11月6日、世界の一大政治イベントであるアメリカ中間選挙が行われました。今回はこの選挙の重要性とその結果について簡単に解説したいと思います。
日本では衆議院総選挙が重要な位置を占めています。その最大の理由は、衆議院総選挙で過半数を占めた党派が内閣総理大臣を指名するからです。すなわち衆議院総選挙は「政権選択の選挙」と考えられているのです。この結果、衆議院の多数派と政権とはある程度政策が共有されていることが期待できます。一方で、アメリカでは大統領と議会とは異なる選挙で選出されます。トランプ政権が打ち出す政策ばかりが注目を集めていますが、そもそも法律を立案、成立させるのは議会の役割です。トランプ大統領が特定の政策を望んでも、議会が法案を成立させなければ政策は実現しないのです。そのため、連邦議会選挙は極めて重要な意味を持ちます。
この2年間は、大統領と上院、下院の多数派を全て共和党が占めてきました。トランプ政権からすれば比較的立法による政策実現をしやすい状況だったといえます。実際、トランプ政権は予算や最高裁判事の指名承認といった重要な政策について、民主党の支持を集めることを諦め、ほとんど共和党議員の支持を頼りとしてきました。そのため、今回の中間選挙において上院下院双方で共和党が多数を獲得することは、これまでの政治スタイルを続ける上で必要不可欠であったといえます。
今回の選挙の結果、上院では共和党が過半数を獲得し、下院では民主党が過半数を獲得しました。上院と下院で過半数が異なるのは、上院では今回選挙の対象とならない議員の多くが共和党議員で、選挙が行われる前から共和党が有利だったことの結果です。
今回、下院で民主党が過半数を獲得したことは大きな意味を持ちます。法案は上院、下院の双方で通過しないと成立しないからです。そのため、法案の成立には民主党の支持が不可欠になります。トランプ政権からすれば民主党との妥協が求められるわけです。例えば、トランプ政権はオバマ政権が推進した医療保険制度改革を撤廃することを求めました。しかし、この医療保険制度改革は民主党議員が熱烈に支持する政策です。そのため、改革の撤廃は一層困難になるといえます。
民主党との妥協を迫られることはこれまでの「トランプ流」のやり方からすれば大きな問題です。トランプ大統領は、これまで民主党やオバマ政権を強く批判し、それによって共和党支持者の支持を固めてきたという経緯があります。しかし、今回の選挙結果を受けて、今後トランプ大統領は民主党との妥協を迫られることになります。仮に妥協した場合、そのことがトランプ大統領の支持者や今回トランプ大統領を支持して当選した議員から不信感を持たれる可能性もあります。一方で、トランプ大統領は一層「トランプ流」を強化する可能性もあります。最近でも、議会の承認を要しない行政命令という形で移民政策を推進してきましたが、そうした手段を今後も繰り返し活用する可能性もあります。この場合、議会の支持が必要な他の多くの政策(予算など)において、ますます妥協が成り立たなくなる可能性があります。
また、内政が難しくなる結果として、トランプ大統領の関心が一層外交に向かう可能性があります。現在も、中国との貿易戦争や北米自由貿易協定(NAFTA)見直しなど、一定の成果を出しています。この傾向が今後強まるかもしれません。
一方で、下院で民主党が過半数を獲得した結果、民主党がトランプ政権を厳しく追及することが可能になります。トランプ政権は現在でも、ロシアとの関係や政府高官の利益相反、トランプ氏自身の脱税といったスキャンダルを抱えています。こういったスキャンダルの追及によって今後トランプ政権への世論の不信感が増していくことが想定されます。
このように、今後は「トランプ流」がどのように変化するかに注目です。
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