中国・四国地方のほぼ真ん中、瀬戸内の十字路として、自然豊かな山々と丘陵地、そして美しい島々が広がる尾道市。観光地としても注目を浴びる機会が増え、外側から見える尾道のイメージはアップしている一方、ここ数年は人口が減ってきてしまっています。尾道市で育ち、進学を機に上京してからも地元の活性化に携わってきた会社経営者の亀田年保(かめだ・としやす)氏は、尾道を離れたからこそ見えた地域課題があると語ります。尾道市を、さらに魅力ある町にしたいと一念発起して政治の世界への挑戦を決めた亀田氏に、現在抱える課題意識と、その解決に向けて思い描くビジョンについて、お話を伺いました。
選挙ドットコム編集部(以下、編集部):
政治の道に入ることを決意したきっかけを教えてください。
亀田年保氏(以下、亀田氏):
私は、以前働いていた読売テレビ時代から尾道市の地域振興に携わっておりました。2014年以降、尾道を広島県外でPRする「尾道観光大志」を務めたり、瀬戸田町のしおまち商店街を中心とした地域の活性化をめざす「しおまちとワークショップ」に参加したり、尾道市内での活動を通じて尾道市民の皆様の生の声を聞いてきました。
Uターンする少し前ぐらいから、知人だけでなく、初めて入るお店の人・初めて会う町の人から、尾道を引っ張って欲しいと幾度も声を掛けられたのです。その期待に応えること、残りの人生を尾道のために尽くすことが私の使命ではないかと、感じ出しました。
東京や大阪の都会で過ごしたからこそ言えます。「尾道」のポテンシャルは高い。尾道市に暮らしている市民の皆様が、その恩恵を受けて豊かに暮らせる町、住みたい町にしたいという大義のもと政治の道に入ることを決めました。
編集部:
尾道市の良さとは?
亀田氏:
まずは人がとても良いですよね。
面倒見がよくて、人懐っこくて、人見知りせず、社交的。観光客への感じの良さやコミュニケーション能力は、商人の町で育まれ受け継がれてきた人の温かさではないでしょうか。
また、目前に広がる多島美や静けさ漂う山間部の風光を味わえる環境にありながら、都会からも気軽にアクセスできる立地は、ただの田舎ではありませんよね。
ふるさとから離れて都市部で暮らしていたからこそ、住んでいた時には当たり前すぎて気付かなかった人や土地の魅力を感じるようになりました。
編集部:
逆に、「足りない部分」とはどのようなことでしょうか?
亀田氏:
近隣の市から、尾道市に転入する人口よりも、尾道市から転出する人口の方が多い状態がずっと続いていることだと思います。町の魅力がありながら、これだけ人口が減っている(昨年12月に12万人台に)というのは、現市政下では暮らしにくいと感じている市民が多いという証左ではないでしょうか。
尾道が好きで住んでいても、子育てがしにくかったり、就労しにくい環境だったりすれば、就職や結婚・出産を機に市外へ出てしまうのは当然です。
また、大きい立派な施設がたくさんあるのに利用時間や定休日が一辺倒で利用しにくく、尾道市の公共建築物として稼げる仕組みを活用できていません。
たとえば施設を利用する際に、インターネット予約やクレジットカード決済も可能にすることで、人件費を抑えながら、今より便利でより良いサービスを提供できるようになります。
デジタル化を推進することで無理・無駄・ムラのない仕組みづくりができ、市民の暮らしを豊かにする尾道市のポテンシャルを引き出すことができるでしょう。
尾道の外で暮らしていて、尾道市の子育て支援や教育、生活インフラの整備などが他の自治体より遅れていることにも気付きました。
今後は市民の皆様と対話しながら、こうした視点を広く持ち、市⺠のための施策を打ち出していきたいと考えています。
編集部:
移住したからこそ気付いたふるさとの良さと課題ですね。そうした中で、特に力を注ぐべきと考える市政の分野を教えてください。
亀田氏:
女性に子育ての負担が集中しやすくなっている実態がありますので、子育て中のお母さんが自由になる時間を作っていきたいです。
たとえば、「働こうにも求職活動に集中することが難しい」というお話を伺いました。特に、0〜2歳児は一時保育にも預けにくく、親個人の時間がなかなかもてません。
具体的にどんなことで困っているのか、アンケートするなどして、お母さんの声に耳を傾けたいと思います。子育て世帯が抱えている課題に対して、経済的なサポートもさることながら、「かゆいところに手が届く」施策を打ち出さなくてはならないと考えています。
編集部:
他の分野はいかがでしょうか?
