選挙区が該当することになります。

接戦であった選挙として思い浮かべる方も多いであろう大阪都構想に関する住民投票とも比較してみましょう。

有権者数に対する賛成票と反対票の票差は1回目の住民投票(2015年)は0.51%、2回目の住民投票(2020年)は0.78%でした。全小選挙区のうち約5%(13か所)が1回目の住民投票よりも接戦であったことがわかります。

比例代表では、すべての選挙区で有権者の1%以内の差で結果が変わる

「でも、私が選挙権を持っているところでは、ずっと特定の人や特定の政党に所属する人が大差で勝っているみたい。やっぱり私の票には意味がない」と思う人もいるかもしれません。

そんな時は比例区にも目を向けてみてください。

比例代表選挙は、全国を11の選挙区に分けて、それぞれ当選者を決定しています。いずれの選挙区でも、最下位当選者と次点であった者の票差は有権者の1%未満となっています。また、最も票差が少なかったのは北海道選挙区の481票で、6つの選挙区ではその選挙区の有権者の0.1%未満の票差となっています。

表2_衆院選(2021年)における比例代表選挙での最下位当選者と次点者の票差

また、南関東、近畿、九州の各選挙区では、最下位当選者と次々点者までの票差も0.1%以下となっています。

1%の動向で、失われた議席もあります

加えて、前回衆院選では、比例代表選挙において、政党として議席の権利を得たものの、有効な候補者を用意できずに他党に当選枠を譲るという現象も生じています。

東海選挙区では、れいわ新選組が得るはずであった議席を公明党が獲得しています。

投票数による計算では、れいわ新選組が最後の1議席を得るはずでした。しかし、れいわ新選組は小選挙区選挙との重複立候補者のみを比例代表選挙に擁立しており、それぞれの候補者が候補としての条件(重複立候補の場合、小選挙区で有効投票数の1/10を確保しておく必要があります)を満たすことができずに、比例代表選挙には有効な候補者がいなくなりました。その結果、次点であった公明党(3議席目)に議席を譲ることになっています。

この時、れいわ新選組の上位であった候補者があと2,179票、自身の選挙区の有権者の0.50%の票数を得ていれば、比例代表選挙において、れいわ新選組は議席を獲得することができていました。

ここでも、有権者の1%以下の動向で議席に影響が生じています。

比例代表選出議員の1割弱は、小選挙区では当選者の半分以下の票しか獲得していない

重複立候補の仕組みによって、小選挙区ではその選挙区の当選者の半分以下の票しか得られなかった候補者が復活当選することもあります。

図表3_衆院選(2021年)における少数得票者の復活当選

埼玉県第15区では、最下位となった候補者が比例区で復活当選したため、当該選挙区で次点となった候補者のみが落選しています。この時、次点となった候補者は最下位であった候補者の1.5倍の票を獲得しています。

惜敗率(対象の候補者の得票数÷当該小選挙区の当選者の得票数)が50%以下で比例区での復活当選となった議員は13名います。比例代表選出議員数は176名でしたので、およそ7%になります。

同一政党内での争いも。1割弱の議員は、有権者の1%に左右される

比例代表での復活当選は、政党間の争いだけではなく、同一政党内での争いも生じさせています。

各政党の最下位当選者と次点であった者を比べた時、次点であった者が自身の小選挙区で有権者の約1%程度の票を獲得していたら、比例代表選挙での復活当選者となっていた選挙区をまとめたのが図表4です。

図表4_同一政党内で比例代表選挙の復活当選者が僅差となった選挙区

例えば、近畿選挙区では、大阪府第10区の立憲民主党候補者があと391票、有権者数の0.12%に相当する票を獲得していたら、立憲民主党の中の比例代表での当選者が変わっていました。同様に、九州選挙区では日本維新の会において宮崎県第1区の候補者が613票、有権者の0.17%に相当する票を獲得していたら当選者の変更が生じています。

小選挙区の有権者の1%程度の動向で比例代表の当選者が変わる可能性があるのは13選挙区、比例代表の当選者のおよそ7%となっています。

有権者の8割の人は1日のおよそ2%の時間で投票してこられる

最後に紹介する情報は1%ではなく、2%となってしまいますが、もう1つ。

明るい選挙推進協会が大型選挙のたびに実施している調査によって、およそ8割の人が自宅から投票所までの移動に要する時間が10分以内であったことが明らかになっています。仮に、投票に要する時間を10分とすると、有権者の8割の人は30分ほどでご自宅から投票所に移動し、投票してくることができることになります。

30分が1日に占める割合は2%ほどです。

図表5_自宅から投票所までの所要時間

ここまでに見てきたように、小選挙区だけでなく、比例代表選挙にも目を向けてみると、「1%」が結果に影響を及ぼしていることが確認できます。

もちろん、あなたの1票と有権者の1%は同数ではありませんが、それだけ競っている選挙だと、政治家の側もあなたの1票を手に入れようと必死になって働きかけてくると感じられませんか。あなたの一票には、思っているよりも大きな影響力があるかもしれません。

「1%の影響力」も踏まえて、次の選挙で投票に行くかどうかを考えてみませんか。

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原口和徳

原口和徳

けんみん会議/埼玉ローカル・マニフェスト推進ネットワーク 1982年埼玉県熊谷市出身。中央大学大学院公共政策研究科修了。早稲田大学マニフェスト研究所 議会改革調査部会スタッフとして、全国の議会改革の動向調査などを経験したのち、現所属にて市民の立場からのマニフェストの活用、主権者教育などの活動を行っている。

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