上京して気付いたふるさとの魅力と課題「尾道市を世界一、住みたい町に」亀田年保氏(PR)
2023/02/06
「民主主義のお祭り」である参議院議員選挙がいよいよ最終盤を迎えている。6月22日に公示された第26回参議院議員通常選挙に立候補しているのは、選挙区と比例代表をあわせて545人。総額604億円もの経費をかけた大イベントは、7月10日の投開票日に向け、各候補が全力の戦いを繰り広げている。
全国に45ある選挙区のうち、最激戦となっているのが東京都選挙区だ。2000年代に入ってからは最多となる34人が立候補し、「定数6」を争っている。現在、大手メディアによる報道は「主な候補者」にほぼ限定されているが、本当にそれでいいのだろうか。
すべての候補者は、立候補できなかったあなたに代わり、「有権者の貴重な選択肢」として戦っている。選挙は投票箱が開くまで結果がわからない。つまり、無駄な立候補などない。私たち有権者は選挙を通じて「現在の社会が抱える問題」「役立ちそうな政策」「有権者とのコミュニケーション方法」「ユニークな戦い方」など、社会に役立つ材料を得られる。それは立候補してくれる人たちがいて、初めて成立することだ。
それなのに報道の量を絞ることは、せっかくの立候補を「なかったもの」にしてしまうことにつながらないだろうか。無名である自分自身を「無駄なもの」と切捨てる社会を容認してしまうことにつながらないだろうか。
私は20年以上、選挙の現場を取材してきた。どの選挙にも学びがあった。だからできる限り、すべての立候補者を自分自身の目で目撃し、その姿を世の中に伝えようとしてきた。それは今回の参議院議員選挙でも変わらない。
「そうは言っても、34人の候補者を自分の目で観るのは難しい」
もちろんそうだ。だから私は34人の候補者すべてに接触してきた。公示前から接触してきた人もいる。そうしなければ、一人で全員に接触することは難しいからだ。本稿に登場する順番は、立候補届出順になっていることをご了承いただきたい(文中・敬称略)。
まずはNHK党公認、議席を減らします党推薦・セッタケンジだ。事前に「街頭演説をする予定はない」と聞いていたため、公示日に選挙管理委員会で立候補を届け出た直後に話を聞いた。セッタケンジの口から最初に出たのはメディア批判だった。
「ものすごくおかしいことが起きているんですよ。今回、私は自分の名前をカタカナ表記で届け出ています。選挙管理委員会にもカタカナ名しか伝えていませんし、選挙管理委員会はちゃんと通称認定をしてくれました。それなのに、一部の新聞メディアは『漢字表記』になっていました。私は漢字表記を希望していないのに、漢字表記にしている。これっておかしいでしょ」
セッタケンジの怒りはもっともだ。通称使用が認められないなら、他にも表記が変わってくる候補が複数いる。最近は立候補者の住所も細かい番地までは公開されない。それは女性の候補者などに対する嫌がらせがあるためだ。
それなのに、選挙管理委員会にも伝えていない「漢字での本名」がメディアによって勝手に公開されるのはどういうことなのか。もちろん公職の候補者だから本名や連絡先を明らかにすることには一定の合理性があるが、恐怖を感じる状態では「立候補しよう」という人も増えてこない。セッタケンジの立候補は政界への参入障壁の高さを改めて明らかにした。
それはそれとして、政策を聞いた。
「3つあります。①減税と規制改革②エンタメ特区&若者経済圏特区の実現③今の既成政治家は与党も野党もいらない。だから私が今の政治家の議席を奪う」
セッタはバイクに乗り、NHK党公認の他の候補者と合わせて5種類のポスターを都内の掲示板に貼って回った。
「このスーパーマリオ状態もあとわずか。やり残さないようにがんばります! その後は普通のオッサンに戻ります」
選挙に立候補する人は特別かもしれない。しかし、特別である必要はない。
続いては日本第一党・菅原みゆきだ。桜井誠が党首を務める日本第一党は「日本という国の中では日本人が一番優遇されなければならない」という日本第一主義を掲げている。公示前には東京都庁で同党の公認候補者たちが記者会見を開いたが、党首の桜井自身は「意味がない」として記者会見に出席しなかった。
今回の参院選で訴える党の政策は「天皇陛下は父系を堅持」「消費税ゼロ、所得税2年免除」「自衛隊改革、国防費GDP比3%以上」「日本人学生向け奨学金は全額給付」である。菅原は街頭演説で力強く訴えた。
「国土を守るため、国民の命を守るために、核の保有、核武装も提案いたします。戦争するためではございません。抑止力のためです!」
主張は激しい。演説も勢いがある。しかし、通り過ぎる子どもが街宣車の上にいる菅原に手を振ると「ありがとう。気をつけて帰ってね」と優しく声をかけていた。
れいわ新選組代表・山本太郎は都内の駅頭で精力的に街頭演説会を重ねている。政策は「消費税ゼロ インボイス廃止、「ガソリン税ゼロ」「季節ごとの10万円給付」「社会保険料の引き下げによる負担軽減」「大学院までの教育無償・奨学金チャラ」などだ。
街頭演説では聴衆からの質問を受け付け、どんな質問にも答える。通常は演説終了後に片隅で行う記者からの囲み取材も生配信して公開した。そこで私は「有権者はこの国のオーナーだ」という山本に投票率の低下について質問した。
「投票に行かない方々が5割近くいるのはかなりヤバい話だと思います。でも、投票に行かない50%の力も合わせればこの社会を変えていける。たとえばですけれども、今は5割しか行かないことによって、もっとも票を集めるのがうまい人たちが勝ち続けています。資本家や一部大企業。私は別に資本家や大企業を敵視しているわけじゃない。みんな儲ければいいと思っている。でも重要なことは、みんなでよくなるような社会を作らなきゃいけないのに、一部資本家や大企業だけが儲け続けるような社会が25年続けてこられたんです。この国のオーナーにもう一度力借りたい。力合わせてひっくり返してやりたいんです」
街宣が終わると、山本は走って演説会場近くのお店に一軒一軒挨拶に回って頭を下げる。
「大きな音を立ててごめんなさい。ありがとうございました」
山本は選挙前よりも明らかに痩せていた。痩せましたね、と声をかけると「選挙ダイエットをがんばっています」と笑顔をみせた。しかし、周囲の空気は明らかに選挙前よりもピリついている。東京選挙区の定数は6。「一瞬も気が抜けない状況がこのまま続くんだろうと思います」と答えたとおり、余裕は感じられなかった。
気温35度を超える首相官邸前で、たった一人で演説を続ける候補もいる。沖縄の米軍基地を東京へ引き取る党代表・なかむら之菊(みどり)だ。なかむら之菊は選挙期間中に官邸前で行う演説を「ひとりフェス」と称している。
なかむら小柄な女性だ。しかし、官邸へと続く坂道の下にまで、なかむら之菊の力強い声は届いていた
