都議会選で自民党以上に議席を減らす形となった民進党ですが、新しく代表を決める選挙が9月1日に行われることになり、前原誠司氏と枝野幸男氏の2名が立候補しました。
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もともと、民進党は2016年3月に、維新の党が民主党に合流する形で、「野党勢力を結集し、政権を担うことのできる新たな政党」を目指して誕生しました。しかし、自衛隊日報問題、国家戦略特区問題など、安倍政権に対する不信が広がる中で十分な受け皿になっていません。東京都議会選では獲得議席は5にとどまり、政党支持率も自民党が40%程度を維持しているのに対し、民進党は10%程度と低迷しています。
このように、なかなか政権獲得への道が拓けない中で、代表選が行われます。そのため、新代表には政権獲得に向けた戦略が求められることになります。本記事では、アメリカとイギリスの例から、長年野党だった政党がどのように政権獲得に至ったのかを見てみたいと思います。
イギリスでは、1979年から1997年までの約20年間もの間、保守党が政権の座にありました。そして、1997年に保守党から政権を奪還したのがトニー・ブレア氏率いる労働党でした。
当時は、保守党の間でEUをめぐる対立や、政治スキャンダルが続出し、保守党の支持は低迷していました。一方で、経済は悪くない状況でした。これは、現在の安倍政権の置かれた状況とよく似ているかもしれません。それでは、ブレア労働党は政権奪還を果たしたのでしょうか。
1つは、ブレア氏が党のイメージ改革に成功したということが挙げられます。かつて労働党は1983年の選挙において社会主義的な政策を発表して選挙に臨みました。しかし、それらの政策は有権者の多くから受け入れられるものではなく、保守党に惨敗しました。その時労働党は一部団体のための政党というイメージが根強く残っており、そのことが広く有権者にアピールできない要因とされました。
そこで、ブレア氏は41歳という若さで労働党党首に就任してから、党改革を推進し、党首選における一般の党員の票の拡大などを図りました。その結果、労働党は「国民のための政党」として認知されるに至ったのです。
アメリカでは、1980年大統領選挙でロナルド・レーガン氏が勝利して以降、1984年、1988年と共和党が大統領選に勝利しました。その間、民主党は16年もの間大統領選挙で勝てませんでした。ところが、1992年大統領選挙で民主党候補ビル・クリントン氏が当時現職の大統領だったジョージ・ブッシュ(父)大統領を破りました。
当時は、1991年の湾岸戦争でアメリカが勝利したこともあり、ジョージ・ブッシュ大統領の支持率は一時90%に達していました。それでは、選挙前に圧倒的な人気を誇った大統領をどうして破ることができたのでしょうか。
1つはイギリスのブレア氏の例と似たようなイメージ改革です。当時、アメリカで重視される価値観の問題について、民主党は一般の有権者から離れているというイメージをもたれていました。そこで、クリントン氏は演説で一般の有権者へのアピールを徹底しました。
もう1つは、争点形成です。ブッシュ政権が湾岸戦争に勝利し人気を急上昇させたところで、外交・安全保障分野そのものは国民の生活に直結しません。そもそもクリントン氏は軍や連邦議会議員の経験もないため外交・安全保障に強くありませんでした。そこで、クリントン氏は、当時不振だった経済を争点に据えてブッシュ政権の無策を徹底的に追及しました。その中で、経済不振に苦しむ一般有権者への「共感」の姿勢を示すことに成功したのです。
それでは、イギリスとアメリカの例から何を学べるでしょうか。
ブレア氏も、クリントン氏も一般の有権者へのアピールを徹底しました。演説でも、政策においても、党改革においても、そうした「共感」を示す機会はいくらでもあります。選挙に向けてそのような姿勢を示すことは極めて重要でしょう
選挙で負け続けるからには当然、理由があります。イギリスの場合は政策、アメリカの場合は価値観が、有権者の意向から遠く離れていたことが大きな原因でした。民進党新代表は、それまでの支持率の不振が何に由来するかを考え、そこを改めてアピールし直すことが必要でしょう。
これは、クリントン氏が最も成功した部分です。クリントン氏は外交・安全保障というブッシュ大統領が得意とした論点から、経済という苦手な論点へと移すことに成功しました。安倍政権は現在経済政策において一定の成果を出していますが、民進党が優位に立てる論点は他にもたくさんあるはずです。そのような論点を見つけ上手く有権者にアピールできるかがカギになるでしょう。
以上、イギリスとアメリカから、政権奪還へのヒントを探りました。民進党新代表が誰になるか、その中でどのような政策議論に行われるかに注目です。
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