「私の戦闘力(得票)は53万です」ネット選挙で当選を果たした山田太郎参議院議員の選挙戦略に迫る(山田太郎氏インタビュー前編)

2019/09/02

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選挙ドットコム編集部

先月行われた第25回参議院議員通常選挙(以下、今回の参院選)ではネット選挙を活用した候補の躍進に注目が集まりました。
選挙ドットコムでは前回2016年の参院選で全国比例で業界団体等の支持がない中で巧みなネット選挙戦略で29万票を獲得し、今回の参院選では54万票超を獲得し当選した参議院議員の山田太郎氏にインタビューを行いました。山田太郎氏の進めた驚きのネット選挙戦略は必読です。

「53万票」獲得を目標に掲げた狙いとは…?

選挙ドットコム編集部(以下、選挙ドットコム)
今回の参院選で山田太郎さんは目標として「53万票」を掲げていました。これは戦略的に票読みした上での数字だったのでしょうか?

参議院議員山田太郎氏(以下、山田氏)
自民党の比例候補の中での一番を目指しまして、3年前の全国郵便局長会の徳茂雅之さんの得票が約52万票だったんですね。なので今回は53万票取れれば1位だろうと。加えてドラゴンボールのフリーザ様の「私の戦闘力は53万です」というセリフもあるのでこれはいいな、と。正直深い考えはなく勢いで掲げていました。

選挙ドットコム
本当にそのノリだったんですね!

山田氏
ただ作戦としてどうやって前回とった約29万票を倍にできるか、ということはしっかり考えました。29万票のときは全国1700以上ある自治体のうち53自治体以外は「山田太郎」票が1票以上あったんです。これをどう2倍にするか、という。

選挙ドットコム
前回(2016年参院選)は落選ではあるものの、ネットで29万票獲得され話題になりました。今回もネットを主体とした選挙ということだったのでしょうか?

参照:2016年参院選落選後のインタビュー記事「 29万票獲得も落選。ネット界の伝説となった山田太郎氏が今後目指すものとは?」

山田氏
ネット上、バーチャルな場としてTwitterを使って拡げていくという基本的な軸はかわりません。そこからその熱をリアルの世界に持ってくる、声をかける、というのに今回はLINEを活用しました。SNSのハイブリッドな活用ができればもしかしたら倍の得票に届くのでは、とは思っていました。今考えると無謀だったかもしれませんが(笑)

 

Twitterでコンテンツを広げ、LINEで「リアル」の世界に熱量を伝える

選挙ドットコム
ネット選挙で軸を置いたのがTwitterだったんですね?

山田氏
そうですね、Twitterです。自分自身の広報でもあるんですけど、どちらかというと周りの人にコンテンツをあげることによって、ネットの中で相対的な物量を増やす、というものでした。

選挙ドットコム
選挙ドットコムでは今回の参院選の全候補者のTwitterアカウントを特定し、全ツイートを収集、リツイートやいいねも集計していました。比例の得票数1位がれいわ新選組の山本太郎氏の992,267票なんですが、最終日のフォロワー数が319,684人。山田太郎さんは540,077票の獲得で最終日のフォロワー数が48,846人と比べるとフォロワー数自体は決して多くないんですよね。

フォロワー数=得票数ではない、ということがわかります。山田太郎さんが54万票を取ったのも54万フォロワー、という訳ではないですね。一方で全候補者のツイートのRT数やいいね数も集計していましたが、この数字で見ると山田太郎さんがダントツで1位でした。山田太郎さんの場合はご自身のアカウントのフォロワーではなくて、広げてくれるファンの方の運動量がすごかった、と思います。

参照:Twitterを活用して当選!?ネットが選挙に影響した参院選2019|第25回参議院選挙のネット選挙動向レポート(1)

山田氏
そうですね、フォロワー数を増やすことよりも、周りの方に拡げてもらうことを意識していました。自分自身のツイート数も前回よりは減っていると思います。(前回が736回、今回は171回)

あとは、ネットで話題になったからといってそのまま票に結び付く、という訳でもないので、その点ではLINEなどでコンバージョンにつなげた、ということになります。本当はもっとLINEに力を入れたかったんですけど、正直目指していたレベルで取り組むことはできませんでした。

