政党や候補者のネット広告は何が問題なのか?ネット選挙解禁から6年で、問われる豊かな政治コミュニケーション|西田亮介准教授に聞く| #参院選2019

2019/07/18

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選挙ドットコム編集部

7月21日投開票の第25回参議院議員通常選挙(以下、今回の参院選)。今回改選が行われるのは「ネット選挙」が解禁された2013年の参院選に当選した議員の議席です。ネット選挙解禁から6年が経ち、政治家や政党のネット戦略はどのように変化してきたのでしょうか。今回の参院選では、公示前に政党が行った広告にも注目が集まるなど新しい展開も。そうした状況を踏まえ、選挙ドットコムでは東京工業大学の西田亮介准教授にお話を伺いました。

ネットを主軸に情報収集する人が今後も増えていく以上、ネット選挙の影響は増えていく

–選挙ドットコム
ネット選挙解禁から6年が経ちましたが、大きな流れとしてネット選挙は効果があったのでしょうか?活用は進んだのでしょうか?まず、西田先生の評価をお伺いしたいです。

–東京工業大学・西田亮介准教授(以下、西田氏)
インターネットでの選挙運動が投票率向上や政党の獲得議席数に直接的な影響があるかはよくわからない状況は今も昔も変わりません。今は普及が進みどの候補者も政党もネット対策をするようになったのでネットだけが効いている、ということがますます言いにくくなったことだと思います。

選挙運動の期間然り、政治活動も然り、候補者にとってインターネットは欠かせないツールになったことが一番の変化と言えます。国政レベルであればほとんどの候補者がインターネット選挙運動を行い、インターネットを使った政治活動をやっています。実態はともかく、政治の世界で「インターネットは重要だ」「ネット対策が重要だ」という規範が形成されたのだと思います。

–選挙ドットコム
そういった規範ができたのはなぜでしょうか?

–西田氏
理由はシンプルで、インターネット以外の選挙運動の手法はかなり厳格に規制されていることがあります。一方でインターネットは、電子メールや有料広告には一部規制があるものの、かなり広範な裁量が認められている状況です。インターネットのサービスはさまざまなものが存在し、テキストベースもあればイメージが中心になっているものもあります。なのでそれらをどうやって使っていくのか、という点に関心が高まっています。若い世代のみならず、現役世代の多くがインターネットを主軸に情報収集をしているのは自明ですから、選挙や政治においてもそうなりつつある、ということではないでしょうか。

 

「ネットの使い方競争」で政党・候補者が試行錯誤を重ねてきた

–選挙ドットコム
2013年のネット選挙解禁当時は、「ネット上で演説の告知しかしていない」というような批判も耳にしました。候補者や政党のネット活用は、6年前と比較してどう変化したとみていますか?

–西田氏
この6年間で、政党間や候補者間での競争を通じていろんなやり方が出てきたと思います。国会議員だけでも衆参両院で700人くらいいるはずですから、やはり選挙は競争だと言わざるをえないと思うんですよね。「インターネットの使い方競争」の中で新しい告知の仕方、広告の使い方などを含めて様々な創意工夫や試行錯誤がなされていると。ただ、かなり状況は改善したとはいえ、民間の水準、広告業界の水準と比べるとまだ見劣りすると思います。

–選挙ドットコム
選挙期間に入ると「政党等」しか有料広告を出すことができなくなるというルールがあります。今回も自民党などは積極的にバナー広告などを展開しているように思われますが。これ自体は問題ないことですよね。

–西田氏
そうですね、有償バナー広告は政党等だけにしか認められていない選挙運動の手法です。

–選挙ドットコム
この辺りの変化についてはどう見られているでしょうか。毎回のように新聞社の選挙情報特集などには政党のバナー広告が貼られていたりしますが。

–西田氏
バナー広告もありますが最近はキャンペーンハッシュタグが増えましたね。前回の参院選で行われていた例としては民進党による「#3分の2を取らせない」がわかりやすいです。

日本の場合は国政選挙の選挙期間は衆議院は12日間、参議院は17日間と概ね2週間程度です。この期間だけでネットを使った選挙運動を十分に行おうとするとフォロワー数を増やすことなどには無理があるので、事実上政治活動とシームレスな取り組みを行う政党・候補者が増えているという印象です。

