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【新型コロナ 一斉休校】市民生活を守るために、自治体ができることを考える。五十嵐立青・つくば市長インタビュー

2020/3/19

選挙ドットコム編集部

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新型コロナウイルスへの対応をめぐって安倍晋三首相が全国の小中学校の一斉休校を要請したのは2月27日(木)の夜。

週明けから休校を始めた学校が多くを占める中、茨城県つくば市では、「両親が共働きなど家庭で面倒を見ることができない子どもについては学校に来て良い(授業は行わない)」といった、現場の実情に即した独自の判断をくだし、注目を集めました。

「独自判断」を行った市長は、要請にどう向き合い、どのように対応を決めたのか。五十嵐立青(いがらし・たつお)つくば市長に聞きました。

 

選挙ドットコム編集部(以下、選):政府からの休校要請の情報は、はじめどのような形で入ってきたのですか?

五十嵐立青・つくば市長(以下、五):報道を見た職員からの情報で知りました。危機管理案件を中心に保健福祉や教育など、グループごとに情報を共有する内部のツールです。

:さすが研究学園都市を抱えるつくば。デジタル化が進んでいますね。

:LINE WorksというLINEの業務用のイントラサービスです。私が(市長に)就任した時には、緊急時の連絡手段がなかったので、就任後に導入したものなのですが、今は日常的に連絡手段として使っています。

:正式な休校の「要請」はいつでしたか?

:翌28日(金)の午前11時頃で、議会中でした。茨城県から、文科省による休校要請の通知とともに、それをふまえた県の方針がFAXで送られてきた、という形です。

:それまで、そのような要請が来ることは予想されていましたか?

:全国一斉は予想していませんでした。部分的な休校措置や、発生が大きくなっていけば全市での措置も必要と考えていましたが。

:要請を受けて、まずはなにを考えましたか?

:週明け(3月2日)からの休校要請でしたので、それはまず難しいだろうと。以前に学童の保護者会役員をやっていたことがあり、スタッフのシフト調整を考えれば、いきなり朝からの人員確保は現実的でないということは想像できました。仕事を持つ保護者は急に休めないし、準備期間は必要と判断しました。

:同日(28日)午後には市長のFacebookで対応を発表されていますね。あれで安心された方は多いと思います。

 

【新型コロナウイルスへの学校の対応について(要約)】
・仕事を休めない保護者の対応を考慮し、感染防止策を講じたうえで準備期間として3月5日までは通常登校
・3月6日から3月24日までは臨時休業としますが、登校は可能
・開校は8:00~15:00で、教員が対応するが、授業は実施せず自主学習
・給食は3月5日まで通常どおり提供。3月6日以降は、希望者に用意する

 

:特につくば市は、医療従事者が多い。北海道は首相の要請の前にすでに全校休校していましたが、医療関係者が職場を休まなくてはならず、病院の受診制限をせざるを得ない状況になったというのを把握していました。そのような事態に陥るのを避け、コロナウイルス以外のほかの重症患者も含めつくばの医療環境を守る必要もあると考えました。一斉休校すると社会全体に与える影響は大きい、と。

:とても実質的な素晴らしい判断だったと思います。政府の要請に逆らって、というような言い方をされることもあるかもしれませんが、誰を批判するでもなく、粛々と、その場でできることをやろう、というのが市長の発信からは伝わってきました。

:どうして政府の要請に反対したのか?と聞かれることもありますが、私はむしろ、要請を受けそれを実践したと思っています。文科省からの文書には休校の形について「設置者の判断を妨げない」という文言、つまり自治体がそれぞれで考えていいとありました。今回、全国休校の話を聞いた時にまず考えたのが、それについて自治体の裁量権がどこまであるのかということでしたし、通知の文言も拘束力を最初に確認しました。国は広域に大きな方向性を出すのが仕事です。地方自治ですから、自治体はできることをやればいい。

