参議院議員選挙後の臨時国会閉会から約1か月が過ぎた。この間、世間の注目を集めてきたのは、間違いなく「れいわ新選組(以下・れいわ)」と「NHKから国民を守る党(以下・N国)」の2つの新興勢力だった。
政党要件を満たさない政治団体が参議院議員選挙で議席を獲得するのは、2001年に「非拘束名簿式」が採用されてから初めてのことだ。両党とも選挙中は「諸派」扱いをされ、テレビや新聞で取り上げられることはほとんどなかった。その大きなハンディキャップをインターネットの活用で克服し、国政政党の座に躍り出た。
しかし、当選後の評価は大きく異なる。れいわに関する話題が「希望」や「新しい風」として語られる一方、N国を巡る話題は「騒動」や「脅威」として語られることが多かった。これまで主要メディアで報じられることが少なかった「新興勢力」の登場に、日本社会は明らかに戸惑っていた。
れいわから当選した2人の参議院議員、舩後靖彦と木村英子は、当選直後から国会の対応に変化を生んでいる。重度の身体障害者である両議員は、従来の国会の設備では議場に入ることができない。そのため、参議院の国対を中心に素早い対応が取られ、議場の改修工事が速やかに行なわれた。また、「起立採決は介助者の挙手による代理賛否表明」「PCの持ち込み可」「中央玄関にスロープを設置」などのバリアフリー合意も進んだ。
「今まで国会は何をしていたのか」という批判もあった。しかし、全く対応できない国ではなかったことにわずかな希望を感じる。
一方で不十分な点もある。今回、舩後・木村両議員の国会内での介護費用は参議院が暫定的に負担することが決まった。しかし、両議員が問題提起したのは、現行制度が重度障害者の社会進出や労働を妨げている現状だ。二人の当選をきっかけに、制度を作る立法府本来の仕事があらためて問われている。
今回、れいわは参院選比例区で228万253票(得票率4・55%)を獲得し、特定枠の舩後・木村の2人を国会に押し上げた。山本太郎代表自身は落選したが、参議院比例区の全候補者中最多の99万1756票を獲得した影響は大きい。選挙後は山本へ各メディアからの取材が相次ぎ、世間に露出する機会が大幅に増えている。メディア側に大きな変化が起きたのだ。
メディアが政治団体や候補者を取り上げる際、判断材料の一つとなるのが「政党要件(国会議員5人以上、もしくは選挙区か比例代表で全国2%以上の得票)」だ。これはあくまでもメディア側の自主規制だが、政党要件をクリアしたことで、れいわが得たメリットは計り知れない。インターネットを使わない層にも情報が届くため、党の認知度は高まる。金銭面でも国からの政党交付金を得られる。今後は日本に9つしかない国政政党の一つとして、多くの有権者から厳しい評価の目が向けられるだろう。この機会を活かせるかどうかが、れいわの大きな課題となる。
ちなみに山本代表は「次期総選挙では100人の候補者を立てたい」「総理大臣を目指す」と明言している。筆者が『週刊プレイボーイ』8月19日号で山本にインタビューした際にも、「野党がしっかり共闘していくと示してくれれば、『お楽しみカード』の一つとして私を使ってもらえる」と語っていた。
同誌で取材をした際、筆者は次期総選挙での山本の選挙区について、神奈川2区(現職・菅義偉)、山口4区(現職・安倍晋三)、神奈川11区(現職・小泉進次郎)はどうかと聞いた。すると山本は「東京12区も面白い」(筆者注・公明党の太田昭宏元代表が選挙区での出馬を見送り、岡本三成が予定候補として公認済)、「麻生太郎さんの福岡8区も面白い」と応じた。彼が発した「どこでも行けますよ」の言葉を不気味に思う政治家は少なくないだろう。
れいわは9月17日に、赤坂見附に新しい党本部を構える。そして翌18日からは全国ツアーが始まる。スタート地点は北海道の利尻島。日本を縦断しつつ、次なる戦いの仲間たちを募っていくことになる。全国の有権者は、れいわをどう迎えるのだろうか。
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