「沖縄県民は日本全体の人口の1%しかいないんです! 国土面積でいえば0.6%しかない。そういう1%の者に99%が寄ってたかって『安全保障の要である』『私たちの平和を守ってくれ』と危ないものだけを押しつけ続けている。こんな恥ずかしい国家、誰が尊敬するんだ! 誰がこの国に未来があると考えるのか! どうしたら、これからの子どもたちに希望が持てる社会をつくってあげることができるのか。人間は人間らしくあるべきで、そういうときには、『わけあおう』と思えるじゃないですか」
なかむら之菊は18歳から社会運動を続けてきた。しかし、官邸前で演説をするのは今回が初めてだった。これまでは演説をしようとしても排除されてきたからだ。それが今回、選挙に立候補して「選挙活動の自由」を手に入れたことで初めて官邸前から政府に対して呼びかけることができた。拡声器から聞こえる声は、より一層力強さを増していた。
「本来の強さってなんですか! 優しさじゃないですか! 対話じゃないですか! 日本の安全保障、米国基地問題を考えることこそ、この国の未来を考えることだと思っています。そうしたことを可視化させるためにも、沖縄の米国基地を東京へ引き取る必要があるんです! 今、日本で5人に4人、約80%の人が米軍基地は必要だと言う。日米安保も8割の人たちが支持をしている。私は物理的に沖縄に置かれている基地をそばにおいてから、あなたの見解を聞きたい。そこから初めて基地を語ろうじゃないか」
なかむら之菊が6月6日に行った出馬表明記者会見で、私は「将来的には米軍基地を日本からなくすことを目指しているのか」と質問している。その際、なかむら之菊は「はい」と即答した。選挙中は木工大工職人の仕事を休んで活動を続ける。辛くはないのか。
「もともと350万円を用意して、供託金300万円と残りはホテル代。でも、やるしかない。とっかかりができたから、世論を高めていかなきゃいけない。ムーブメントで終わっちゃいけない。東京都知事選挙にも出るつもりです」
ウェブサイトで「ひとりフェス」の存在を知った人も訪れる。ポスター貼りを買って出る人も続々と現れた。
新党くにもり共同代表・あんどう裕には渋谷で直撃した。あんどう裕は自民党の衆議院議員として3期9年の実績がある。
「政府の経済政策の失敗のツケ回しが全部若い世代にいっている。ぜひ若い人に知っていただきたいのは、国の借金問題はないということです。国債が1000兆円あって、国民ひとりあたり800万円の借金を背負わされているというのは嘘です。そんな借金を皆さんは背負っていませんから安心してください。『政府の赤字はみんなの黒字』です。
それよりも、政府が国債を発行して減税をする。消費税も0にしていい。社会保険料の負担も4分の1にできる。奨学金だって、政府が全部肩代わりをして皆さん方が返済する必要がない環境も作れる。日本政府はそれだけの力を持っているんだと信じてもらいたいですね」
消費税ゼロ、積極財政という考え方は、他の野党にも共通する。とくに、れいわ新選組の山本太郎が街頭演説で使っていたスライドには、衆議院議員時代のあんどう裕の経済政策が紹介されることもあった。れいわ新選組との一番の違いは何なのか。
「国防の問題ももちろんですが、一番違うのは原発政策だと思います」
新党くにもりは原発を使うべきだという考えを持っているという。慌ただしく次の街頭演説場所に向かう前、あんどう裕は笑顔で私にこう言った。
「私、これまで負けた選挙をやったことがないんです。今回も勝たせて下さい」
日本維新の会・えびさわ由紀の演説は新橋と渋谷で見た。都内を車で走っていると、えびさわの街宣車に何度も遭遇する。人が集まる場所を精力的に回っていることがわかる。
街頭演説のために街宣車を停めると、そのまわりには同党のイメージカラーであるライトグリーンのポロシャツを着た人たちが20人近くいることがわかる。しかし、スタッフは決して一カ所に固まらない。一人ひとりが等間隔で広がり、それぞれが丁寧にビラを配る。人が増えるときも、どんどん候補者から遠い方へと陣地を広げていく。スタッフがみんな選挙運動慣れしており、演説会が終了するとみんなで集まって集合写真を撮って気勢を上げていた。
えびさわ由紀が新橋の演説で最初に取り上げたのは、調査研究広報滞在費(旧・文書通信交通滞在費=旧文通費)の問題だった。
「むちゃくちゃ怒っています。議員特権に真正面から切り込みます。だからみなさん、力をください。国会改革、真正面から行います。今の自民党では改革が絶対できない」
スタッフが拍手をすると、通りかかった男性が「東京に維新はいらん! 大阪に帰れ」と怒声を浴びせた。演説後、街宣車から降りてきた、えびさわ由紀に聞いた。東京には日本維新の会に批判的な人もいます。先ほども「東京に維新はいらん」と怒鳴った人もいました。そういう人たちにはどんな声をかけますか?
「特に。いろんな人がいらっしゃるのが普通なので、特に。今のお言葉が異常なこととも思わないですし、いろんな意見がありますので、特にそれに対しては何も思わないです。批判をされる方というのは一定数いらっしゃるので、気にせずにやっていきたいです」
東京都議を辞職して立候補したのが、ファーストの会代表・荒木ちはるだ。ファーストの会は、地域政党・都民ファーストの会が国政を目指して作った新たな政治団体。その唯一の候補者として荒木ちはるは立候補した。
選挙前から「鍵を握る」と言われていたのが、都民ファーストの会特別顧問を務める小池百合子東京都知事の応援だ。小池知事は荒木ちはるが中野駅に事務所を開いた際にも出席し、選挙期間に入ってからも、連日、荒木の応援に入っている。小池知事は街頭演説で荒木を「私の相棒」と紹介。小池知事が応援に現れる演説会は、連日、多くの人たちが駆けつけている。
荒木は街頭演説の中で、自分が都議として国に要望を伝えていく中で、東京都選出の国会議員が都民の声を国会に届けてこなかったと批判した。
「しっかりと現場がわかる、地域がわかる参議院議員を誕生させていただきたい!」
演説を終えた荒木に「知事の応援は心強い?」と聞くと、荒木ちはるはかすれた声で答えた。
「東京都のトップが来てくれるという事実だけでもね。コロナが『東京問題』だと言われた時、東京都選出の参議院議員が都民の暮らし、いのち、経済に思いを馳せてくれたかというと、まったくありませんでした。私はしっかりと都民の声を反映させたい。都議を辞職して、命をかけて戦っています!」
荒木ちはるの選挙事務所の目の前の中野駅南口ロータリーでは社会民主党・服部良一の演説を聞いた。予定の時刻より遅れて到着した街宣車は、服部を下ろすとすぐに別の場所へと向かってしまった。
「街宣車がトラブルで、すぐに修理をしにいくんです」
街宣車から降りた服部は支援者とにこやかに話している。タスキのねじれを支援者が治そうとすると、服部が言った。
「ヘロヘロだ〜」
服部にあったのは選挙戦序盤。すでに「ヘロヘロ」だなんて、大丈夫なのだろうか?