広告という観点では今回、自民党の深夜CMが話題になったかと思います。違反だ、という声もありますが公選法で認められている「政治活動用CM」の域を出ないという印象です。特定の選挙について言及せず、特定の候補者が出てくるわけでもなく、投票を呼び掛けていませんから、従来の解釈からいえば政治活動用のCMとして区分されるものになります。ただ確かに、参院選の期間中に政党がCMを打つことがどうなのか?という疑問や、投票結果に影響を与えるのかどうか、という点で議論が起こるのはわかります。しかしながら、従前から多数の政党がこうしたCMを行ってきた経緯もあり、今回のものが特に悪質なCMであるとは思えませんね。

与党か野党か、政党か候補者かに関係なく「グレーゾーン」を突くのが当たり前になっている

–選挙ドットコム
一方で候補者もあの手この手で試行錯誤している印象があります。Facebook上で自分の出版物を広告している例もありますが、この辺りもグレーゾーンとしか言えないのでしょうか。

–西田氏
同じように本を出した告知看板を選挙の時期に置くのはどうなのか、といった問題は昔からあります。これは野党についても同様のことが言えます。いわゆるグレーゾーンを突くアプローチは誰でもやっているんですね。これはある意味当然で、候補者も政党も、みんなそれぞれ死に物狂いなんですよ。政治家は当選するかしないかで明日の生業が変わってくるわけですから。

衆院選での小選挙区制や、参院選での1人区が増えていることからますます厳しい状況になっているわけです。なので、直ちに違反とは言えないグレーゾーンは、いずれ使い尽くされるということなんだと思います。

–選挙ドットコム
公選法違反にならない範囲で、創意工夫を重ねているとも言えますね。

–西田氏
ただグレーゾーンを突いていることを好ましくないな、と思うことは生活実感としてありうると思います。選挙の専門家らは政治活動・選挙運動は判例の蓄積などに基づいて区別できる、としています。それは確かにその通りですが、その区別・定義が有権者の生活実感と合致するかどうかといえばそうでもない、というのは否定できないと思います。こうした感覚のずれによって批判的な声が上がってきているのではないでしょうか。

公選法や政治資金規正法、政党助成法、放送法など、これらの関連する制度全般を棚卸しして、現在のメディア環境や選挙運動の実態に照らしつつ民主主義の根幹である選挙の在り方をどうしていくのか、どうすべきなのかという議論は大いにあり得ると思っています。むしろそういった議論が少なすぎます。

ただ、そういった議論と現行の規制の中で特定の事象をどう解釈するのか、違法なのか適法なのか、というのは別の問題です。日本の公選法は部分部分の改正だけで時代の変容を乗り切ってきた面があるので、変な所は他にもたくさんありますから。

ネット上での発信は目に入りやすい。受け取る側にどう捉えられるかがカギ

–選挙ドットコム
ネットでの広告については、どちらかと言えば否定的な声が多い印象です。その一方で公選法では新聞広告、ハガキなどは公費で負担されるという状況で、アンバランスな印象があります。現状ネットの方にお金が回っていない(マーケティング対象ではない)ことのほうが、時代にそぐわないという見方もあるのではないでしょうか。

–西田氏
やはりネットが影響力を増したこと、日常生活の中に浸透したことの現れで、そのような議論が広がっているのではないかと思います。そもそも若い人たちは新聞を読まなくなっているので、新聞に出ている広告って目につかないし知らないんですよね。だから指摘もしないし、できない、と。ネットでの広告はタダで目に入るわけですから批判の槍玉に上がりやすいんだと思います。

先般話題になった「ViVi」の問題でも同じようなことが言えるかと思います。政党による雑誌広告は90年代終わりから行われていることで、別に今に始まったことではありません。ではなぜ今回炎上することになったのかを考えてみると、やはりネット上でタダでみんなの目に入ったからではないでしょうか。

一方であの企画が、政治知識がまったくゼロの人にとってどう見えるかを考えてみましょう。確かにTシャツはダサく見えるかもしれませんが、若い人に対して何かしらのメッセージを発しようとしている、声を聞こうとしている、そうした姿勢があると受け取られうる点で一定の効果があるかもしれません。対して自民党以外の政党は、声高に批判を加えていながら若い人に対するメッセージはいまいち見えにくい、と捉えられてしまいます。


投票率や政治関心の向上へのネットの効果は測れない

–選挙ドットコム
ネット選挙解禁から6年で、政党や候補者の活用は発展していますが、その一方で投票への効果(投票率の向上)、というのがマスコミ等の報道ではよく問われます。これはどう思われますか?

