衆議院議員総選挙(以下、衆院選)が10月15日公示、27日投開票の日程で行われる見通しです。「政権選択選挙」と呼ばれることもある衆院選ですが、2012年の衆院選以来となる政権交代はあるのでしょうか。
表1では、2000年代に行われた衆議院議員総選挙での与党(自民党+公明党)と野党(自民党、公明党以外)の得票数(小選挙区)をまとめています。(出所:令和3年10月31日執行 衆議院議員総選挙最高裁判所裁判官国民審査結果調)
「郵政解散」として自民党が圧勝した2005年衆院選を除き、与党(自民党と公明党)の得票数はおおむね2,600万票から2,800万票程度となっていることがわかります。自民党が下野することになった2009年衆院選では与党の獲得票数は2,808万票であり、政権に返り咲いた2012年衆院選の得票数は2,653万票でした。
与党側の得票数が一定の範囲で安定していることを踏まえると、政権交代が起きるかどうかは野党側の得票数に左右されていることが推測されます。
野党(自民党と公明党以外の政党)の得票数は大きな変動を見せています。例えば、民主党による政権交代が起こった2009年衆院選と直近の2021年衆院選を比較すると、得票数は1,354万票、31.9%の減少となっています。
また、各選挙での総投票数を比較すると、2009年衆院選と2021年衆院選の間では約1,312万票の減少となっており、野党が失った票数とほぼ同規模の減少となっていることもわかります。
仮に2009年衆院選で民主党(野党側)に投票し、その後の選挙からは再び投票することなく選挙から退出してしまった1,300万人が次回の衆院選で再び野党側に投票するようなことがあると、政権交代が起きる可能性が高まりそうです。では、この1,300万人はどこに暮らす、何歳くらいの人たちなのでしょうか。
2009年衆院選での投票数を基準として、2021年衆院選での投票者の減少数が多い都道府県ほど濃い青色、少ない都道府県ほど濃い灰色で表示したものが図表2です。
減少者数が大きい都道府県は、北海道(74.6万人)、大阪府(65.8万人)、神奈川県(63.8万人)、愛知県(62.3万人)、福岡県(61.5万人)となっています。
これらの都道府県における与党(自民党+公明党)の小選挙区での議席の獲得状況を見てみましょう。
北海道6議席増(1議席→7議席)、大阪府3議席増(1議席→4議席)、神奈川県8議席増(3議席→11議席)、愛知県11議席増(0議席→11議席)、福岡県4議席増(4議席→8議席)となっています。
※( )内は、それぞれ左側:2009年衆院選、右側:2021年衆院選の獲得議席数
対象となった各道府県において、与党(自民党+公明党)が獲得議席数を増やしています。
また、「選挙から退出した有権者」の影響は都道府県によっても異なります。
与党(自民党+公明党)の小選挙区での議席の獲得状況について、最も変化が大きかったのは、埼玉県12議席増(0議席→12議席)、東京都12議席増(4議席→16議席)です。埼玉県と東京都の減少者数の合計は101.4万人です。2021年衆院選での投票者数は5,746万人ですので、投票者数の2%ほどの人が、小選挙区のおよそ1割に相当する議席を左右するほどの影響力を発揮していたことがわかります。
図表3では、年齢別の推定投票率と各年の確定人口をかけて求めた推定投票者数を比較しています。(出所:第31回~第49回衆議院議員総選挙年齢別投票率調、人口推計-各年10月1日現在人口)
※2009年には選挙権を保有していなかった10代は除外
減少数を比較すると、30代(519万人減)、60代(411万人減)で規模が大きくなっていることがわかります。また、70代や80代では投票者数が増えていることも確認できます。
ただし、今回、着目したいのは、2009年には投票していたものの、2021年には投票しなくなってしまった人たちです。そこで、12年分の加齢を加味した結果も確認してみましょう。なお、年齢別投票率調において1歳刻みの年齢別投票率を確認できる上限は79歳です。そのため、2021年時点で79歳となる2009年に67歳までの人たちを対象として投票状況を確認してみます。
投票者数は、2009年時点で60歳~67歳であった投票者において約300万人減少、50代であった投票者において約190万人減少するなど、年齢が高い層ほど選挙から退出した人が多くなっていることがわかります。
また、今回推計した減少数の合計が約750万人であることを考えると、2009年当時に80%を超える投票率を誇っており、今回集計対象にできなかった68歳~74歳の層でも大きな投票者の減少が生じているものと推察される状況です。
空前の選挙イヤーである今年は、イギリスで14年ぶりの政権交代があり、フランスでも議会第一が変わっています。また、アメリカ大統領選挙も激しい選挙戦が展開されています。
経済や外交などの政策課題に加えて、政治とカネなどの政治家自身に関する問題も注目を集めるなか、日本もこれらの国に続いて、政権交代が取りざたされるような状況になるのでしょうか。また、その時に、かつて野党による政権交代を生み出した1,300万人が再び存在感を発揮することがあるのでしょうか。その動向が注目されます。
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