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香港デモ、これだけ押さえよう! どうして若者は声をあげるのか(NO YOUTH NO JAPAN)

2019/12/27

NO YOUTH NO JAPAN

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私たちNO YOUTH NO JAPANは、U30世代の投票率UPを目指して、7月の参院選でInstagramを中心にU30世代に投票に行くことを呼びかけたことをきっかけに始めた団体です。
今回は長引く香港デモの発端や各国の思惑などについて取り上げます。

目次

1、デモの発端と逃亡犯条例改正案
2、五大要求と香港の選挙制度
3、香港警察への信頼低下
4、アメリカの香港人権・民主主義法案成立

1、デモの発端と逃亡犯条例改正案

香港でのデモは「逃亡犯条例改正案」がきっかけとなり一連の抗議活動へと発展しました。逃亡犯条例改正案の説明に入る前に「犯罪人引き渡し協定」について解説します。

<犯罪人引き渡し協定とは>

A国の人がB国で罪を犯し、B国で捕まる前にA国に帰国したとします。
この際、2ヶ国間での何らかの取り決めがないと、B国はA国に対して、すでに帰国(逃亡)した犯人の身柄の引き渡しを要求することはできません。
例えば日本は、アメリカと韓国に対して犯罪人引渡し条約を結んでいるので、アメリカに逃亡した犯人の身柄引き渡しを要求することができる一方、場合によっては日本に帰国してしまった犯人を引き渡す必要が出てきます。

<改正案提出の動機>

さて、香港の場合、米国など20カ国と犯罪人引き渡し協定を結んでいますが、中国本土やマカオ、台湾との間には結んでいません。
つまり、中国や台湾で罪を犯した香港人がすでに香港に帰っている場合には、身柄を要求することができなかったのです。(幼児ポルノなど、一部例外はあり)

ところが2018年に、香港人男性が恋人の香港人女性を台湾で殺害し、拘束される前に香港に帰還するという事件(潘曉穎殺人事件)が起きました。先ほど説明した通り、香港と台湾の間には犯罪人引渡し条約もその他の取り決めもなかったため香港の刑法では訴追することができませんでした。
同じようなことが起きないように香港政府は2019年4月に、これまであった逃亡犯条例を改正した「逃亡犯条例改正案」というものを立法会に提出しました。改正案は、中国本土・マカオ・台湾にも刑事事件の容疑者を引渡しできるようにし、容疑者の身柄引き渡し手続きを簡略化するというものです。

<なぜデモへ?>

これに香港の人々が反発・警戒したのがデモのきっかけでした。この条例改正によって台湾だけでなく中国とも引き渡し条例が適用されると、正当な理由なしに中国側にとって都合の悪い人が恣意的に拘束され、香港に対する圧力が強まると考えたためです。

<一国二制度に至るまで>
ここで少し香港の歴史をさかのぼってみたいと思います。

1840 アヘン戦争
1842 南京条約(清、イギリスへ香港島永久割譲)
1942 日本の植民地化
1945 イギリスへ返還
1984 中英連合声明
1997 中国へ返還

1842年、南京条約によってまず清朝政府は香港島をイギリスに永久割譲しました。
日本の植民地支配の期間を経て第二次世界大戦が終結すると、またイギリスに返還されます。その後、1984年に中国への返還を決定した中英連合声明が結ばれ、1997年に中国に返還されました。

1984年の中英連合声明では、
・外交・国防以外の高度の自治権を与える
・行政権、立法権、独立した司法権を付与する
といった12項目の基本方針・政策を50年間は変更しないということが盛り込まれました。

この声明に基づき、共産主義をとる中国において、資本主義の経済制度とイギリスの文化を併せ持つ香港での高度の自治を50年間認める「一国二制度」のシステムが1997年から実行されたのです。

<約束されたことと現実の乖離>

香港では、先ほど述べたように「外交・国防以外の高度の自治権」が与えられているはずですが、実際には中国からの資本・人の流入が激しく、また後述するかなり制限された選挙が行われているため民主主義がほぼ機能していない現状があります。
また香港の人口増や地価の上昇、就職難などの不満も相まって、中国政府に対する反発は表立っては見えないものの、デモ以前から存在してはいました。

中国政府が改正案を乱用し取り締まりや拘束が相次ぐことで、中国の香港に対する圧力が高まることや、これまで以上に香港の自由や民主主義が失われることを危惧して、香港の市民はデモを始めたのです。

<ChineseではなくHongkongerとして>

もう一つ、香港デモへの理解を助けるものとして香港人のアイデンティティについて取り上げます。
先ほど見てきた歴史の中で香港は戦後52年間、イギリスの統治下にありました。
そのような歴史の影響もあってか、香港の人は「中国」と一緒にされることを好みません。
私も香港に留学してから、相手が生まれも育ちの香港人の場合はかなり気をつけて話すようになりました。もちろん、香港には香港人だけでなく、同じ広東語を話す広東省から移り住んだ人や、混血の人も多くいます。