–西田氏
そうですね、2013年のネット選挙解禁のときには「ネット選挙解禁で投票率が上がる」ということがまことしやかに言われていました。ただ結局はネット選挙が解禁された2013年の参院選も過去2番目くらいに低い投票率でしたし、一番最初に適用された福岡県中間市の選挙のときも過去最低の投票率だったと記憶しています。(48.64%で前回より約2%下がり、過去最低)

いずれにせよ、投票率を押し上げるという効果は直接的には観察されていないと思います。今回の参院選についても投票率は低くなるのでは?ということが言われていると思います。色々な情報がありますがNHKでは52%程度との予想で期日前投票も前回を下回っているようですね。

>>投票率、ズバリ当てます! 参院選 | 特集記事 | NHK政治マガジン

政治への関心を引き上げる、という点でインターネットの直接的な効果があるのかどうかというのは「今のところよくわからない」と言わざるをえないのではないでしょうか。

ただ、インターネットメディアからしか情報を得ない世代が増えていくと、ネット上のコミュニケーションくらいしか情報を得る手段がなくなってきます。その中でインターネットが果たしていく役割は今後ますます増していくのではないかと思っています。

ネット投票の実施には懸念すべき点がまだまだ多い

–選挙ドットコム
「これだけネット選挙などの手を打っているのに若い人の投票率は上がらない、これはネット投票をしないからだ」という声もあります。これについてはどのようにお考えでしょうか?

–西田氏
僕はネット投票に対しては否定的です。ネット投票は「カウチポテト」的な投票を増長させてしまうことになるのではないのかな、と。

編集部注:カウチポテト:余暇にソファに寝そべってテレビばかり観ている人のことを指すアメリカの俗語表現couch potato。転じて物質的に豊かでも怠惰で不健康な様子。

今の選挙制度がどうなっているのかというと、実質的には「有権者が投票所に足を運び、その間に『一瞬』公のことを考える」という仕組みですよね。オンライン投票だと家で投票をしろと言われたからなんとなく一番先に出てきた候補に投票する、というようにまさしくカウチポテトを増長させてしまって公に対する想像につながらなくなるだろうと思います。

加えて不正の温床となり、秘密投票の原則を維持することが難しくなってしまうのではないかと考えています。スマホで投票するのであれば、投票している様子を横で監視して「横で見ているので○○に投票してください」ということができてしまうわけです。宗教団体然り、お年寄りや意思表示能力が低下している方を集めて特定の候補者に投票を誘導することができてしまいます。エストニア方式であれば後から修正できるとはいえ、締切の1分前に投じた票は結局修正できませんよね。

更にはシステムの堅牢性にも懸念があります。ずいぶん前の話になりますが機械式投票を実施した2003年の岐阜県可児市議会議員選挙では、機械不調などで投票の中断も生じ、最終的に選挙無効でやり直しになりました。機械式投票ですら堅牢なシステムを作れなかったと。かなり制限された期間の間に有権者がアクセスする、というときに絶対にダウンしないシステムを本当に作れるのかどうか、現在はハッキング対策という観点も必要なので疑問はぬぐえません。

–選挙ドットコム
なるほど。参院選後に在外投票でのネット投票に関しては実証実験も行われますが、こうした課題やリスクがあることも含めて議論を深めていかなければなりませんね。

投票率を上げるための特典やキャンペーンには良い面と悪い面の両方ある

–選挙ドットコム
選挙割に代表されるように、ネット上での投票啓発や「投票に行こう!」という呼びかけやキャンペーンも多くみられます。選挙ドットコムも今回の参院選では、Twitterのフォロー&選挙ドットコムの「投票に行こう!」ツイートのRTで3万円分のAmazonギフト券が抽選で33人に当たる、というキャンペーンを行っています。

–西田氏
「選挙割」の類にはあまり意味がないなと僕は思っていましたが、3万円というのはインパクトが大きいですね、これは投票に行くかも(笑)

一方で投票率が上がらない、というときに問題とされるのは投票に行く人が少ない、ということですね。選挙割の特典に釣られて投票する人が増えたというとき選挙の正当性を信頼していいのか、という疑問もあります。

確かに投票率が低いと選挙結果に疑義が残るかもしれません。しかし日本では投票に行かないことも権利として相対的には強く認められているわけですよね。投票を義務化している国もありますからそういった国と比べると権利的性質は強いわけです。投票率が低いことにも疑義はある一方で、様々なキャンペーンにつられて適当に投票する人が出てくる可能性も否定できません。

