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野党四党や連合の裏事情はこういうことらしい。国民民主党と社民党の分裂をみて(歴史家・評論家 八幡和郎)

2020/11/17

八幡 和郎

八幡 和郎

国民民主党と社民党が分裂して、選挙目当てに立憲民主党に多くの国会議員が移ったが、絶対おかしいと「正論」を吐く議員や党員もいて、支持率を見る限り、残留派に支持者の多くがなびいているようでもある。

また、主要国先進国ではただひとつと言うに近い絶滅危惧種の共産党と不倶戴天の敵だったはずの人たちが恥も外聞もなく共闘もおかしいし、共産党もどういう展望があって小沢一郎などと組むのが支持者だって納得していない。

とはいうものの、いろいろ聞いていると、彼らの行動にもそれぞれ一定の合理性はあるのである。私は、いまも、中道左派と中道右派の二大政党が基調であるべきだと思っているし、失業を恐れる議員たちの思惑に引っ張られ過ぎるのも気に入らないのだが、議論を整理することが、良い方向に行くための出発点になると思うから、その本音はどこにありそうか解説を試みて見たいと思う。

総選挙が終われば立憲民主党は変わるという深慮遠謀?

街頭演説を行う枝野幸男代表(立憲民主党公式サイトより)

いうまでもなく、立憲民主党に一本化するためにリーダーシップを発揮したのは連合である。いったいどうして、前回の総選挙のころは、自民党でも最右派だったはずの小池百合子都知事を中心に希望の党に結集し、憲法改正へまっしぐら?だった連合が、極左的な臭いのする立憲民主党に肩入れするのは普通には理解しがたいことだ。

しかし、これは、連合にとっては、主義主張はどうでもいいのであって、野党一本化してくれさえすれば、なんとかなるということだということなら理解できるのである。

このままいったらどうなるかといえば、次の総選挙では、立憲民主党が政権を取れるはずもないし、現在の議席数が守れるかも微妙だが、惨敗は避けられる可能性は強い。

しかし、その所属議員の質は大分変わるのではないか。というのは、前回の選挙では、立憲民主党は十分な候補者数が得られなかったので、小選挙区で惨敗したり、比例単独だったりした候補者が大量に当選している。

しかし、彼らは次回は厳しい。国民民主党からそれなりに強固な地盤をもち、自民党候補に勝てはしないが、惜敗率でそこそこいける現職、元職の候補者がたくさんいる。重複立候補で当選できるのは、ほとんど彼らではないかとみられている。

となると、総選挙の終わった後の立憲民主党は、現在の構成とはすいぶん違った党になりそうだ。そうなれば連合は立憲民主党が路線を変更することを後押しするだろう。

そういう意味では、国民民主党から立憲民主党へ移った議員たちが臥薪嘗胆ぶりも理解できないわけでない。そういう意味では、次の総選挙で、枝野代表の続投が難しくなる程度に負ければいちばんいい方向に行くのかもしれないが、妙にそこそこ健闘すると期待できるような変化は難しいかもしれない。

国民民主党に残った人たちは、健全なリベラル政党ができるなら中核になるべき人たちであることは確かだ。いずれ、上記のようなかたちで立憲民主党の体質改善が進んだらまた合流もあるのかもしれない。

維新と合流はありうるのかもしれないが、新自由主義的なニュアンスの強い維新と本来的には大きな政府志向のリベラルとは相性がいいとは思えない。ただ、自民党から新人が出馬することが難しいなかでの候補者の受け皿としては、橋下・松井ラインと肌合いが合わない人も国民民主党が民主党の流れを汲むことを嫌う人も入りやすいのではないか。自民党が分裂すれば、これと合流することは容易だろうが、そのチャンスがあるのかどうか分からない。また、次の総選挙後の議席数によっては、自公政権に参加も選択肢としてありえないわけでもない。それに絶対、反対するひとたちは出ていった。

社民党の分裂と立憲民主党合流の愚劣

定例記者会見を行う玉木雄一郎代表(国民民主党公式サイトより)

社民党のかなりが立憲民主党へ移ったのも、連合の有力単産である自治労や日教組が両党に分かれているのをよししなかったのが主たる原因であろう。労組系候補の選挙のためにはそのほうが都合がいいのだろうが、これまで社民党が主張してきたことに立憲民主党が歩み寄ったとも思えず、まじめな活動家で賛成する人は少数者だと理解している。

社民党については、鳩山首相が辺野古移転を容認したので福島党首が閣外にでるしかなくなった。選挙のときの約束と違うのだから当然なのだが、ただ、参議院選挙のあと連立に戻るべきだったと私は思う。

連立政権で意に沿わぬ政策に従わなくてはならないなど珍しいことでない。公明党だってそうだろうが、それでも、自民党に自党の政策を多く呑ませているから、支持者も納得している。

社民党も同じことができないはずはなかった。政策が100%実現するのは、単独過半数を取ったときだけだ。この連立離脱で、社民党はお付き合いしにくい党になってしまった。たとえば、なんらかのかたちで反自民政権が成立したとき、連立にお誘いしにくいのである。

また、戦略的には、社民党が共産党の票を取りに行かないことは誠に不可解である。自民党支持者が社民党支持者になることはありえない。まんなかに、立憲民主党も国民民主党もあるからだ。

それに対して、共産党の独善性を批判して支持者を奪うことは容易だ。そもそも世界中の主要先進国で共産党が真っ当に残っているのは日本だけになった。イタリアはかつてのキリスト教民主党などとも合流して民主党になって与党になっているし、フランスの共産党だってほぼ消えつつある。ドイツはもともと非合法であるし、イギリスではないに等しい。  

共産党などという名を名乗り、過去についての根本的な反省をしない党など存在するのがおかしいのである(負の歴史しかないといっているのではない。ほかの政党と同じように共産党にも功績はある)。

ミッテランは巧妙に共産党を操り、牙を抜き、破滅に追い込んで、1981年から現在まで分派したマクロンも含めた社会党出身の3人の大統領が半分以上の期間その座を占めているし、社民党がいまもメンバーである社会主義インターナショナルはドイツ、イタリア、スペイン、アルゼンチン、チェコなどで与党である。

中道左派の現実的野党第一党と、西欧民主主義の枠内での急進的批判勢力としての左派政党が健全に存在することは望ましいと私は思うし、中途半端に立憲民主党に社民党の一部が合流して左派的路線に立憲民主党を傾けることが日本の政治にいいとは思えないのである。 

社民党の吉田忠智幹事長は14日の臨時党大会で、立民が党規約で定める党員資格をめぐり「日本国籍を持つ人と限定されることについては、私は変えるべきだと思っている。立民のこうした課題、変えるべきところを、合流を志す人たちはしっかり変える努力をする必要がある」と主張した。

もともと、旧民主党では、外国人がサポーターなどになって党首選びに参加することは、首相選びに外国人が関与することでありおかしいという議論があり、こういうようになっていると記憶しているのだが、そんな馬鹿げた議論はするべきでない。

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八幡 和郎

八幡 和郎

評論家、歴史家、徳島文理大学教授 滋賀県大津市出身。東京大学法学部を経て1975年通商産業省入省。入省後官費留学生としてフランス国立行政学院(ENA)留学。通産省大臣官房法令審査委員、通商政策局北西アジア課長、官房情報管理課長などを歴任し、1997年退官。2004年より徳島文理大学大学院教授。著書に『歴代総理の通信簿』(PHP文庫)『地方維新vs.土着権力 〈47都道府県〉政治地図』(文春新書)『吉田松陰名言集 思えば得るあり学べば為すあり』(宝島SUGOI文庫)など多数。

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