「違う違う! 動きすぎてタスキがヘロヘロになっちゃったの。私の足腰はまだまだ大丈夫です(笑)。毎日元気に走り回っております!」
街宣車の上から呼びかける演説では、自民党の選挙公約への危機感をあらわにした。
「自民党が軍事費を2倍にすると言っている。そして、敵基地攻撃能力を持つと。憲法が壊されることによって、どんな社会になるのか、みなさん、一緒に想像力を働かせてほしい。断じて憲法9条を変えさせない。そのための大変重要な選挙です」
街宣車の上には、全国比例で立候補している他の候補者も立った。
「服部良一さんの名前、ぜひ覚えてください」
そう言ってその候補者はいきなり歌を歌いだした。1949年にリリースされた流行歌「青い山脈」だ。
「みなさん、この、『青い山脈』の作曲者の名前をご存知ですか。服部良一さんです。ここにいる服部良一さんとは違いますが、『青い山脈』の作曲者と同じ名前の服部良一さんだと覚えてください!」
選挙区の投票用紙には候補者の名前を書かなければならない。各陣営が必死になって選挙を戦っている。
選挙に立候補しても、街頭演説を行わない候補もいる。NHK党公認・炭作り党推薦の長谷川洋平候補は街頭演説を行わず、自転車に乗ってポスター貼りをしていた。長谷川はアウトドアが好きで、環境にいい炭作りの面白さを伝えるために政治団体を作ったという。もともと炭作りを教えてもらったのは都民ファーストの地方議員。いまは八王子市で炭作りをしている。
炭作りで暮らせているのか、と聞くと、「暮らせていません」と笑った。長谷川は「大量消費の時代は終わったと思っている」と語り、「体験にお金を使う時代」への転換を訴えている。
「日本は水も良くて山もきれい。環境を守りたい。観光資源は次世代に残せる。海外から人を呼んで経済を回したい」
長谷川はポスターを貼る際、ホチキスのような針でポスターを固定するタッカーという器具を使っている。時々、ポスターの自分の目の部分にタッカーを遠慮なく打ち込んでいるのをSNSで見た。自分の顔に針を打ち込むことに抵抗はないのだろうか?
「全然ないですね。まずはポスターを見てもらわないと意味がないんで(笑)」
長谷川はNHK党の公認だが、NHKの受信料は払っているのか。
「テレビは捨てました。払っていません」
ほかのNHK党候補のポスターもあわせて貼る長谷川のもとには選挙管理委員会からの電話がよくかかってくる。
「タッカーでポスターを貼っていると、強風が隙間から入ってポスターが破れちゃうんです。せっかく貼っても、また貼り直しです」
長谷川は汗を流しながら次のポスター掲示場へと向かった。
日本共産党・山添拓の演説は新橋駅のSL広場前で見た。山添は国会質問260回。鋭い舌鋒で政府を追求する質問力は国会ウォッチャーの間ではよく知られている。ビラには「政治を動かしました」と大きく書かれている。
演説の導入は「モヤシの値段が上がりました!」。一般庶民と同じ生活実感を持っていることが伝わってくる。
「給料は上がらないのにどうやって暮せばいいのか、そんな困惑の声をうかがってきました。抜本的な対策が求められているはずです。それなのに、岸田内閣の経済政策って、あまりにもみみっちいと思うんです!」
聴衆はそれほど多くない。スタッフも維新に比べたら多くない。しかし、陣営のムダのない動きに目を奪われた。少数精鋭だが、手際がものすごくいいのだ。
会場には事前に場所取りのスタッフが来ている。そして、車の荷台から共産党の主張が書かれたたくさんのパネルを一瞬にして出して展開する。人数が少なくても、通りすがりの人たちには「何を訴えているのか」がすぐ伝わる。そして演説が終わると一瞬にしてパネルを回収し、車の荷台にピッタリと整理して撤収完了。またたく間に次の演説場所へと移動していった。さすがは結党100年。活動の歴史を感じさせた。
NHK党公認、バレエ大好き党推薦・いの恵司の演説は渋谷のオーチャードホール前で聞いた。ちょうどオーチャードホールでバレエの公演が行われており、いの恵司はその公演を観た人たち、観終えた人たちに訴えるのだという。予定の時間になっても現れないので電話をすると、「そちらに移動します」と言って電話が切れた。
オーチャードホールの入口で待つこと数分。いの恵司はバレエの舞台衣装を着て自転車を押してやってきた。
「日本の文化を支える芸術家たちがもう少しだけ安心して暮らせる社会をつくるために出馬しました」
バレエダンサーの待遇は厳しい。これでは日本の文化が育たない。だからヨーロッパの芸術家公務員制度のような、プロの芸術家への補助制度をつくることを考えているという。
公明党・竹谷とし子は新橋駅前で与党としての実績を強調した。聴衆の中心は年配の女性が多いが、若い女性も集まっている。スタッフが選挙運動員用の腕章を手渡すと、若い女性の二人組は腕章をつけてビラ配りに参加した。
「お昼休みにお手伝いに来たんですか?」
私がその二人組に声をかけると、2人は戸惑いながら「ええ」と答えた。彼女たちが手伝うのは新橋だけだという。演説会が終了すると、腕章を外してスタッフに返していた。
竹谷とし子のポスターは非常にやわらかい表情だ。しかし、演説は力強い。しかも、時間が立つにつれて力がどんどんこもっていく。
最初は「公明党が実現しました」と演説していたが、後半になるとどんどんヒートアップ。「1日2億円の税金のムダの削減」「ガソリン補助金、物価高対策の政策」「予備費も確保」。これらは「竹谷とし子が実現しました!」と言っていた。
演説終了後、竹谷は聴衆と丁寧に握手をしてまわる。聴衆との写真撮影にもにこやかに応じる。演説会場ではよくみられる、なごやかな風景だ。
しかし、その雰囲気が突然一変した。街宣車の近くで一人の男性が、竹谷陣営のスタッフに対して大きな声をあげたのだ。
「公明党はいつから自民党の腰巾着になったんだ! このまま行ったら駄目になるぞ!」
陣営スタッフが竹谷候補との間に4人で壁を作る。男性は竹谷にではなく、スタッフに対して厳しく声をあげていた。
「戸田(城聖)先生も、池田(大作)先生も、『大衆のために』だろう! ちゃんとやれ! 池田先生が作った党だから、おれたちはやってるんだ! やってやってるとは言わねえよ。でもな、池田先生の教えはこんなもんじゃねえだろう!」
スタッフが男性をなだめるように頭を下げる。竹谷が街宣車に乗って会場を後にすると、スタッフたちも男性に一礼してその場を去った。
私は大声を上げていた男性を走って追いかけて話を聞いた。男性の眼力は強い。体格もいい。威厳がある、とはこういうことだろう。男性は私の目を見てこう言った。