そういったキャンペーンだけで、選挙結果に影響を及ぼすほどに投票率が上がるとは思いませんが、先ほど紹介したネット投票で適当に投票するようになるかもしれない、という話と同じく、特典欲しさに一番先に目に入った候補者・政党に適当に投票する等の安易な投票促進につながることは懸念されます。

イメージ先行の政治が必ずしも悪いとは言えない。大切なのは政策論争もカジュアルなPRも様々ある環境

–選挙ドットコム
西田先生が著書等でも仰られている「候補者・政党の『ビジュアル』が先行してしまうことへの懸念」についてここで改めて伺ってもよろしいでしょうか。

–西田氏
最近はInstagramやTikTokといったサービスの活用が増えていますね。官邸もアカウントを持っていますし、2018年の自民党総裁選では、安倍晋三氏も石破茂氏もInstagramを利用した初の「Instagramを使った自民党総裁選」だったんです。

この流れの中にある問題は、コミュニケーションの中心が「加工されたイメージによる競争」になっていることだと思うんですね。加工されたイメージというのは曲者で、従来の誠実にありのままを伝える、という姿勢とは真逆のものですよね。もちろんこれまでも素の声が届いていたわけではありませんが。

良く見えるように加工したり、BGMやテロップ、画像のフィルター等で文字通り「印象操作」を行ったりしています。当然これは見ている側、有権者側の脊髄反射的な反応を誘発します。こういった性質は、映像や静止画の方がテキストによるイメージよりもはるかに強いと思います。

–選挙ドットコム
しっかり情報を精査して投票先を選ぶような、いわゆる「投票の質」という観点からはやはりよくないことなんでしょうか。

–西田氏
僕はこの手のものを含めて、直ちに否定されるべきとは思わないですね。逆に、豊かな政治コミュニケーション・選挙を巡るコミュニケーションとはどういう状態なのかを考えてみるといいと思うんです。豊かな政治コミュニケーションとは、政策論争もあれば政治参加を促すようなカジュアルな、今申し上げたようなInstagramを使ったイメージ広告であったり、政治広告であったり、そういったものが何でもあるという状況を各政党が取り揃えていて、その上で有権者がどの政党がいいか、どの候補者がいいかを選べる、という環境が豊かな政治コミュニケーションの場だと思うんですね。そのように考えてみると、直ちにInstagramで政治広告をするのがダメだ、ということではないと思うのです。

「ViVi」の件を例にしてみますと、自民党に対して「イメージ先行だ」「関心が乏しい人たちだけに訴求している」と言われます。しかし公約集をいち早く公開していたのは自民党です。立憲民主党にせよ国民民主党にせよ、自民党に遅れをとり、経済政策だけ先行して出し、後になってから政策集・マニフェストを公開しました。こうした点からも、自民党に対して「政策論争をしていない」という批判を向けることは、あまり正しくはないと思っています。少なくとも事実には反しています。

併せて、実際政策論争は重要だと思っています。僕も「年金問題」「アベノミクスの是非」といった論点がずらっと並んでいるほうがいいと半分は思っています。しかし政策に詳しくない有権者が事実上多数ですから、小難しい言葉や数字が大量に並んだ情報は好まれないわけですよ。単純なメッセージばかりが好まれる傾向にあるわけで、政策集だけ出していては、かえって有権者の政治離れを招来しかねないんじゃないかと思います。とくにただでさえ、若い世代は政治を「難しすぎる」とみなしているように見えます。

そのため繰り返しになりますが、政策に関する主張と、政治広告を含むカジュアルな政治活動とが色々ある状態が好ましいと思うわけです。なので、政治広告やInstagram、TikTokなどを用いた政治活動・選挙運動を規制すべきとは思っていません。

何でも規制、ではなく公平な条件で政党・候補者が競争できる環境づくりを

–選挙ドットコム
「立憲民主党は残念ながらテレビCMに予算を使うことができません。」という枝野さんのツイートがバズるなど政党の資金力の違いも度々話題になります。政党だけでなく候補者ごとにも資金力の差がありますが、政党は多額の政党助成金を受け取っていますから、「れいわ新選組」のように個人献金で資金を集めるところから始めるべきという声もありますね。それについてはいかがでしょうか。