いずれにせよ、香港の独特の食文化や生活様式、資本主義や自由な風潮が行き届いている香港は中国とは違うものであり、ChineseではなくHongkonger(ホンゴンガー)と自称する若者も大勢います。このようなアイデンティティや香港愛の強さは、中国が圧力をかけるほどより強く彼らの中で芽生える感情であり、多くの若者が香港を守るためにデモに参加する理由となっているのだと思います。

さて、逃亡犯条例は9月4日に撤廃の宣言が林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官によって行われ、、10月23日に完全に撤廃されました。しかし、香港人のデモは撤廃されてからもなお、続くこととなりました。

また、ことの発端となった事件を起こした青年は台湾当局へ10月23日に自首しました。

2、五大要求と選挙制度

当初、香港のデモは「逃亡犯条例改正案」に対しての抵抗を示す、極めて平和で民主的なものでした。6月9日のデモでは人口約740万人の香港において、103万人ものデモ参加者(主催者発表)を数えたこともありました。警察の発表では24万人となりましたが、主催者側の発表で考えた場合、香港人の実に7人に1人はデモに参加したことになります。

デモが長引くにつれ、また激化するにつれ、デモ参加者は当初の逃亡犯条例改正案の撤廃を含めた以下の「五大要求」を掲げるようになりました。
“Five demands, not one less.(5つの要求。1つも欠けてはならない。)”という掛け声をデモの映像のなかで耳にした方も多いかもしれません。

(1)条例改正案の撤回
(2)デモの「暴動」認定の取り消し
(3)警察の暴力に関する独立調査委員会の設置
(4)拘束したデモ参加者の釈放
(5)林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官の辞任→普通選挙の実現

この5つの要求ですが、中国がこれを全て受け入れる可能性はほぼないと言えます。選挙制度に至っては中国の全人民会議で承認を得る必要があるのですが、1989年の天安門事件を経験している中国が、香港の5大要求を飲むことはかなり難しいことだと思われるからです。
中国がこの5つの要求を承認したら、他の本土の勢力も対抗してくるかもしれませんし、中国の力が衰えてきていると示すことになりかねません。
しかし一方では、力づくで香港のデモを沈静化すると米国や国際社会からの批判を受けることになるため、軍事を投入することなくデモが収まるのを待っているのではないかとも考えられます。

5つ目の要求について政治制度とともに補足します。

当初は現在行政長官を務める林鄭月娥(りんてい・げつが)の辞任を求めていましたが、普通選挙の実施へと内容が変化したため、→で表現しました。
前述したように、外交と国防は中国当局にゆだねられていますが、それ以外は香港特別行政区基本法(通称:香港基本法)に基づいて決定されます。
この法律に基づいて実施されている行政長官選挙や立法会選挙、区議会選挙は、かなり制限された選挙となっているため、デモ参加者たちはより民主的な普通選挙を求めているのです。

<香港の政治制度>
香港では、主に以下の3つの選挙があります。

1)行政長官選挙:香港のトップを選ぶ選挙
任期:5年(再選は1回可能)
立候補の条件:
・香港特区の永久居民(永住権取得者)で中国の公民
・かつ外国に居留権がない
・年齢は満40歳以上
・香港に20年以上居住
選出方法:1200人の委員で構成される選挙委員会が選ぶ

※選挙委員会の選出方法:産業界の代表や立法会議員、区議会議員、全国人民代表大会(全人代、中国の国会に相当)香港代表、中国人民政治協商会議(政協)香港地区委員などの限られた人々が選ぶ

2)立法会選挙:議会に当たる立法会の選出
議席数:70
※半数が中国との結びつきが強い業界団体から選ばれる

3)区議会議員選挙:地域問題を扱う議員を選出
議員数:452
任期:4年
位置付け:諮問機関
権限:予算承認、条例規定の権限はない
機能:公共施設・サービスの運営計画に関して政府に意見陳述できる
選出方法:市民1人1票の直接選挙

行政長官選挙と立法会選挙はかなり制限された選挙であるため親中派が有利であると言われている一方で、区議会議員選挙は民意が反映されやすい選挙です。

11月24日に行われ、民主派が大きく議席を伸ばしたことが国際的に話題となった選挙は区議会議員選挙のことで、投票率は71%で410万人の有権者登録数のうち290万人以上が投票した形となりました。
ただし、区議会選挙は香港政府に助言するという立場をとるものなので、効力はあまりないのが現状なのですが、国際社会に対して香港の民意を示すという最も大きな使命を果たすことはできたと言えます。

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