亀田氏:
「稼ぐ町」への転換を目指します。企業誘致による雇用創出に取り組みます。ふるさと納税・企業版ふるさと納税等を通じてとにかく稼いで、市民生活に使える財源を確保していきます。
また、人口の流出を食い止めて人口増を促すためには、働く場所と住む場所が必要です。具体的には、企業誘致のため団地とその社員が住むための場所を確保します。どこでも仕事ができる現代では、インターネット関連の事業者もウェルカムです。サテライトオフィスの整備などを提案していきたいと思います。
編集部:
生活と就労の場を整備すれば、定住化、そして人口増加にも結びつくという考えですね。
亀田氏:
そうです。ただ、市民の足元の課題も山積しています。
実は市内にはまだ汚水処理整備(合併浄化槽・下水道)が未整備の地域が残っており、人口の約4割がくみ取り式トイレをいまだに使用しています。
また、イノシシなどによる獣害も深刻です。狩猟人材や処分場の確保を急がなければ、将来的には人の住む場所も侵されてしまう恐れがあります。
これまでの市政は、箱物や観光振興など外向けの分野に集中していたので、市民生活の質の向上のための施策に財源を振り向ける必要があると考えています。
編集部:
人口流出対策を考える際には、ご自身が一度は都市部に転出した経験も活かしていますか。
亀田氏:
確かに、私も若い頃には都会に憧れて都市部で暮らしていましたが、この約30年間での世の中の変化は著しいです。
終身雇用制が崩れて転職が当たり前になり、リモートワークが普及するなど就労に対する考え方や環境が変わりつつありますよね。インターネットを活用すれば地場産業である農業・漁業や食品加工業、造船などの製造業の新たな担い手や後継ぎのマッチングを図れる可能性も出てきました。
地方にとってはチャンスが増えていると認識しています。
編集部:
尾道市への愛着の強さが伝わってきますが、これまでの活動で印象に残っている出来事はありますか。
亀田氏:
舞台演出を担当した昨年の尾道映画祭には、知人で俳優の佐藤二朗さんに参加してもらいました。読売テレビに勤務していたので、有名人の知り合いも多いです。ビジネススクールを通じた、企業家や中央への人脈はあるほうだと思っており、尾道市政のために、こうしたリソースは活かせると考えています。
編集部:
人脈作りのコツは何でしょうか。
亀田氏:
相手(顧客という意識です)の話を聞き、相手の立場に立って考え、ビジョンと目的をぶらさずに決断することです。
前職の放送局では最初に営業職に配属され、そこで社会人としてのイロハを学びました。顧客側からの要望と、会社の方針が一致しないケースも少なくありませんでした。常にお互いが満足がいく結果が出るわけではありませんでしたが、お互いが納得がいく形での落としどころを提示するのは得意だったと思います。
そうした調整をする上で、普段から人間関係を築いておくことも重要になりますね。民間での経験は市政の運営にも共通するところが多いと考えています。
編集部:
最後に、メッセージをお願いします。
亀田氏:
私は、放送局で28年働き、早稲田大学ビジネススクールでMBA(経営管理修士)を取得しました。民間企業での経験を活かし、尾道市をマーケティングの視点で経営していきたいと考えています。
市役所は市内で最も多くの人材と予算を抱えている巨大組織です。デジタル化を促進し、業務効率を改善していきます。また、一時期、市職員の不正などが横行した時期もありますが、職員の能力を最大限発揮できるよう適材適所を進めていこうと思います。役所が変わることのインパクトは、市全体の活性化に向け非常に大きいと考えています。
市民に寄り添い、市民の声に耳を傾け、市政に反映し、尾道市に新しい風を吹かせたいと思います。
【亀田年保氏のプロフィールページはこちら】
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