数年前に「表現の自由を守る会」というのを立ち上げたときに、メールアドレスが2か月で2万件集まったんですね。なのでその数字をターゲットにLINE登録者数2万、を目指していましたが実際のLINE登録者数は5~6千程度でした。もうちょっと時間をかければ分からなかったですが。

選挙ドットコム
登録してくれた方は「熱心にネット選挙運動を展開してくれるボランティア」になっていかれるんですね。

山田氏
「ネットボランティア」の人たちのツールとしては抜群だったかもしれません。

前回の選挙ではネットボランティアのみなさんを「レベル1」「レベル2」「レベル3」と分けて活動していただいていました。コアになってくる方々がレベル3、という具合に。このイメージと基本的には同じで今回は更に進化させたような形ですね。

選挙ドットコム
「ネットボランティアを分ける」というのは?

山田氏
まずは「推しマーク」の話からしましょうか。Twitter上で僕のことを応援してくれる人に推しマークとして私のトレードマークであるリボンのマークとして「⋈」を付けてもらったんです。
このマークを付けた人がネット上に約1200人、全員把握できていないのでもっといらっしゃるかもしれませんが。

この方々から選抜して「モナーダ(MONARDA)会員」というカテゴリも作ったんです。前回の選挙でいう「レベル3」ですね。なぜモナーダ会員か、というと『ゴジラ キングオブモンスターズ』に出てくる秘密機関でモナーク(MONARCH)という研究所が出てくるんですね、そこのマークに⋈マークが似ていたのでそれにあやかって、「モナーク」に「ヤマダ」の「ダ」を付けて「モナーダ」と呼んでいました。このモナーダ会員が約280人でした。

選挙ドットコム
レベル別の会員証のようなことですね。プラチナ会員、ゴールド会員、シルバー会員のような。

山田氏
いくら山田太郎の公式アカウントで拡散しようと思っても限界があるので、モナーダ会員の人には鍵アカと限定のLINE@(黒リボン研究所⋈)で毎日「指令」という形でミッションを出していたんですね。これやってください、あれやってください、という。拡散を複数で行ってもらうのには、前回の選挙のときはレベル1、レベル2、レベル3、と勝手に目視でやっていたんですが。

我々が何かを仕掛けたいと思っても公式アカウントのものが全然伝わらない。例えば動画を作りました、最後の感動的なメッセージなどを広めたいと思っても広まらない。その時にフォローしているモナーダ会員の皆さんがリツイートしてくれるからタイムラインで「面」を取れるんです。そういう形ですごく助けていただきました。

参院選の何が大変か、というと選挙期間が長いことなんです。ネットからすると必ず中だるみするんです。最初の4日間、公示の時にはものすごく盛り上がります。でもネットってネタがないと冷えてしまうんです。盛り上がればそれだけアンチも出てきますし。選挙戦の中盤にこれまで作ったいろんな動画や、過去の政策で例えば花粉症に関する話題が盛り上がった時に花粉症に関する記事をネット上でプッシュしようと思っても手段がなくなってしまう訳です。

そこは、推しマークを付けた彼らに助けてもらいました。レベル3、レベル2と前回から説明していたものをもっと形にし、会員制のようにしたんです。会員だけが関われる裏ミッションのように。

選挙ドットコム
つまりネットの空間に選対があるイメージですね。選対の中にコアメンバーがいて、その中で「今日は○○をしてください」という指示を出しているという。

山田氏
そうですね、これは「隠して」いるからみんなやってくれるんです。そして周りの人も「これを見たい」と思うからどんどんこれに入ってきてくれる訳です。「この人たち何やっているんだろう?」という感じで。LINEでも秘密のワードを呟くとモナーダ専用の裏メニューに変わるんです。LINEの使われ方はこれのツールとしての役割が大きかったと思います。

選挙ドットコム
LINEはどのように活用されていたんでしょうか?一般の登録者の方むけと「モナーダ会員」の方向けの発信の違いなども伺いたいです。

山田氏
LINEでは、
・一般編
・表現編
・モナーダ会員
の3つに分けて考えていました。

モナーダと表現編には基本的には同じものを配信していました。一般編には表現編の一部情報を絞って送っていました。さらに追加してモナーダには秘密のミッションを伝えていました。