「お前が学会員かどうかは知らねえけど、池田先生の教えはあんなもんじゃないんだよ! 公明党は池田先生の教えを忘れている! 誰かが厳しく言わなきゃダメなんだよ。厳しいことを言って聞かせるためにも、お前自身が影響力を持たなきゃダメだ。お前、もっと頑張れよ!」
最後は励まされた。近くに停まっている黒塗りの高級車に乗り込むと思われた男性は、その手前に停められた自転車に乗って去っていった。
江戸川区議会議員を5期18年経験しているNHK党公認、動物愛護党推薦・田中けんには出馬表明記者会見で初めて挨拶をした。今回は「ネットを中心に選挙運動をします。街頭演説は地元である江戸川区中心です」と語った。公示日にも選管で会ったが、足早に都庁を後にした。
今回、田中けんは動物愛護党の推薦を受けている。しかし、出馬表明記者会見では「国防について訴えたい」と言って国防政策について多くの時間を割いた。政策は多岐にわたり、「償還済み高速道路の無料化」「医療費抑制」「食品添加物を欧米並みに規制強化」することも訴えている。
日本改革党・くつざわ亮治の演説は八王子駅で見た。駅を降りると街宣車が大音量で同党の政策を訴えている。
「くつざわ亮治、NHKスクランブル」「くつざわ亮治、マンガアニメの規制反対」「くつざわ亮治、9条廃止」「くつざわ亮治、核武装」「くつざわ亮治、移民反対」「くつざわ亮治、外国人生活保護廃止」「くつざわ亮治、スパイ防止法制定」
自分で三脚を立て、演説の様子を撮影しようと準備をしている、くつざわ亮治に話しかけた。このアナウンスに対する有権者の反応はどうですか。
「核武装っていうのを聞いた人はけっこう、ぎょっとしてますよね」
街宣車のまわりには10人ほどの支持者が集まっていた。夫婦で連れ立ってきている人もいる。いったい、どこに惹かれたのか。話を聞くと女性が答える。
「夫が観ていたYouTubeを横から見ていたら、私のほうがハマっちゃってファンになりました」
それを聞いていた別の女性も答える。
「ブレないところが魅力ですね。体を壊されたので心配していたんですけど、やっぱり日本人のために働いてもらいたいと思って。日本人が優遇されないのはおかしいと思います」
最初に答えた女性がまた答える。
「SNSで言及したら、すぐフォローしてくれたんです。それに、くつざわさんのことをTwitterに書くと、すぐにイイネを押してくれるんです」
くつざわ亮治は演説が終わった後も一人ひとりにとても丁寧に握手をして回る。支援者がくつざわ亮治にポチ袋を手渡すシーンを3回は見た。中に何が入っているかは知らないが、くつざわの胸ポケットは膨らんでいた。主張は激しいが、一対一で対すると非常に腰が低く、有権者との対応はまめまめしい。ここが人気の秘密なのかもしれない。
核融合党・桑島康文には公示日翌日に電話をかけた。公示日当日にも選挙管理委員会で姿を見かけたが、他の候補者を取材しているうちに桑島は都庁を後にしてしまったからだ。6月23日の早朝に電話をかけると、慌ただしい雰囲気の中で本人がこう話す。
「一人でやっているので、取材を受けている時間がありません。選挙運動は街宣車で大きな駅前などを巡回して連呼します。選挙ポスターも自分で公営掲示板に貼っていきます。1万4千か所以上あるのであまり進んでいません。電話や選挙ハガキ、パンフレット配りをする余裕もありません。政策はポスターを見てほしいと思います」
核融合発電は原子力発電とは違い、燃料は海水中の重水素である。放射性廃棄物も原発に比べて低レベルであり、二酸化炭素の排出がない。そのため、未来のエネルギーとして期待されている。桑島には電話を切られてしまったが、後日あらためて電話をすると出てくれたが、「忙しいので取材は結構です」とまた断られてしまった。
元東大阪市議の天命党・こばたはるひこは参議院議員選挙の直前まで「救国連合」として全国で遊説を続けていた。こばたが救国連合ではなく、天命党として参議院議員選挙に挑戦することを表明したのは6月9日。私はInstagramの投稿でその事実を知った。
私は昨年11月、こばたはるひこに広島市内で偶然出会っている。私が広島県知事選挙の取材に行った際、広島駅で街頭演説をしていたところを目撃して声をかけたのだ。その時、聴衆はマスクをしていなかった。こばた自身もマスクをしていなかった。私が名刺を差し出して話を聞くと、マスクは必要ない、という主張を訴えて全国行脚をしている途中だという。非常に演説なれしていて、聞いている人たちもウンウンと頷いていた。
「ひょっとしたら、この人は近いうちに選挙に出るかもしれない」
そう思っていたところ、知り合いの記者から東京選挙区から立候補しそうだという情報が寄せられた。公示日の立候補の届け出には本人ではなく陣営スタッフが参加していたため、演説予定を調べて大森駅で声をかけた。
「あー! 広島でお会いした! 覚えています!」
こばたは街頭演説で「消費税廃止」「教育費無償化」「食料自給率の向上」などを訴えている。ワクチン被害者救済も訴えており、マスクはしていない。陣営スタッフにも「もうマスク外しましょうよ!」とにこやかに声をかけられた。
「私たちは世界初のビーガン政党です(※ビーガンとは可能な限り動物性の食事をしない、身につけない、傷つけない生き方)。参政党さんも『食と健康、環境保全』と訴えていたりと、結構、私たちの政策を真似されているようですが、言行不一致だと思います。私たちは一切、肉を食べません。肉を食べている人は顔を見ただけでわかります」
演説では「当選したらすぐに消費税廃止」と訴える。そんなことができるのか。
「当選したら、まずは国連脱退です。消費税廃止の財源ですか? 複式会計の導入と日米地位協定の抜本的見直しで国家予算の倍以上を確保します。これで400兆円の財源ができるのに、なぜ、これをなぜやらないのかと思います」
こばた自身も自らビラを配る。受け取る人がいると、丁寧に頭を下げる。通り過ぎる人に「マスクつけろ!」と怒鳴られると「マスクに意味はないんですよ!」とにこやかに返していた。高齢の女性が差し入れの紙袋を持って、こばたに渡す。女性はこばたの熱い演説を感極まった様子で聞いていた。古くからのお知り合いですか、と聞くと、こばたはこう答えた。
「いえ、はじめましての方です。ウェブサイトの情報を見て来てくださったようです。ものすごく嬉しいですね」
メタバース党代表・ごとうてるきは過去に東京都知事選挙などに立候補しており、今回が14回目の選挙だ。「世のため人のため恩返しのために立候補している」と言い続けてきたが、これまでに没収された供託金は1380万円。今回の政見放送では「選挙で世の中を変えられるのに投票すら行きません」と日本人を叱咤激励。「去勢された日本人の魂を取り戻し、奮い立たせるのがチンコ主義の中にあるメッセージです」と訴えている。
