昨年末、国会議員に支給された期末手当の額が300万円を超えている、といった報道を聞いて、やっぱり議員って高収入なんだと感じた方も多かったかもしれません。
一方で、地方議員はどうでしょうか。一般的に、地方議員の報酬はその自治体の人口規模に応じています。例えば、人口1000人以下の村だと月額約15万円ほど。人口約930万人の東京都議会議員で月額100万円ほどです。一概に語ることができないのが地方議員の懐具合。何人かにそのリアルな実態をお聞きしました。今回は荻野稔(おぎの みのる)大田区議会議員にお話を伺います。
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池田麻里(以下、池田):都内の区議会議員の議員報酬は額面だと多く感じるけど、実はココにお金がかかるという点を教えてください。
荻野稔・大田区議(以下、荻野):家と事務所の両方を維持したり、個人事業主のような仕事のサイクルになりますので様々な面でお金がかかります。
会食、交際費なども一見、判りにくいのですが地元の方、有権者の方と接点として様々な場に継続的に通う事から、決して低くはありません。様々な団体や会に所属していれば、お酒を伴う付き合い、会費も多くなりますし、どうしても、食事を有権者の経営する、働く事業所、飲食店でとなれば外食ばかりになります。嫌々ではなく、有難く通わせて頂いていますが、気を付けていないと負担が一気にかさんでしまいます。
池田:よく議員には政務活動費という第二のお財布があると言われるけど、実際のところ、どういうことに使っていますか?
荻野:こちらは実際に公開もされているので、見る事も出来るのですが使い道も限定されており、なんにでも使える便利なお金、というものではありません。会社の経費に近いと思います。また、按分といった形で、処理する者もあり、例えば、半分は政務活動費、半分は自腹、といった形で全額を清算できるわけでもないので、頂いた分だけただ単に全て活動に回せる、というわけでもなく使い方にも悩みます。
池田:だとすると、日々の政治活動に政務活動費が当てられないこともあるんですね。そういう費用ってどのくらいになりますか?
荻野:例えば新年会シーズンの1~2月はその月だけで、新年会費用で30~40万円、多い時はかかります。これも殆どが政務活動費では処理できず、自腹となります。
どこからどこまでは政務活動費や政治活動費で、どこからがプライベートなのかの線引きも難しいのですが、事務所費他、政務活動費で処理させて頂いているものも含めると、平均でも月20~40万円はかかっているのではないでしょうか?
池田:議員報酬から政治活動に充てる以外だと、寄付を集める、っていうことができると思うのですが、何か工夫していますか?
荻野:今までは、銀行にご自身で振り込んで頂く形でしかお願いできなかったのですが、選挙ドットコム株式会社の提供するサービス「カンタンネット献金」を利用することでクレジットカードを通して、インターネットから決済いただけることで利便性は増したと思います。特に私のような、インターネットを中心に活動する議員には使いやすいのではないでしょうか?
早速、始めてすぐの11月には4名からお申し込みがありました。月額定額で幾らと言った寄付の使い方が出来るのも魅力ですね。少し前に、外国人献金の話題なども取り上げられました、クレジットカードでも完全に防げるわけではないのですが、少なくとも匿名のカンパのようなやり方は現金振り込みに比べて難しいので、誰が振り込んでくれたかの把握は、クレジットカードの方が良いかもしれません。記録もちゃんと残りますので。
池田:荻野区議は、表現の自由や漫画・アニメなどのクリエーター支援にも力を入れた活動をしていますが、そういった分野からの収入はありますか?
荻野:今回も、冬のコミックマーケットでは画像のように(※注1)同人誌の新刊を2種類頒布するのですが、いちおう黒字になっています。最初は政治活動にやる予定で、収支報告にも載せたのですが、黒字が見込めそうになってから政治活動ではなく、民間の活動として行い申告し、税を払うようにしています。
有難い事に、黒字が見込めるようになり、700冊持ち込んで、イベント一日で完売する事もあったのですが、逆にそれが問題で、私はオリジナルの政治家漫画と、二次創作といういわゆるファンアートやパロディのような形での作品も出展しているのですが、この二次創作というのがそもそも、グレーゾーンなんですね。作品によっては著作権者が許可を出しているものもあり、私もそういった作品を主には選んで制作はしているのですがとはいえ、「政治活動ですから利益が出ても非課税」です、というのは不味いだろうと。
政治資金規正法上、政治団体は利益を出しても良いし、収支報告を出す等、ルールもあるのですが、出版物の場合、収益事業に当たらなければ課税されないというルール(※注2)があり、同人誌の場合、イベントでの頒布だけでなく、書店委託もあるので扱いが難しい。一般の方は、あまり違和感を感じないかもしれませんが、特に、支援してくださっているマンガ・アニメの愛好家の方々やクリエイターさんの感覚的に二次創作で利益出して非課税はダメだろうな、という事で、今は売り上げを申告している形になっています。申告し、税務署に収める民間の事業ですね。せめて他の二次創作の作家さん達と同じ形にしようと。
※注1・画像は今回の新刊の表紙 台風19号対応レポート中心の本と、FGO(Fate/Grand Order)というゲームの二次創作本
※注2・政治団体の行う事業収集による所得は、法人税の課税対象になります。ただし、政治団体の行うパーティー事業や出版事業は、収益事業に見なされない限り、課税されません。
池田:地方議員に対する寄付では、自治体の規模によって寄付金控除の対象になったり、ならなかったりして、おかしいなと感じます。区議会議員は控除の対象外ですね?
荻野:区議会議員や政令指定都市でない市の市町村議会議員への寄附は、国会議員や政令指定都市の議員や知事、首長などと比べ、損をします。
どういうことかというと、国会議員、都道府県の知事やその議会議員、政令指定都市の首長や議員、候補者の政治団体に対して行われる寄附は寄付金控除、税制上の優遇措置を受けられるのですが、人口が少ないからか、政令指定都市や都道府県議会かどうかで、政治団体が適格団体(優遇措置を受けられる団体)にあたるかどうかが変わるのですね。
寄付をしてくれる方には違いがないし、地方議会という意味でも特に政令市とその他の区市町村議員で税制上分けてしまっていいのか、と疑問があるのです。
「税制優遇あるから寄付してください」と呼びかけるわけではありませんが、そうした優遇がない、というのは不平等に思えます。
池田:なるほど。国会議員の「政治と金」には時々注目が集まりますが地方議員の懐事情や取り巻く環境・制度はあまり知られていないですよね。今回は様々なことを語っていただきありがとうございました。
編集部より:選挙ドットコムでは他にも地方議員の懐事情についてお話していただける方を募集しています。地方議員の方でご協力いただけるという方はこちらまでお問い合わせください。
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