今回の参院選では5つの政策カテゴリ(表現の自由、児童養護・障がい者、年金、経済、ネット時代の法整備)を決めていました。表現の自由に関する投稿は表現ジャンルの人だけに送り、他のカテゴリの政策に関する投稿は一般の会員の方全てに送っていました。送った内容としてはさんちゃんねるの内容や書いた記事の内容ですね。

政策カテゴリではないもう一つのセグメントとしては「住んでいる場所」です。例えば、「○○の地域でセミナーを行います」「××の地方で街頭演説をします」といった投稿は登録者の住んでいる場所でセグメンテーションしたものを配信していました。

選挙ドットコム
モナーダ会員に対してはLINE@でどんなことをされていたんでしょう。

山田氏
モナーダ会員についてはまったく異なる発想です。簡単に言うとネット上で実際のアクションをするネットボランティアです。送っていたミッションとしては「今日はこの情報を拡散してください」「エゴサしてこういう投稿を見たらRT、メンション、引用RTをしてください」といったようなものです。モナーダ会員に対してはLINEだけではなく、Twitterとあわせて情報を発信し、アクションを促していたんです。LINEで入力するとモナーダモードに入ることができるコマンド/暗号を、Twitter鍵アカウントの「黒リボン研究所」から見られるようにしました。
モナーダ会員の人がその暗号を用いてLINEでモナーダモードに入り、そこに日々のミッションが送られてくる、という形です。

選挙になると候補者・陣営から発信される情報が多すぎてしまうんですね。本当に何をやってほしいのか、どういう情報が重要なのかをモナーダの人たちだけに伝えることで、我々にとってプラスになることをしてくれる方々を組織化できた、というのがこの取り組みの良かった点だと思っています。


選挙戦を進めていくうちに組みあがったネット選挙戦略

選挙ドットコム
普通の候補者陣営であれば電話かけしてくれる人、スケジュール管理してくれる人…色んな人がいますがそれをネット上で同じように落とし込んだような形ですね。

山田氏
うちの事務所そのものの実働スタッフは5人くらいしかいないんですよ。特にネット担当は2人だけです。ただ、その先にいる我々も会ったことがないボランティアの皆さん、SNSのアイコンでなんとなく「この人かな…?」というのはわかるんですが、そういった280人のボランティアの方々がネットで組織的にグワっと動いた訳なんです。LINEでミッションを投稿するとそれだけでTwitterでのエゴサが埋まってしまうくらいです。

ただ最初からこのように考えていたかというとそうではないんです。いずれ会員制度は作ろうと思っていたんですが。

推しマークの「⋈」も偶然なんですよ。あのマークは東京でフォーラムをやった時に「山田さんを応援している人のマークを作ったらいいんじゃないか」って言われまして、じゃあ蝶ネクタイだからリボンみたいなマークをつけよう、という話になりました。

これがたまたまキングオブモンスターズのモナークのマークに似ている、と話題になったので次はそういう研究員を作っちゃうか、というストーリーはありましたが。確かに裏側の「レベル3」をどう組織化しようか、とは思っていたんですが、まさかこのような形になるとは思いませんでした。

選挙ドットコム
最初からそういう計画的に進めていた訳ではなく、やりながら組み立てていった、という感じなんですね。

山田氏
そうですね、「電子為書き」や「電子だるま」もそんな感じです。

選挙ドットコム
「電子為書き」「電子だるま」とはどんなことでしょうか?

