選挙ドットコムでは、乙武洋匡氏をMCに迎え選挙や政治の情報をわかりやすくお伝えするYouTube番組「選挙ドットコムちゃんねる」を毎週更新中です。
今回は2020年7月17日に公開された対談の様子をご紹介。ゲストは自民党・稲田朋美議員です。選択的夫婦別姓やLGBTについて伺いました。
最初の話題は、稲田議員もここ数年積極的に発信されている新しい家族観について。
乙武氏が、「選択的夫婦別姓に関してどうお考えですか?」と質問すると稲田議員は、「結局、“保守とは何か“に辿り着くと思う。保守とは、自分は間違えるかもしれないから人の生き方も認めるという謙虚さ。伝統的家族を大切にしているのが保守だし自民党でもある。伝統的家族も大切だが、そこからはみ出た人や作りたくても作れなかった人、作ったけど壊れてしまった人も同じ家族として認めていくべきだと思う」と話しました。現状として、婚姻の際9割以上は女性が姓を変えているのだそうです。
稲田議員は、「選択的夫婦別姓というと家族を壊すとかそういうイメージで捉えられる。だが、姓を変えたことで困難を抱えている女性や、ずっと独身でキャリアを積み重ね、姓を変えたくないと感じる女性の障害を取り除く考えがないと、保守じゃない」と話しました。
また、稲田議員は「(姓を変えたことで)困難を抱える人たちのために議論することが政治だ」と述べ、例として、民法上は夫の姓でも社会生活上は元の姓を使い続けられるような制度を作ることや、ミドルネームを使うことなどを挙げました。
政調会長時代に「性的指向・性自認に関する特命委員会」を立ち上げた稲田議員。
同性婚については、「普通の人からみたら少し違うと思うかもしれないが、生きていく上でコアな部分になっている人もいる。それを隠さなきゃいけない状況は良くないと思う。同性婚は大きなテーマだから、まずはLGBTの方々に対する理解を増進させようということで、そのための法律を作ろうと思っている」と話しました。
乙武氏は、「どうして今の考え方になったのですか?」と尋ねます。
稲田議員は、「身近にLGBTの方がいらっしゃったこと、アメリカでLGBTに関する判決が出たことなどを通して、理解を増進していく必要があると思った。LGBTの課題に取り組んだことは自分にとって人生最大の試練となり、政治家として立ち直れるかわからない程の状況だった。そのとき、LGBTの方々が抱えている気持ちが他人ごとと思えなくなり、そういう気持ちになったことが物凄く大きかった」と話しました。
続けて乙武氏は、さらに突っ込んだ質問をします。「当時は辛かっただろうし大変な思いをしてきたと思うが、あのまま順風満帆に政治家として歩んでいた稲田朋美と、挫折を経験して再び立ち上がった稲田朋美では、どちらが良かったと思っていますか?」
稲田議員は、「あのまま順調に歩んでいたら、困っている人のことが自分ごとにはならなかったと思う。政治をやっていく上で自分ごとになれて良かったと、ようやく思えます」と話しました。
稲田議員に対して、「リベラルになった。支持者を増やすための言動だ」などの意見は、今も届くのだそうです。それでも稲田議員は、「等身大の考えを少しずつ説明していくのはとても重要なことだから、そういう努力をしたいと思う」と話しました。
乙武氏は、「伝統的家族観を大切にされている方との着地点はどうなりますか?」と尋ねます。
稲田議員は、「伝統的家族観が大切なのはその通り。伝統的家族があって、地域社会があって、そのあとに国がある。その基本的な考え方は私も全く変わっていない。伝統的家族を大切にすることは、伝統的家族からはみ出た人を除外することではない。形は違っても、家族や地域社会を大切にするのは同じこと。その理解を進めていくのが重要だ。多様性を認められる社会が、自由で民主的な生き生きとした社会なのではないかと私は思います」と話しました。
乙武氏が、「自民党内で共感してくれる議員はどの程度いると感じていますか?」と尋ねると稲田議員は、「未婚のひとり親における税制の問題では、最終的に144名の賛同者が集まった。それからすると、自民党支持者の半分以上はそういう考え方なのではないかと思う。地元に帰って話をしても、特に女性陣は『そうだそうだ』と共感される。国民の半分は女性だから、理解は広まっているように思う」と話しました。
これに対し乙武氏は、「選択的夫婦別姓にしろ同性婚にしろ、自民党政権が続く限り実現は無理だろうと感じている方も多いと思うが、決してそんなことはないのですね」と投げかけます。
稲田議員は、「議論しないことが一番良くない。私が見落としていることだってあるかもしれないし、私の意見をなまぬるいと思う方がいるかもしれない。家族が壊れるという意見の方もいる。そういうことを皆んなで議論して解決していくことが自民党だと思うから、決して諦めてはいません」と力強く話しました。
1959年福井県生まれ。早稲田大学卒業後、弁護士業を経て政界へ。2005年の郵政選挙で初当選した「小泉チルドレン」の1人。以後再選を重ね現在は5期目を務める。自民党女性局次長、内閣府特命担当大臣(規制改革)・行政改革担当、自民党日本経済再生本部長、自民党政務調査会長、防衛大臣、自民党筆頭副幹事長・総裁特別補佐、自民党整備新幹線等鉄道調査会会長、自民党幹事長代行などを歴任。自民党政務調査会長だった2016年に「性的指向・性自認に関する特命委員会」を設立し、現在は委員長を務めている。
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