東京都知事選が18日に告示され1週間。
候補者がそれぞれYouTubeなどの動画配信サイトに演説動画を載せたり、一般の人が自分のアカウントで街頭演説の様子を配信したりするなど、ネット上で「選挙動画」を見る機会も増えました。
選挙ドットコムでも、YouTubeちゃんねる「選挙ドットコムちゃんねる」で、各候補者の動きを追っています。
ところで、一般の人が候補者の演説を個人で撮影して、YouTubeにアップした場合、なんらかの法律に触れてしまうのでしょうか?
その演説動画を、個人のSNSでシェアしたらどうなるのでしょう?
政治家の演説動画は、公開して行われたものでその内容が政治上の演説である場合には、著作権法40条1項により無制限に使用することができます。もっともその出所を明示する義務はあります(著作権法48条1項2号)。
つまり、都知事選の候補者が公開の場で政治上の演説している様子を個人で撮影し、その動画を動画サイトにアップしても、著作権法違反にはなりません。
一方で、候補者の演説であっても公開の場で行われたものではない場合や政治上の演説ではない場合はその動画を撮影して動画サイトにアップすると著作権法違反となる場合があります。もっとも、このような演説であっても、公表された著作物は一定の条件のもとで批評等の目的のために正当な範囲内で引用することはできます(著作権法32条1項)。
また、候補者が演説以外の日常生活で買い物をしている様子や、一般の人と話している場面などを勝手に撮影・公開してしまうと、肖像権やプライバシー権の侵害となる場合がありますの注意しましょう。
この場合は、ケース1の候補者の演説の利用の問題だけでなく、動画の著作権の問題も生じます。そのため、動画の著作者の許諾なく動画を複製したりすると、著作権法違反となる場合があります。
また、引用した動画が第三者の著作権を侵害するなど違法なものの場合、それを引用しただけでも名誉毀損や著作権法違反など罪に問われる場合があります。引用しようとしている動画が適切な方法で撮影されたものかを確認しましょう。
また、動画自体が適切なものでも、ブログで誹謗中傷などをする文章を添えると、その行為も名誉毀損などとなる場合があります。
【関連記事】【東京都知事選2020】選挙公示後に『あの候補は経歴詐称』など、ネット上に書き込んだらどうなる?https://go2senkyo.com/articles/2020/06/20/52837.html
候補者を批判する記事を選挙期間中にTwitterでリツイートしても直ちに公職選挙法違反とはなりません。
しかし、相手を誹謗中傷する内容をTwitterでリツイートしただけの場合でも、名誉毀損の損害賠償で訴えらえた例もあります。(「橋下氏批判の『リツイート』は名誉毀損 二審も判決支持」朝日新聞デジタルより)
「ただのリツイート」だけと思っても、誰かの名誉や人の気持ちを傷つけるものではないか、よく確認しましょう。
ケース1で解説した著作権法40条で利用が可能となるのは、自身で撮影した元となる演説部分についてのみなので、メディアが撮影したものについては撮影した映像自体にメディア(NHKが撮影した政見放送の場合はNHK)の著作権があります。メディアが有する映像の著作権については著作権40条の対象外となります。
そのため、メディアの許可を得ていない場合には、引用(著作権法32条)を根拠に使用する必要があり、引用の目的(演説の分析・解説のため)のために正当な範囲内で行うよう、動画の利用は、演説の分析・解説の対象とする範囲にとどめる必要があると考えられます。(気を付けます!)
いかがでしたか?
みなさんもSNSや動画サイトを適切に使って、選挙戦を盛り上げていきましょう!
【著作権法 参考条文】
(政治上の演説等の利用)
第四十条 公開して行われた政治上の演説又は陳述及び裁判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続を含む。第四十二条第一項において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人において行われた公開の演説又は陳述は、前項の規定によるものを除き、報道の目的上正当と認められる場合には、新聞紙若しくは雑誌に掲載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。
3 前項の規定により放送され、若しくは有線放送され、又は自動公衆送信される演説又は陳述は、受信装置を用いて公に伝達することができる。
(出所の明示)
第四十八条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
一 第三十二条、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十三条の三第一項、第三十七条第一項、第四十二条又は第四十七条第一項の規定により著作物を複製する場合
二 第三十四条第一項、第三十七条第三項、第三十七条の二、第三十九条第一項、第四十条第一項若しくは第二項、第四十七条第二項若しくは第三項又は第四十七条の二の規定により著作物を利用する場合
三 第三十二条の規定により著作物を複製以外の方法により利用する場合又は第三十五条第一項、第三十六条第一項、第三十八条第一項、第四十一条、第四十六条若しくは第四十七条の五第一項の規定により著作物を利用する場合において、その出所を明示する慣行があるとき。
(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
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