都議選では80%の人が10分で投票所に行けるって知ってた?面倒と思うけど、実は近くにある投票所
2017/05/28
EUからの離脱問題を最大の争点として争われた昨年12月のイギリス総選挙は、2019年に世界で最も注目を集めた選挙の一つとなりました。そして、今年、最も注目を集める選挙になると予想されているのがアメリカ大統領選挙です。
日本では「政治と金」を巡るスキャンダルが度々報じられていますが、選挙のたびに世界中から大きな注目を集めるこれらの選挙では「政治と金」に関してどのような特徴があるのでしょうか。特に私たち一人ひとりの有権者とのかかわりを念頭に確認してみましょう。
イギリス総選挙では有権者登録をする若者がこれまでの選挙よりも大幅に増加するなど、主体的に選挙に関わる人が増加しました。そして、その影響は「政治と金」にも及んでいます。
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イギリスでは、総選挙前の一定期間に受け取った7,500ポンド(1ポンド140円で計算すると約105万円)を超える寄附について毎週報告することが義務付けられています。
保守党と労働党に対して行われたこれらの寄附の報告結果を前回総選挙(2017年)と比較したものが図表1です。
図表1_イギリス総選挙での大口寄附金額
今回のイギリス総選挙で保守党が集めた大口の寄附の合計額は27.1億円(1,937万ポンド。1ポンド140円で計算。以下も同レートで換算。)と前回総選挙の17.8億円から大幅に増加しています。そのうち、個人からの寄附も今回18.6億円と前回13.5億円から5億円ほど増えています。
労働党への寄附も合計7.6億円と、保守党が集めた金額に比べると劣るものの、前回総選挙の6.4億円よりも1.2億円ほど増加しています。
なお、労働党は小口の個人寄附者が多いとも言われています。
そこで、前回総選挙のあった2017年4月~6月の両党への寄附金額を調べてみます。
同期間の労働党への寄附金額は13.5億円と選挙期間に報告された大口の寄附金額の合計の約2.12倍となっていることが確認できます。
同様に保守党への寄附金額は35.3億円と選挙期間に報告された大口の寄附金額の約1.98倍となっています。
また、イギリスの総選挙では政党が選挙のために使用できる費用に上限が設けられています。
具体的には、候補者を擁立した選挙区の数に3万ポンドを乗じた金額か地域ごとに定められた上限金額(イングランドで81万ポンド等)のいずれか大きい方となります。
イギリス全体での下院の選挙区数は650ですので、すべての選挙区に候補者を擁立した場合でも選挙のために支出できる金額は27.3億円までとなり、保守党は集めた寄附金だけでその費用を賄えてしまったことになります。
このようにイギリスの選挙戦は企業や団体、個人などの民間の資金によって支えられていることがわかります。
左から、サンダース氏、トランプ氏、クリントン氏
選挙において寄附による民間からの資金が大きな存在感を示すのは、けた違いに大きな選挙費用が投じられることで知られるアメリカ大統領選挙でも同様です。前回の大統領選挙においてトランプ大統領が集めた1,053億円(957.6百万ドル。1ドル110円で計算。以下も同レートで換算。)のうち直接の寄附によるものは368億円でした。このうちの26%にあたる98億円ほどが2.2万円(200ドル)以下の小口の寄附によるものです。
同様にクリントン氏が集めた1,568億円(1425.7百万ドル)のうち直接の寄附は685億円であり、直接の寄附の16%である112億円ほどが2.2万円以下の小口の寄附によるものでした。特筆すべきはクリントン氏と民主党の候補者を争ったサンダース氏で、直接の寄附の75%ほどが小口の寄附によるものであったと報じられています。
このように多くの個人からの寄附がなされている理由には、「個人献金」が国民の政治参加手段の一つとして根付いていることを指摘する意見もあります。
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日本の状況はどうでしょうか。
前回衆議院議員選挙のあった2017年の政治資金収支報告書では、自民党への個人からの寄附金として3.3億円が報告されています。同様に、立憲民主党は3.0億円、希望の党(当時)は4.1億円となっており、イギリスやアメリカに比べると小規模なものとなっています。
一方で、日本とイギリスやアメリカを比較した際の特徴として、日本では寄附に対して税額控除を受けられるといった税制上のメリットが存在しています。
日本の有権者の数(約1億人)がイギリス(5千万人弱)の倍以上であることなどもあわせて考えると、日本には政治家や政党に対する有権者一人ひとりからの寄附行為の広大な未開拓地がある状況と言えるかもしれません。
参考までに、最近の報道でもよく目にする外国企業からの献金に関するルールも確認しておきましょう。
アメリカでは外国企業からの寄附は禁止されており、イギリスでも外国企業からの寄附は禁止されています。(ただし、イギリスでは500ポンド(7万円)未満の金額については外国からも寄附することが実質的に可能となっており、対応が課題となっています)
日本でも政治資金規正法によって外国企業からの寄附が禁止されています。
政党交付金が導入された経緯にみられるように、政治の活動資金として企業や団体、個人などの民間からの資金を重視しすぎることにも課題はあります。
他方、自ら金銭的にも支援をするということは、有権者の参画意識の向上につながる可能性もあります。
また、かつてに比べるとネット献金などの寄附を行うための手段が充実したことや、インターネットを用いてスピーディに情報を公開、ガバナビリティを高めていくことなど、かつてに比べて実現できるようになったことも増えています。かつては実現できなかったアイディアも、今ならば実現できるようになっているかもしれません。
残念なことに、ここ数日、政治と金を巡るスキャンダルが大々的に報じられ、政治への信頼がますます損なわれてしまったという人もいらっしゃることと思います。
そんな状況だからこそ、他国の事例などを参考に、私たちと政治の結びつき、政治への信頼性を高めることのできる仕組みを考えてみることの重要性が高まっています。
良くも悪くも「ふるさと納税制度」が税金の流れを変えたように、選挙の世界でも寄附が「政治と金」の関係に大きな変化をもたらすことはあるのでしょうか。また、日々進歩を遂げるテクノロジーやこれまでの経験が、より望ましいと思える「政治と金」の関係を作るような仕組みを2020年に生み出すことはあるのでしょうか。今後の動向が注目されます。
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