–西田氏
資金力も含めて競争ではないでしょうか。政治的な選択には多様な観点があります。よく批判される政党助成法による政党交付金ですが、議席数による配分と直近の選挙での得票率、この2つをベースに配分されます。それぞれが民意に基づいていることを考えると、これはこれで公平と言えるのではないでしょうか。もし仮に全政党に同額分配する、となると今度は議席が多い政党に不利になりますよね。人数が多いのに同じ額しか分配されないのはおかしいじゃないかと。今の政党助成制度というのは、それなりによく考えられていると思います。さらに言えば、選挙において確かにお金も重要ですが、お金だけで決まるものではないですよね。潤沢な資金があっても必ず選挙に勝てるわけではありませんから。

–選挙ドットコム
選挙カーや選挙ポスターなどの印刷物には公費負担制度があります。今後はネット選挙運動(ホームページ制作や選挙運動用の広告)にも一定の公費負担を認めれば、候補者のネット選挙もより充実し、若年層の政治への関心を高めることにもつながらないでしょうか。

–西田氏
今の公選法では、ポスターやビラの枚数には制限があり、枚数制限を担保するために「証紙」を貼るというルールがあるのに、Twitterは何回更新してもいいわけですよね。大量の証紙を貼らないといけないから、組織がないと選挙ができない状況になり、やはり政党の候補者のほうが圧倒的に有利になると。公平な条件で各候補・各政党が競争できるような環境をつくっていく必要があり、その点からおっしゃるような公費負担制度の活用も一つだと思いますが、こういった様々な課題は棚卸しして、ちゃんと考えていくべき時期にきているのではないでしょうか。それは単に、資金力のある政党に有利だから政治広告は規制すべき、という問題ではないと思います。

ネット選挙の影響が増す中、メディア・ジャーナリズムの役割は重要になっていく

–選挙ドットコム
最後に伺いたいのですが、有権者がネット選挙において気を付けること、どのように関わるべきなのか、といった点についてご意見をいただけますか?

–西田氏
これはメディア・ジャーナリズムの問題だと思います。政党は彼ら自身のモチベーション・目的に基づいて行動します。政党・政治家がどういう存在かというと、自分たちの理念や政策を、わかりやすく・広く周知してそれによって政治的影響力を確保し、信念や政策を実現していくというものです。

それに比べると、有権者の側ははっきり言って無力です。日本の場合は世界的に見ても選挙期間が短く、国政選挙の場合だと2週間前後の間だけ、メディアの報道量も増加し、有権者は政治的関心を持つようになってしまっています。この期間に急に政治に対する関心を高めようとか、政党の情報発信に注意しようとか、基本的には難しいのではないでしょうか。だとすれば、これはメディアやジャーナリズムがきちんと読み解いていく、ということが重要だと思います。そのためにメディアやジャーナリズムはあるわけですからきちんとイノベーションして政治に対抗してもらわないと困ります。

メディア・ジャーナリズム側のイノベーションが遅れている

僕の議論や本の中で繰り返し言っていることは何かというと、政党や政治家のイノベーションに対してジャーナリズムやメディアのイノベーションが圧倒的に遅れていて、そのことによって有権者のリテラシーの改善が遅れ、不均衡な状況が生じています。今の状況が健全であるとは僕も思いません。様々な意味で政治優位な状況があります。ぼくは「規範のジャーナリズム」から「機能のジャーナリズム」へ転換すべきといっていますが、現状は明らかに機能不全です。

先にも申し上げましたが、公選法、政治資金規正法、政党助成法、放送法など、政治や選挙に関連する諸制度を棚卸しして、現在の選挙運動やメディアの状況に照らしてどうしていくのか、どうするべきかを議論をしていくことが必要になっているのではないでしょうか。

–選挙ドットコム
選挙ドットコムも日本最大の選挙メディアとして、こうした議論を提起していきたいと思います。今日は長時間、ありがとうございました。

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選挙ドットコム編集部

2023年に年間1億PVを突破した国内最大級の政治・選挙ポータルサイト「選挙ドットコム」を運営しています。元地方議員、元選挙プランナー、大手メディアのニュースサイト制作・編集、地方選挙に関する専門紙記者など様々な経験を持つ『選挙好き』な変わった人々が、『選挙をもっとオモシロク』を合言葉に、選挙や政治家に関連するニュース、コラム、インタビューなど、様々なコンテンツを発信していきます。

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