それらを踏まえ、学校長会や病院への聞き取りなどを行って現場の状況を把握したうえで、このまま休校に入ったら子どもや親、社会全体に与える影響が極めて大きいと判断しました。市民生活を守るために何ができて、何をするのか。それを徹底的に考え決断するのが市長の仕事です。だから、学校の先生方には負担を掛けてしまいますが、給食の実施も必要と考えました。また、仕事にかぎらず介護や病気等様々な事情のご家庭があるので、「保護者が自宅で面倒が見られないと判断」する場合はすべて登校可能にしました。

:例えばもし、学校で受け入れてそこで感染が出てしまった場合など、市長の責任を問われることもありますね。それで、「政治家は次の選挙のことを考えて、すべてのイベントを自粛するなど、とにかく自粛をして責任がふりかからないようにする」と分析する人もいます。独自の判断をすることでのそうしたリスクは考えましたか?

:気象災害でも同じですが、その意味でのリスクを回避するなら、ちょっと雨が降ったら避難指示を全域に出してしまえばいい。でも、それでは結局は市民を守れないと考えます。避難指示を毎回出して、市民が「今回も関係ないや、動かなくて大丈夫だ」と思ってしまったら逆効果です。本当に必要な時に必要な施策を打てなくなってしまう。

だから、複数の感染症の専門家にも相談した上で、感染防止策を徹底した上での感染リスクと社会経済的リスクを総合的に判断し、方針を決めました。もちろん批判があることも承知していますが、それも含めて引き受けるのがこの仕事です。

:市民がちゃんと実効的な政策がされているかどうか見ていれば、そうした政策ができるリーダーは支持されると思います。市長の言動には、つくばの人が政策をきちんと見てくれているという信頼感を持たれているんだなと感じます。市民との距離が近いというか‥。

:休校要請でのつくば市の対応を発表した時、たくさんの方から直接連絡をもらいました。「27日の夜は『どっちが仕事を休んで子どもを見るんだ?』と口論になり、夫婦間が険悪だったけど、翌日の市からの通知で本当に助かった」「卒業を控えた子どもが、学校が急に終わってしまうと大泣きしていたけど、学校を開いてくれる決断をしてくれてありがたい」「この決断をしてくれた市長に迷惑を掛けないためにも、子どもたちには手洗いうがいを徹底します」なんていうことも言われました。

リスクを取って判断したことに対して、市民から「自分たちもがんばるよ」と声をかけてくれたのは、本当に良かったなと思ったし、うれしいことですね。

:コロナの影響で、地元の旅館やレストランなどにも影響が出ていますね。その対策も発表されています。

:週末の公務がコロナウイルスですべてキャンセルになった日に、一日掛けて市内のホテル・旅館・宴会場を自分でまわって聞き取りをしました。旅館やホテルでは、団体客の予約はほぼすべてがキャンセルになり、アルバイトも全部休ませざるを得ないなど、深刻な影響が出ています。帝国データバンクの調査でもすでに影響が出ている業界のトップに宿泊業がありました。国の緊急対策でも無利子融資等はあっても経済対策はまだでしたので、急いで手を打たなければと考えました。

そこで、つくばに宿泊した人に、最大で宿泊費5000円、市内本店の飲食店要の商品券2000円、計7000円分の補助をすることに決めました。3月19日の議会本会議で審議の予定です。

国の専門家会議では、換気の悪い密閉空間、多くの人が密集、近距離での会話や発声の3つが同時に重なる場所を避けるようにとされましたが、小規模の旅行はそれに当てはまりません。コロナウイルスによる感染と桁が違う数の経済的苦境による犠牲者を出すリスクを懸念しています。

ただ、すぐスタートするわけではなく、感染の状況や社会情勢を見極めていきます。今の時点で大切なことは「市はいつでもスタートできるよう準備していますよ」というメッセージを出して少しでも安心感をもってもらうことです。

常に考えているのはその時々の状況に応じて自治体として市民生活を守るために何ができるかということです。これまでの判断も感染者の状況が変わっていたら違うものになっていたと思います。その都度、現実に即してできる最善と思える策を考え実行していきます。

:大変お忙しい中、ありがとうございました。

 

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