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【衆議院議員選挙2017】知ってた?「なんとなく投票に行かない」で240億円が無駄になること

2017/10/5

原口和徳

原口和徳

衆議院解散を受けて、連日、政党や立候補表明者などによる活動が活発になっています。
私たち有権者にとって、「選挙」は政治への意見表明をする大きな機会となりますが、急な解散であったことや政党の離合集散もあり、戸惑っている方もいらっしゃるのではないかと思います

なかには、「日本には様々な問題がある」と思うし、「政治家は問題を解決すべき」と思うものの、「投票日は予定があるし、選びにくい状況の中で事前に調べてわざわざ投票に行くかどうかは別だなぁ」という思いが強まっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで質問です。

投票に行かないことで、240億円を超える損失が発生している」と聞いたら、投票への意識は変わりますか。

衆議院選挙に興味を持つきっかけを増やすべく、選挙、つまり私たち有権者が政治に対する意見を表明するためにどれだけのお金がかけられているのかを確認してみましょう。

衆議院選挙にかかる費用は約600億円

過去3回の衆議院選挙の費用は、第45回(2009年)598億円、第46回(2012年)588億円、第47回(2014年)561億円となっています。

今回の衆議院選挙から新しい区割りが適用されます。そのための対応費用も必要となることを考慮すると、選挙の費用が大幅に減ることはなく、今まで通り600億円程度の費用がかかるものと予想されます。

選挙にかかる費用の内訳も確認しておきましょう。
下図にあるように、最も多く費用を要しているのは、選挙の管理執行のための経費です。具体的には、自治体が開設・運営する投票所や開票所に関する経費(人件費)や、選挙ポスターの作成などに使われています。

なお、前回、前々回の衆議院選挙に用いた費用は、「年度途中の予期せぬ事態へ対応するための費用」として予め予算に計上されている「予備費」から支出されています。選挙のためだけに、新たに国民から税金を徴収したり、国債を発行したりしていないことも確認できます。

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国の取組みとして、600億円あると何ができるの?

選挙にかかる費用で実現できることを確認してみることで、「『選挙の値段』の持つ意味」をもう一歩掘り下げて考えてみましょう。
今年度の一般会計予算でポイントとされた取り組みの内、特に若者に関係のありそうな事業を抜粋してみます。

  • 保育士の処遇改善(544億円)→すべての職員の2%処遇改善、「副主任保育士」職の新設と同職への月額4万円の処遇改善等

  • 介護人材・障害福祉人材の処遇改善(408億円)→月額平均10,000円相当の加算等

  • 給付型奨学金の開設(70億円)→私立・自宅外の生徒への先行導入(2,800人)、基金創設

  • 非正規雇用労働者の待遇改善(670億円)→正社員転換や処遇改善などに取り組む企業への支援

 

無駄になる240億円とは?

また、投票した人の数に着目することで気づくこともあります。

下図にもあるように、過去3回の衆議院選挙の投票率は69.28%→59.32%→52.66%となっています。おおよそ4割の人が投票をしない=自分の意見を表明するチャンスを使っていないことがわかります。

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語弊が生じる恐れもありますが、あえて言い換えると、「国民の意見を聞くために実施される衆議院選挙に要する費用(600億円)の約4割(=240億円)が無駄になっている」とも言える状況です。

ちなみに、240億円あると、どんな取り組みを充実させられると思いますか?

先ほどご紹介した給付型奨学金について考えてみましょう。
給付型奨学金は、平成30年度に新たに20,000人に給付することを予定しており、そのために105億円が必要とされています。
もし、240億円あると、給付型奨学金の規模や、金額(一人当たり月額2~4万円を予定)を大きく変えていくことができます。

私たちが投票すると何が変わるの?

さて、ここからは相対的に投票率の低い若い有権者の方の立場で考えてみたいともいます。

投票することで、政治家が実現しようとする政策課題の優先順位を変えることができます。
というのも、投票率が低くなればなるほど、固定票(選挙の際に、継続してある候補者に投票する特定の有権者層の票のこと。地縁・血縁や、業界団体や宗教団体などの組織によるものなどがあります)の影響が強まるからです。

低い投票率になればなるほど、当選するための票数に占める固定票の割合が大きくなります。その結果、固定票を得ることの重要性が高まり、政治がますます限られた人たちの利益を重視する方向を目指すことになってしまいます。

これまでにあまり投票に参加していなかった人たちが参加することで、政治家の側にも新たな気づきを与えることができるようになります。

そうはいっても、選びにくいときはどうしたらいいの?

特に今回の衆議院選挙のように、解散から投票日前日までの実質的な選挙期間が短い場合や、政党や政策がなかなか明らかにならない状況では、選びたくても選べないこともあるかもしれません。

そんな時は、白票を投じることで自分たちの存在を知らしめることが、棄権してしまうことよりも政治家に対する積極的なメッセージとなります。特に、衆議院選挙のように投票所ごとの年齢別の投票率を集計している選挙では、白票層の意思をよりはっきりと示すことができます。

投票率が上がり、固定票だけでは当選が難しい状況になった時、政治家の側では白票層の支持を得るためにはどんな政策や日頃の取組みが必要になるのかを、より懸命に考えるようになるからです。

600億円の有効な使い道ってなんだろう?

繰り返しになりますが、衆議院選挙には600億円がかけられています。

「この一票を投じる機会を作るための費用が他のことに使われていたら、なにができたのか?」

時にはそんなことにも思いを巡らしながら、ご自身にとっての一票の価値や、投票する・しないといったことについて考えてみるのはいかがでしょうか。

「衆議院選挙の値段」について考えてみることが、選挙への関わり方を考えるきっかけの1つになりましたら幸いです。

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原口和徳

原口和徳

けんみん会議/埼玉ローカル・マニフェスト推進ネットワーク 1982年埼玉県熊谷市出身。中央大学大学院公共政策研究科修了。早稲田大学マニフェスト研究所 議会改革調査部会スタッフとして、全国の議会改革の動向調査などを経験したのち、現所属にて市民の立場からのマニフェストの活用、主権者教育などの活動を行っている。

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