取材を申し込むと、「自分は畠山さんの活動を良しとしていないので、もし、畠山さんの取材などを受けてしまうと、畠山さんを肯定していると誤解を与えてしまう可能性があるため、当面、取材協力などはお断りさせていただきます。申し訳ありません」と丁寧な言葉で断られた。
それでも個人演説会場に行くと、再び取材拒否の理由を丁寧に説明してくれた。
「畠山さんは寡占状態なんです。僕は若い人たちに協力したい。だから畠山さんの取材には協力できません。すいません」
実はこの日の個人演説会は中止になっている。会場を使用するためには避難誘導員を4人用意しなければならないと会場側から伝えられたためだ。ごとうは「弱小陣営には使わせないとさ。まじで日本の選挙は不公平」とTwitterに投稿した。
しかし、当日集まった15人ほどの中から誘導員を買って出る人がいたため、急遽、会場の中には入ることができた。私も最前列に座って候補者の登場を待った。
午後8時になると、スーツに着替えたごとうてるきが壇上に現れた。最初の一言は「撮影は会場の許可が必要なのでできません」だった。
「個人演説会は中止です。事前に取材のお約束をしていた人たちの取材をここで受けるだけです」
舞台の上で行われた若者による取材を居合わせた人たちが大ホールに座って観た。2組の取材が終わってもなかなか会場から出ない人たちに対し、ごとうは「個人演説会は中止なんです。外で取材を受けるのも申し訳ないのでここでやっているだけです。どうかお願いします」と立ち去らない参加者に向かって懇願した。
自由民主党・朝日けんたろうの応援には、安倍晋三元首相、岸田文雄首相など大物がやってきた。もちろん大物がいる時の演説会場には多くの人が集まる。しかし、応援演説がないときには聴衆の数がぐっと減る。朝日が演説で主に訴えているのは、東京2020大会を成功させた実績だ。
「世界中のアスリートが日本にお越しになって、素晴らしいパフォーマンスを世界中に届けることができた。スポーツの可能性を感じた瞬間でした」
そして、もう一つの柱が国土交通政務官として取り組んできた実績である。
「国土土を守り国民を守る。その上にスポーツや子どもたちの明るい未来、希望が持てる社会を次世代に引き継いでいきたいと思います」
聴衆が多い時には街宣車の上から演説をしていたが、渋谷ハチ公前では通行人と同じ高さに立って演説をした。それでも長身の朝日は目立つ。そのとなりには「一緒に写真を」というボードを持ったスタッフが立っていた。安定の選挙戦にみえる。
政見放送にスーパーマンの姿で登場したスマイル党公認・込山ひろしにも話を聞いた。込山は立候補届け出会場にもスーパーマンの姿で現れた。スマイル党総裁、マック赤坂が着ていたものを引き継いだのだという。立候補を届け出たばかりの都庁の廊下でスーパーマンに話を聞いた。
「私が選挙に出るのはこれで4回目です。全力のスマイルで今回の選挙戦をがんばらせていただきたいと思います。明るく元気に、スマイル!」
込山は両手に角度をつけて口角もあげて満面の笑顔を見せるスマイルポーズを見せた。しかし、込山の語り口は厳しい。
「3年間コロナが続き、困っている方がいっぱいいらっしゃる。注目の選挙区だからスマイルを広げたい。でも、スマイルだけじゃ世の中変わりません。今回の私のテーマは『強い日本を取り戻す』です。政策は過去4回の選挙で訴えてきたことをまとめました。詳細は選挙公報に書いているので見ていただければと思います」
込山は「コロナ対策として国民ひとり当たり月額10万円給付」「所得税、社会保険の負担減」などを訴えている。しかし、立候補するために必要な300万円もの供託金はどうしたのか。以前は競馬で大勝負をして増やしたとも言っていたが、実態はどうなのか。
「全額ほぼ借金です。少しずつ返していますが、今の負債はトータルで860万円ぐらい。でも、かわいそうだと思ってほしいとかは全然ありません。残りの人生、できることは全力でやる。競馬と同じで、選挙はパドックに立たなければ勝つ可能性はゼロです。可能性がないと諦めるんじゃなくて、今回はなんとしても奇跡の当選を目指してがんばります! スマイル」
私の取材が終わると、込山はいきなり都庁の廊下でスーパーマンの衣装を脱ぎだした。届出会場まではスーパーマン姿で電車に乗ってきたのに、帰りは普段着。一着しかないから大切にしている様子がうかがえた。
2020年に国政選挙からの撤退を表明していた幸福実現党も今回の参議院議員選挙には挑戦している。幸福実現党・及川幸久が渋谷駅で行った演説を見に行くと、集まった聴衆20人ほどと「税金のない国でジャパグレ!」と声を上げていた。ジャパグレとは「メイク・ジャパン・グレイト・アゲイン」の略だという。及川は演説でこう訴えた。
「日本は本来、偉大な国であり、誇り高い国であり、世界でもっとも歴史のある国であります。その日本が政治家の失政によって調子悪いけど、もう一度、日本を偉大な国に復活させる。それをやるのは政治家ではありません。我々の力です。日本をもう一度偉大な国にするために、声を上げていきたいと思います。それではみなさん、税金のない国で、ジャパグレ!」
街宣車から降りた及川に聞いた。有権者の反応はどうですか。
「東京選挙区の中では、ネットを使っているのは私だけ。ネットの世界ではダントツだと思う」
自由共和党・青山まさゆきには新宿西口で話を聞いた。街宣車やポスターには「過剰なコロナ対策と憲法改正に反対」と大きく書かれている。わかりやすく言うと「マスクはいらない。憲法9条は守る。緊急事態条項追加の憲法改正に強く反対」だ。
「今のコロナ、実は、たいしたことなかった。どんどん致死率が低下して、今、全年代を通じての致死率は0.2%強しかありません。インフルエンザと同じくらい。子ども達に限っては0.001%。インフルエンザの100分の1。20代以下へのワクチン接種完全中止。3回目接種とそれ以降は停止しようと訴えています。マスクが感染予防効果がないことはおわかりだと思います。世界の通説になっているように、ウイルス感染、空気感染なので、つけていても何の意味もないんです!」
候補者も支援者もノーマスク。国会議員時代の地盤は静岡だったが、今回の選挙には東京の人たちもボランティアで加わってくれているという。
自由民主党・いくいな晃子は街頭演説で「がんサバイバー」としての経験、そして、政府委員としての実績を中心に訴えている。芸能生活36年だけに聴衆の足を止める演説をする。特に強調しているのが、自身が「働き方改革実現会議」のメンバー時代に提案した「トライアングル型支援」だ。トライアングル型支援とは、主治医、企業、両立支援コーディネーターが連携して患者の就業をフォローするものだ。
