2022年7月10日に参議院議員選挙が実施されました。
選挙中には、選挙を予定している候補者の各種活動も活発化していました。
政党等の有力者が候補者に同行し、有権者に対して存在をアピールする活動もweb上で流れていました。
選挙報道が多く流れ、政党などの活動に目が触れる機会が増えた参院選でしたが、国政選挙、地方選挙を問わず有権者の投票率は低下傾向にあります。
特に若年有権者と呼ばれる10代、20代の投票率は全体の投票率より低いと言われます。
今回は若年有権者と呼ばれる有権者の投票率は全体投票率と比較するとどの程度低いのか?と、投票所までの時間と投票率の関係について観察していきたいと思います。
利用するデータは総務省 選挙結果調、公益財団法人 明るい選挙推進協会 意識調査結果です。
最初に、国政選挙の投票率の推移についてグラフ化したものが図1と図2になります。
図1は第22回から第49回衆議院選挙までの投票率の推移を示した比較的最近のもの、図2は第1回から第25回衆議院選挙までの投票率の推移を示した過去のものです。
図1_衆議院選挙投票率
図2_衆議院選挙投票率
図1、図2のグラフをみてわかるとおり、多少の上下はあるものの、全体的に第1回から第49回(最新)衆議院選挙にかけて投票率が低下傾向にあります。
特に、図では示していませんが、前回2019年第25回参議院議員選挙では投票率が50%を下回りました。
この投票率を年代別に観察します。
衆議院議員選挙、参議院議員選挙の投票率をそれぞれ年代別にグラフ化したものが下記になります。
図3は、第31回衆議院選挙から第49回衆議院選挙までの年代別投票率です。
図3_年代別投票率_衆議院
図4は、第15回参議院選挙から第25回参議院選挙までの年代別投票率です。
図4_年代別投票率_参議院
「若年有権者層の投票率が低い傾向にある」と言われますが、確かに衆議院選挙、参議院選挙ともに、20歳代の投票率は最も低く推移していることが確認できます。
この衆議院、参議院選挙の年代別投票率は抽出調査であることを頭の片隅に入れておくことは必要になりますが、若年有権者は平均投票率より低い投票率にあることがわかります。
2013年の第23回参議院議員選挙よりインターネットを利用した選挙運動が可能になり、若年有権者層の投票率向上が期待されましたが、これらのグラフを見る限り、実際には投票率向上にはつながっていると言える状況ではないようです。
投票率が低下している要因の一つとして、投票所数が減少していることがあげられます。
公益財団法人明るい選挙推進協会 意識調査結果を見ると、投票所までの距離が遠いほど、投票する人の割合が少なくなることがわかります。
図5_投票所までの時間等投票割合
投票所までの時間が5分未満であると、投票する人の割合が75%を超えています。
しかし投票所までの時間が20分以上かかると、60%程度に低下します。
投票所を増やし、投票所までの距離を短くすることで投票率を向上させることができそうです。
しかしながら選挙事務員の確保が難しい、選挙経費節減等を理由として、当日投票所数が減少しています。図6は当日投票所数の推移です。横軸は「第○回衆議院選挙」をさします。
図6_投票所数
第43回衆議院選挙をピークに、当日投票所の数は減っています。
そして、投票時間を午後8時から午後6時までにする、投票時間の繰り上げする投票所も全体の25%以上あることがわかります。
図7は、当日投票所が閉鎖時刻の繰り上げを行った割合を都道府県ごとに示したものです。
図7_投票所繰り上げ閉鎖の割合
投票時間を午後8時から午後6時までに繰り上げる投票所も多いのですが、有権者が投票した時間についての調査結果を見ると、経費節減等の理由で投票時間を繰り上げてしまっていいのか疑問に感じる部分が出てきます。
図8は繰り上げ閉鎖が行われやすい時間帯である午後6時から午後8時までに投票する人の割合を示したものです。
図8_午後6時から午後8時に投票する人の割合
多くの人が午前中に投票を済ませているのですが、午後6時から午後8時までの間に投票している人(グラフの赤)も全体の10%ほどいることが確認できます。
このようなことを考えると、投票所の数を増やし、投票できる時間を午後8時まで延ばすことで投票率が向上する可能性が高まるものと思われます。
憲法15条には国民の意思を国政に反映させるための重要な権利である
公務員の選定罷免権
普通投票の保障
秘密投票の保障
が規定されています。
この重要な権利である投票権を行使しやすくするためにも、当日投票所数を充実させ、投票所を午後8時まで開いておくことが、投票率向上のために役立つものと考えます。
今回は若年有権者の投票率の傾向と当日投票所数について観察してきました。
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