衆議院の任期満了日まであと1年弱となり、解散総選挙に関するニュースを目にする機会が増えています。
選挙時期を巡る様々な予想が出ては消えていく中、「いざ選挙」となった時に、「政治のことはよくわからないし、勉強する時間もない。こんな自分が投票してもよいか自信を持てないから棄権しよう」と貴重な機会を手放してしまうことがないように、今から政治のことを考えはじめてみるのはどうでしょうか。
選挙に少しでも興味をもてるよう5つの数字を紹介します
2016年の参議院議員選挙以降、3回の国政選挙で10代有権者が投票してきました。
この間10代有権者の投票率は右肩下がりとなっています。例えば18歳有権者の投票率は、51.17%(2016年参院選)→50.74%(2017年衆院選)→35.62%(2019年参院選)、19歳有権者の投票率は39.66%→32.34%→28.83%と推移しています。
年齢別人口をもとに算出した推定投票者数を比べると、2016年参院選での18歳投票者数は61.9万人でしたが、2019年参院選では41.4万人とおよそ2/3となっています。
年齢別人口には大きな変化がありませんので、18歳の政治に対する意見は20万人分も消えてしまったことになります。
また、「消えた18歳」は、「消えたかつての18歳」にもなっています。
2016年参院選の18歳有権者は、2019年参院選では21歳有権者となっています。2016年18歳有権者投票率51.17%→2019年21歳有権者投票率27.66%となり、推定投票者数は28.7万人減少しています。18歳の時の推定投票者数を母数にすると46.3%、はじめての18歳有権者として投票した人のおよそ半分が2度目の参院選では投票しなかったことがわかります。
とはいえ、若者が投票に行かないことはなにか不利益につながるのでしょうか。
東北大学の吉田教授の研究では、国債の負担と社会保障(年金や医療、子育て支援等)による受益の要素の合計において、若い世代(49歳以下)の投票率が1%下がると高齢世代(50歳以上)と比較して、1人当たりおよそ7万8000円損をすることになるとされています。リンク1
図表2では、厚生労働省「所得再分配調査」から若者世代の再分配係数※の推移を表しています。
2011年に若干改善したことがあったものの、若者世代では総じて受け取る金額よりも差し出す金額の方が大きくなっていることがわかります。少子化対策白書(令和2年版)によると、出生時の母親の平均年齢は第1子30.7歳、第2子32.7歳、第3子33.7歳となっていますが、この年代への再分配係数は高齢世代に比べて決して高くありません。
一方、高齢者の状況を見ると、総じて横ばい、70歳以上では上昇傾向にあることも見て取れます。
昨年10月からの消費税率の引き上げにあたっては、「国の新たな借金抑制」に充てる金額を削り、「年金、医療、介護、子ども・子育て」への使い道を拡大することも争点となりましたが、今後、社会保障を通じた子育て世代等への支援が拡充されることになるのか注目されます。
※所得再分配係数=(当初所得―再分配所得)/当初所得。再分配所得は当初所得から税金と社会保険料を差し引き、社会保障給費を加えたもの
行政サービスの「財源の担い手」としての観点ではどうでしょうか。
安倍前首相の退陣会見では、雇用環境の改善について「400万人を超える雇用をつくり出すことができ」たことが政権運営の成果の1つとして言及されました。
総務省「労働力調査」では、2012年12月に発足した安倍政権の就任翌年の2013年6,311万人から2019年6,724万人へと、就業者数が増加したことが確認できます。ただし、同期間の正社員と非正規労働者の推移に着目し、正社員が201万人の増加であるのに対して、非正規労働者が259万人の増加と、雇用の不安定化が促進されたとの指摘もあります。
また、就業者数増加の背景には、少子高齢化の進展に伴う「働き手不足」があり、政策の成果とは言えないのではないか、という指摘もあります。確かに、日本人の生産年齢人口(15歳~64歳)は7,768万人(2013年)→7,300万人(2019年)と400万人近く減少していますし、働き手不足が深刻な状況となっていることを理由として2019年4月には改正入国管理法が施行され、外国人労働者がそれまで禁止されていた単純労働へと就業することも可能となっています。
このように雇用環境を取り巻く評価は様々なものがみられる状況ですが、今後、新型コロナウィルスの影響が就職市場にも大きな影響を及ぼすことが見込まれています。
他の世代に比べてより長い期間、働き、活躍することになる若い皆さんは、どのような雇用、労働環境を望まれますか。
そうはいっても、自分たちが選挙に行っても若い世代の有権者数は少ないし、結果なんて変わらないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
接戦の選挙として取り上げられる事例に大阪都構想を巡る前回の住民投票(2015年)があります。この時は賛成69.5万票、反対70.6万票と約1万票余りの差となりました。同住民投票での有権者数は210万人ほどですので、有権者の0.51%ほどの差で決着したことになります。
「これだけ接戦になる選挙だったら、もし自分が有権者だったら投票してみてもよいかもしれない」と思われた方はいませんか。
図表3では、衆院選(2017年)の小選挙区で接戦となった選挙区を取り上げています。
大阪都構想を巡る住民投票(2015年)よりも接戦となっている選挙区が14か所、全体の4.8%程となっていることがわかります。なお、対象を有権者の1%ほどの票差で決着している選挙区まで拡大するとその数は23選挙区となります。
行政レビューシートによると、前回衆院選(2017年)の費用は約600億円でした。同選挙での投票率は53.68%でしたので、語弊があることも承知で言い換えると、「国民の政治に対する意見を聞くために実施される衆議院議員選挙に要する費用(600億円)の約5割弱(=278億円)が無駄になってしまっている」とも言える状況です。
また、600億円には啓発費用も含まれています。国から直接啓発事業を請け負った企業で最も受注金額が大きかった企業の受注金額は2.7億円、自治体を経由したものでは、東京都が900万円を、横浜市が300万円をそれぞれ選挙啓発の費用に充てていることがわかります。全国には約1,800の自治体がありますので、全体では少なくとも数十億円の費用が啓発費用に充てられているであろうことが推測されます。
ここしばらく、「10億円の税金を投入されている団体」の活動が報じられていますが、それよりも大きな金額が投じられている(かつ、期待されるほどの投票率向上という効果の上がっていない)こちらの活動に注目してみるのはいかがでしょうか。
前回衆院選では、衆議院の解散から選挙の公示日までが12日間しかなく、実質的な選挙期間(衆議院の解散日から投開票日前日までの期間)は戦後4番目に短い24日間でした。
明るい選挙推進協会の実施した前回参院選(2019年)の意識調査では、投票しなかった18歳有権者から最も支持された投票しなかった理由は「どの政党や候補者に投票すべきかわからなかったから」でした。
2000年代初頭にマニフェストが提唱されてから、重大な政治局面において「選挙で有権者の支持を得た」ことを理由として、時の政権が政策を決定、実行する場面が増えてきています。
withコロナの時代における国の未来を方向付ける大切な機会となる次期衆院選において、皆さんの一票を消極的な理由で手放してしまわないよう、今のうちからの取り組みを始めてみませんか。
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