「トライアングル型支援をもっともっと知っていただくことが私の使命です!」
演説終了後は嫌な顔ひとつせず、一人ひとり丁寧に握手をして回った。おニャン子クラブ時代からのファンとの撮影にも気軽に応じていた。
立憲民主党・松尾あきひろは弁護士時代に友人が過労死したことが政界挑戦のきっかけになったという。その話をすると熱い。しかし、選挙戦前半は淡々と政策を訴える姿が目立った。
街頭演説では、場を盛り上げようとした応援弁士が「賃金アゲアゲ男! 松尾あきひろです!」と勢いよく紹介するが、松尾本人がマイクを握ると真面目さが全面に出る。
演説が終わった後に、「どうやって最低賃金を上げるのですか?」と聞いてみた。
「最低賃金は政労使で話し合って上げていくんです。そこで政治が『上げるんだ』と強く働きかければ上がります」
あくまでも真面目。しかし、インターネット上では松尾の別の面をみることができる。YouTubeでは、坂道を全力で駆け上がる「坂道ダッシュ」動画をアップしている。そしてラップのリズムに乗せた「ラップで松尾あきひろ」も披露している。これを街頭演説でやらないのはもったいないのではないか。そこで演説を終えた松尾に「ラップは現場ではやらないんですか?」と聞いてみると、「じゃあ、やりましょうかね」という真面目な答えが返ってきた。
それが実現したのは7月4日。私が出演するインターネット番組に電話出演してもらった際、「ラップで松尾あきひろ、ってありますよね?」と水を向けると、松尾は生電話でラップを披露したのだ。
「♪ま、ま、ままま、まつおあきひろです♪ りっ、りっ、りっ、立憲民主党の♪ 松尾あきひろです♪」
番組終了後に出演御礼のメッセージを送ると、またしてもラップで返してくれた。
「ま、ま、ままま、松尾あきひろは、最後までがんばります」
ノッてきたのではないだろうか。
前回選挙で112万票あまりを獲得してトップ当選したのが立憲民主党・蓮舫。今回は仲間の応援のために全国各地に出かけている。そのため東京にいる期間が少ない。候補者本人不在の間は「チーム蓮舫」が本人の等身大パネルを持って活動を支えている。
最激戦区の東京を不在にして焦りはないかと聞くと、正直な心情を吐露した。
「もちろん不安です! でも、党勢が落ちている今、仲間が減ってしまってはいけない。仲間のためにできることをしたいとの覚悟で活動しています。数日でも東京では全力で私の思い、政策を訴えます!」
こどもの党代表・さいき陽平には公示日の都庁で話を聞いた。
「私はLGBTQの当事者です。今回の選挙では『すべての子どもに1000万円』という政策を訴えています。子どもが増えれば経済も活性化するし、年金も安心できるし、国防強化にもつながる。本当に人口減少、少子高齢化が最大の課題だと思っています。そこに終止符を打ちたい。東京選挙区では最年少の30歳の候補者として、一番子育てしづらい東京で変えていきたいと思っています」
1000万円の給付はどうやって行うのでしょうか。
「現金給付と現物給付の組み合わせです。具体的には、赤ちゃんから18歳まで少しずつ渡していく。現在1万円の児童手当を3万円に引き上げたい。今は給付対象が15歳までですが18歳まで引き上げる。これで毎月3万円渡すと648万円の現金給付になります。残りの352万円分は、子どもの医療費無償化、給食費の無償化、学習関連費の無償化、給付型奨学金も組み合わせた現物給付です。これで生まれてから18歳になるまでに1000万円。大人になるまでの教育費は国が持ちましょう、ということです」
さいきは「同性婚の選択肢を作っていくのも政治の役割」だと語った。
「国があらゆる生き方を応援する姿勢を示すことは、みなさんにとって暮らしやすい日本になると思っています」
7月4日、自民党本部前では「自民党によるLGBTQ差別に抗議するデモ」が行われた。さいきがその場所でマイクを握って声を上げる様子を私はYouTubeの動画で見た。
「自民党の冊子、『同性愛は障害である』『同性愛は治療しなきゃいけない』。そんな冊子を配った自民党に対して強い抗議の言葉を、ここでみなさんと一緒にあげさせていただきたいと思います」
「あんな冊子を配る自由民主党に、自由と民主を語る資格はないと私は思います」
さいきの言葉を聞いた人たちから、大きな拍手が起きていた。
維新政党・新風の河野けんじには都庁で話を聞いた。
「政策はいっぱいあるよ。まずはウクライナ戦争をとめる。そのためにはタダってわけにはいかないだろうから、安倍晋三元首相に100兆円もたせてロシアに派遣して戦争を止めさせたい。それから、学校教育では毎日3分間、挨拶の練習をさせたい。『おはようございます』『ありがとう』を習慣づける。それから、都内に核シェルターを作りたい。エネルギーは地熱発電にする」
思い切った政策が並んでいますね。
「言いたいことが言えない世の中だからね。ネットを中心に発信していきたい。いま、3つぐらい動画を考えているんだよ。『嗚呼、一度言うてみたかった』『正しい右翼の作り方』『言い過ぎた時には謝る土下座チャンネル』。料理をやっていたから『ビーガンチャンネル』もいいなと思っているんだよ」
無所属の乙武ひろただの演説は新宿駅西口で聞いた。乙武も聴衆にマイクを渡して意見や質問を聞く対話型の演説会を開いている。
乙武は公示日に渋谷から国会議事堂まで2時間かけて歩く「東京大行進」を行った。これはアメリカ公民権運動の象徴とされているワシントン大行進をイメージしたものだ。
「公民権運動の象徴とされているのがワシントン大行進。これをきっかけに、少しずつ差別がなくなっていった。ワシントン大行進と比べればまだまだ数は少ないかもしれない。でも、渋谷から国会議事堂までの東京大行進は、この社会を変えていく第一歩になったと確信しています」
乙武が自身の売りとしてあげていたのが「発信力」。もともとわかりやすい演説をする候補だったが、選挙戦に入ると言葉に熱が加わった。
「ぜひみなさんも行進に加わってほしい。社会を変えてほしい。政治なんて遠い世界の話だ。政治なんて嘘くさい、あっち側の話だよね。そう思う気持ちもわかります。だけど、あっち側の話じゃないよね。納めている税金の使い道を決めるのが政治でしょ。なんでそれを手放しちゃうの! もう一回取り戻そうよ、僕たちの手に!」
別の機会に聞いた演説では、選挙権年齢、被選挙権年齢の引き下げについて語った。