山田氏
電子為書きと電子だるまはそれぞれ狙いは違っていまして。電子為書きは簡単にいうと「バズり」を狙っていました。我々の選挙戦略は自分自身のツイートをバズらせることではなく、周りの人たちが自分の言葉でツイートすることで「山田太郎」の情報がTL上で面を取ることが目的でした。単純接触効果を狙っていたんです。

その手段の一つに電子為書きを位置付けていました。これがあると有権者自身が「自分が山田太郎を応援したよ」というのを画像付きでツイートできるようになるんですね。どんな意味があるかというと、有権者自身が自分の言葉で書いた応援コメントと共に電子為書きツイートをすると、その人の周りの人が「何だろうこれ?」と思って注目してくれます。つまり自分自身で「山田太郎」についてツイートすることが難しい人でも、簡単につぶやけるコンテンツを提供することで簡単に自分のTL上で山田太郎について画像付きでツイートすることができる、というのが狙いの一つでした。

もう一つの狙いとして、新しい選挙の仕方を可視化しようとした、というのがあります。

為書きは選挙ではある意味象徴的なものです。普通は政治家から「祈 必勝」と筆書きされた紙が為書きとして届くのですが、これが一有権者から届くとなれば選挙として象徴的なことになります。それを事務所の壁に貼ることで新しい選挙の姿として示したかった、というのが狙いでもありました。これはどちらかというとメディア向けの狙いでもありましたね。

今回の参院選では為書きを2000枚以上事務所に貼り出しましたが、そんな事務所は日本全国でも他にないはずで、政治家同士ではなく有権者に支えられているというのを示すのがこの電子為書きの目的でした。

選挙ドットコム
では電子だるまはどんな狙いだったのでしょうか?

山田氏
電子だるまの目的も電子為書きとは違っています。

我々の目標として「53万票」がありましたが、どうやったら53万票に達するのかはわからなかったんですね。とても頑張ったら100万票かもしれませんし、ちょっと頑張ったら50万票なのか?と考えるとその差はよくわかりません。有権者にとっての目標を二つ作り、それらを可視化した、というのが電子だるまの役割でした。一つは「電子為書き」をしたかどうか、もう一つは「期日前投票」をしたかどうかです。電子為書きをすると電子だるまの片目に黒目が入り、期日前投票の報告をすると電子だるまのもう片方の目に黒目が入る、というものです。

53万票を達成するために我々が本当に有権者にやってほしかったのはその二つなんですね。電子為書きをして自分自身のTLで広めることと、今日は期日前投票で山田太郎さんに投票しました、というツイートをすること。その二つをTL上で書いてほしかったんです。

応援していることや、投票に行った、というのはそれだけでは具体的な形として見えにくいです。我々も投票箱が閉まり開票が終わるまでは結果がわからない訳です。しかし電子だるまがあると「応援してくれる人は電子為書きを是非してください」や「期日前投票した方は電子だるまツイートをしてください」といった呼びかけができますし、みんなが具体的なアクションを取りやすくなるんですね。それが電子だるまを導入した理由です。

※本インタビューは前編・後編の二部構成です。
後編はこちら>>重要なのは熱量をどう持続的に有権者へ伝えるか。山田太郎参院議員のネット選挙戦略に迫る(山田太郎氏インタビュー後編)


【イベント紹介】ネットで54万票獲得した山田太郎氏のネット選挙責任者が語る、人には言えない政治と選挙の裏の裏 ~新しい民主主義のカタチはネットが作りだす~

2019年夏に行われた参院選、山田太郎氏は支持母体や組織が無い中、Twitterを活用したネット選挙で540,077票を獲得しました。実際にそのネット選挙を指揮し運用した 山田太郎氏の秘書でネット選挙の責任者でもある 坂井崇俊氏をゲスト講師にお迎えし講演頂きます。

本イベントは、議員、候補者など政治家の方、秘書の方、選挙関係者の方はもちろん、一般の方でも、ご参加いただけます。

日時:2019年9月21日(土)13時~16時まで(受付12時45分~)
会場:汐留ビジネスフォーラム(〒105-0021 東京都港区東新橋1-1-21 今朝ビル 5F)
費用:参加費無料

>>本イベントの詳細・お申込みはこちらから

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選挙ドットコム編集部

2023年に年間1億PVを突破した国内最大級の政治・選挙ポータルサイト「選挙ドットコム」を運営しています。元地方議員、元選挙プランナー、大手メディアのニュースサイト制作・編集、地方選挙に関する専門紙記者など様々な経験を持つ『選挙好き』な変わった人々が、『選挙をもっとオモシロク』を合言葉に、選挙や政治家に関連するニュース、コラム、インタビューなど、様々なコンテンツを発信していきます。

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