「参議院議員選挙では、20代の方々は立候補する権利すら与えられていない。どうして義務教育が終わった人に選挙権がないの。立候補できないの。同じ大人なのに。税金を納めるのに。これって差別でしょ! 私は選挙権年齢、被選挙権年齢を引き下げたい! 思慮分別があるかどうかなんて、人によるんだよ! 年齢なんて関係ないんだよ!」
ボランティア登録をしてくれる人は日々増えて、いまでは1600人に増えたという。
無所属の中川智晴が選挙に出るのは3回目だ。はじめての選挙は2014年の東京都知事選挙。その時に掲げていた政策は「トップガン政治 from Nakagawa」だ。2回目の選挙である昨年10月の衆議院議員選挙(岡山4区)の際には使われなかったが、今回の選挙でキャッチコピーとして復活した。
今回、中川は2種類のビラを用意。選挙戦3日目に江東区で行われた第一声は、ビラを読み上げる形で行われた。
「ロボティクスの時代を目指します。しかし、人にしかできないこともあります。人の手による仕事が尊ばれる時代が私の言うロボティクスの時代です」
2014年の東京都知事選挙に立候補した際、中川は「どんぶり勘定政策」が目玉政策だと言っていた。これは「東京都がサボっている人の口座からお金を取り上げて、ちゃんと仕事をしている人の口座に振り込む」というものだと中川は説明していた。憲法上、大いに問題がある政策に思える。2014年にも本人に直接指摘したが、今回の参議院議員選挙出馬表明記者会見の場で、あらためて私は中川に聞いた。
「かつて中川さんが訴えていた『どんぶり勘定政策』。あれは今も有効ですか」
中川は私の質問に笑顔を見せると、冷静な口ぶりでこう答えた。
「じっさい、無理ですよね(笑)」
真剣に聞いた私はハシゴを外された。
聴衆が私を含めて3人しかいない第一声が終わると、中川は私にこう言った。
「秋葉原のバッティングセンターで170kmのボールを打っているんです。動画を撮ってくれませんか。こんなおじさんでも170km打てるんだという姿を子どもたちにも見せたい。選挙ですから、私は今回、政策で勝負しています。この政策で当選できたら、世の中の多くの人に勇気を与えられるんじゃないかと思っています」
参議院議員選挙の公示日が1週間後に迫った6月15日、鳩山由紀夫元首相が棟梁(代表)を務める政治団体、共和党が東京都選挙区に候補者を立てることを発表した。その候補者が共和党・たむらまな。
たむらは立候補届出会場に保育園に通う子どもと一緒にあらわれた。立候補届出も子どもと一緒に。届出を終えた直後に都庁で話を聞くと、「出陣式はメタバース(仮想空間)上で行う」という。
「仕事で地方の子どもたちと関わっています。東京と地方では支援格差があるので、日本全国の子どもたちに支援を届けられないかと思って立候補しています」
初めての選挙に戸惑いはなかったのだろうか。
「めちゃくちゃアナログで驚いています。ポスター掲示場の地図は紙で渡されるし、(ビラに貼る)30万枚の証紙にも驚きました。あと、子連れで歩いちゃいけないってことにも困惑しています。選挙利用にみられちゃうので、違反の恐れがあると選管から言われました」
選挙違反を摘発するのは警察である。警察はなんと言っているのか。
「警察に相談しても、『子連れのどこからが違反になるのかはお答えできない。摘発が仕事であって、あれが違反これは違反でないという見解は出せない。公選法では18歳未満の選挙活動は禁止とされている』という見解の繰り返しです。いいともダメとも言われない。子どもがいる人はどうするのかと困惑しています。実子の帯同特例とかがないと困りますね」
別の日に街頭演説予定を聞くと、「聞く側にもボランティア側にも熱中症リスクがあるので、ウェブ中心で選挙活動を行っていく予定です」という。鳩山由紀夫代表と一緒にYouTubeライブでの質問会を開いたり、タスキをつけて子どもと一緒に高尾山を上りながら挨拶する活動を行ったりしているという。
7月4日の夕方に電話をかけると、田村は子どものお迎えに来ている保育園で電話を取ってくれた。
「山登りは駅前で立つよりも反応が良かったですね。『候補者がこんなところにいていいの?』と驚かれた面もありましたけど」
まだまだ子どもを連れて立候補することには困難が伴う。多様な人が政治参加するための準備が日本では整っていないことがよくわかる。
平和党・ないとうひさおに声をかけると、元気よく答えてくれた。
「選挙は5回目です。今回訴えたいのは、依存体質からの脱却。日本の自立です。これは全体的に自立しようと。軍事面だけではなくて、食料その他も含めた自立です」
ないとうは8年前から『東京の人口を2分の1にする』という、初めて聞く人には誤解を与えそうな政策を訴えている。詳しく話を聞けば移住を強制するものではないとわかるが、なかなか詳しく政策を見てもらう機会は少ない。あの政策は今も有効なのだろうか。
「はい。人口一極集中の緩和です。コロナで浸透したテレワークを進め、地方への企業誘致で人口を分散させたいと思っています。時代がようやく私に追いついてきましたね」
ないとうは胸を張って言葉を続けた。
「実は、私の政策はかなり時代の先を行っているんですよ。地方創生や地域活性化も、自民党なんかがあとからコソコソと真似してる。パクられると嫌なもんですね。なにが嫌かって、名前だけ取って中身がぜんぜん違うみたいなのが多い。私が言っていた『積極的平和主義』は、中立の立場であらゆる国際紛争の調停に積極的に関わっていくことでした。だけど、安倍さんの積極的平和主義は日米同盟を深めるみたいになっていた。名前はパクられても、中身が違うんです」
NHK党公認・松田みきには渋谷ハチ公前で会った。立花孝志党首が渋谷ハチ公前で合同街宣をするのに合わせて松田も渋谷にやってきた。選挙中は党のコールセンターで電話を受けることもあるという。松田はこの日、名前の入ったタスキをかけ、同党の比例候補のユニークなポスターを配っていた。
「ポスターへの反応はものすごくいいですね。コールセンターで電話を受けても、『今まで選挙に興味を持っていなかったけど、NHK党の演説やユーチューブを見て初めて投票したいと思った』という声を聞いています」
最後に一言求めると、カメラに向かって「NHKをぶっこわーす!」と決めゼリフ。ポスターを持った松田のところには通りすがりの聴衆が「ください」「ください」と寄ってきた。
参政党・河西泉緒の活動は公示前の政治活動から見ている。河西はホームレスの経験もある銀座のクラブ経営者だ。公示前に明治神宮前で行われた演説では、20人ほどの熱心な支援者が集まって演説会を盛り上げていた。演説の途中では支援者たちがかわるがわるマイクを握り、政治に対する熱い思いを演説していた。みんな目が真剣だ。
公示前の河西は「政策的なことはこれから勉強するので、難しいことは私に質問はしないでくださいね〜」と釘をさした。それでも「モテる男の条件トップ3」などを軽妙に話していくと、支援者たちが笑いながら喜んだ。
全国比例候補と一緒に行う街宣では大変な人数が集まる。しかし、選挙区候補単独ではそれほど人が集まっていない。河西は公示後の演説では参政党の政策を語っている。
「参政党の重要課題は、1に教育、2に食と健康、3番目に国守りです」
参政党の候補者に共通する主張は「メディアが言っていることは事実じゃない」である。その理由を河西は「日本が敗戦国だから」だと説明した。
「政治も情報も経済も、ぜんぶ、ぜーんぶ操作されているんですね。日本はアメリカとかの家畜ですよ。残念ながら。この事実を伝えたくて参政党から立ってるんですね」
熱心な支援者たちがオレンジ色のビラを振っていた。
今回の選挙戦で、核融合党の桑島と並んでほとんど報道がなかった人物がいる。それが無所属の油井史正だ。私は公示日に立候補届出会場で話を聞けたが、それ以降、油井は電話をかけてもまったく出てくれなかった。時間帯をずらして何度かけても出てくれなかった。届出初日の貴重な肉声がこちらだ。
「ポスターは作った。街頭演説は地声でやります。私の最大にして唯一の訴えが憲法改正。9条廃止。軍隊を持たないのは情けない。9条廃止して自衛隊を合憲にする」
自衛隊への思い入れがあるのでしょうか。
「ない」
えっ。
「防衛費2%とかは二次的な問題。憲法をやれば、自民党と社会党がけんかしなくなって日本が統一される。軍隊と警察は国家の基本ですよ」
改めて話を聞きたいと思い、電話をしたが、やはり出てくれない。そこで自宅を訪ねて呼び鈴を鳴らしたが反応がない。手紙を書いて油井の自宅ポストに投函すると、7月7日に油井からの手紙が封書で届いた。万年筆で書いたと思われる手紙の始まりはこうだ。
「拝啓 インタビューの申し込みありがとうございます。私の参議院選挙立候補の最大目的は日本国憲法改正です」
その後には油井の主張が続いた。すべての漢字にルビをふってくれていた。しかし、携帯電話の番号や、インタビューの日時などに対する返事はなかった。
無所属の中村高志が選挙に出るのは2回目だ。最初の選挙は9年前の参議院議員選挙。それから今回の立候補までに間が空いた理由を聞いた。
「その時はまだ会社員。会社に迷惑がかかると思って言えなかったことがある。それが心残りだった。今回はもう会社を退職したので言いたいことが言えます。今回が最後の選挙です」
9年前の選挙で言いたくて言えなかったこととはなんですか。
「私は規格外の人間なんです」
わかる。選挙に出るのは大変なハードルだ。立候補した人は誰もが特別な存在だと言っていい。具体的には、どう規格外なのですか。
「私は超能力者です」
そうなんですか!
「私は、私のすることを皆が真似しがちだと思っています。私の考えたことはテレパシーで全世界に届いてしまっている。このテレパシーは自分でも制御できないんです。だから私が参議院議員になったら、議員歳費をどんどん使って消費に回したい。安くなくても品質のいいものをどんどん買っていきたい。そうすればみんなが私の真似をして、日本の経済が活性化すると思っています」
電気主任技術者でもある中村は、地熱発電を活用すべきだとも訴えている。今回の立候補者にも地熱発電を訴える候補がいる。日本で長く不況が続いていたとき、中村高志はお金を使わない生活を続けていたという。そんな中村高志が超能力者だと自分で気づいたのはいつなのか。
「1990年、ベルリンの壁が崩壊したときです。あのとき、壁を壊している人が取材を受けて、『自由はいいぞという声がどこからか聞こえた』と話していたのをテレビで見たんです。その時、ああ、私のテレパシーが全世界に届いてしまった、と思いました」
そう話した後、中村高志は「この話、どう思います?」と私に意見を求めてきた。私は「世の中のために超能力を使うのは公職の候補者として素晴らしいことでは」と簡単に答え、こう質問した。
「中村さんはこれまでも世の中のために超能力者を使ってきたわけですよね。どうして今までと同じようにボランティアではいけないんでしょうか」
少し考えて中村は答えた。
「いや、もうボランティアじゃあ、やってられない……。もちろん、私の言っていることを信じろとは言いません。信じてもらえるとも思っていません。それでも私はそう思うんです」
実は中村高志も個人演説会を開こうとして会場は押さえていた。しかし、施設から避難誘導員が4人必要だと言われてあきらめていた。そのかわりに中村高志が思いついたのが、10代から親しんできたギターを持っての街頭演説だ。
「街頭演説だけでは話を聞いてもらえないかと思って。演説の前後に歌を歌います」
演説前に演奏した曲はサザンオールスターズの『ロックンロール・スーパーマン』。高音の歌声が切なく響く。決してうまいとは言えないが、通りがかった若い女性が一人、中村の歌に足を止めて体を揺らし、手を叩いた。
私はまた別の日に中村高志の街頭演説を見に行った。超能力者である中村が世界平和を願えば、それがいつかは実現するのではないかと伝えに言ったのだ。
「うーん。戦争をとめるのは難しいですよね」
それならせめて、平和を願う歌はどうですか。
「平和を願う歌ですか……。なかなか思いつかないので、また『ロックンロール・スーパーマン』を歌います」
新宿西口の地下に中村のギターと声が響く。中村が掲出した「街頭演説会」の標記を見つけた男性が歩きながら中村の姿をカメラで撮影し、立ち去り際にこう言った。
「おい、泡沫候補、がんばれよ! 300万円没収されるけどな!」
中村は男性の大声にも演奏を止めず、懸命に歌い上げた。演奏終了後、中村高志がギターを片付けていると、さきほどとは別の初老の男性が寄ってきて御礼を言っていた。
「サザンの名曲を久しぶりに聞けて嬉しかった。ありがとう!」
中村は少なくとも一人の男性を幸せな気持ちにさせた。それはとても尊いことだと私は思う。
***
この世の中には多様な人たちが生きている。そして、政治家は多様な人たちの代わりに仕事をする。公職に就く者とは、この世に生きる多様な人々の権利を守るために働くべき存在だ。自分たちだけが優遇されればいい、自分を支援した人たちだけのために働くという考えでは務まらない。政治家は等しく「全体の奉仕者」でなければならない。
東京都の有権者には、34もの「贅沢な選択肢」が用意されている。投票日まであとわずか。有権者はすべての候補者の熱い思いに応え、大切な一票を行使してほしい。
(了)
この記事をシェアする
選挙ドットコムの最新記事をお届けします