今回の都議選は、昨年に選挙権が18歳に引き下げられてから初めて実施されたものでした。そんな中、若い世代にも関心を持ってもらおうと、都内の大学生中心の学生団体が行ったある活動が注目を集めていました。
その名も「やわらか選挙公報」。「よみやすい!わかりやすい!やわらか~い選挙公報」として、候補者の素顔や若者向けの政策をまとめていた学生団体「ivote」にインタビューを行いました。
ivoteは2008年に設立された、「政治と若者のキョリ」を近づけることを目的とする学生団体です。
これまでにも、政治の第一線で働く方を学生の飲み会の場にお呼びしてフランクに話してもらうことで政治への興味関心の向上を狙う「居酒屋ivote」や、学校に出張して中高生に選挙に行く大切さを知ってもらう「模擬投票授業」などを行ってきました。
そして今回、都議選をきっかけに新たに始めた活動が「やわらか選挙公報」でした。
やわらか選挙公報とは、若者をターゲットにわかりやすく都議選の候補者を紹介するサイト。
対象は台東、世田谷、杉並、豊島、北、板橋、葛飾の7区と立川市の各選挙区の計54人。政治家を志したきっかけや生い立ち、趣味、家族とのエピソードも盛り込み、プライベートで撮影した写真も提供してもらうなど、候補者の人柄をより身近に感じられるように工夫していました。
かわいらしい手書き風の窓で示された選挙区。親しみやすいデザインを心掛けています。
青年会議所との協力のもと、告示前に開かれた立候補予定者の公開討論会や、候補者へのアンケートなどで情報を集めたようです。「若者に情報を届ける」という趣旨を理解して積極的に協力してくれる候補者も多く、厳しい戦いが強いられていた党の候補者はアンケートの回答率が非常に高かったようです。
合計アクセス数は16,000以上! 若い世代だけではなく幅広い世代から「読みやすい」と好評で、ラジオでいきなり「これおすすめなんだよね~」と紹介されたこともあったようです。
「だれに投票すればいいのかぜんぜん分かんない」そんな若者の声をもとに企画したのが始まりだそうです。
その想いが「やわらか選挙公報」につながったきっかけについて、ivote代表の東京学芸大2年、別木萌果さん(19)はこう話します。
「私の友達に『政治家が目の前にいたら何が聞きたい?』ときいてみたら、『子どもがいるかどうか知りたいなぁ』と答えが返ってきました。堅苦しく遠く感じてしまう候補者も『一人の人間なんだ』と思えたら、選挙の入り口になるのではと考えました」
人柄だけでなくもちろん政策も大事。ここでも『候補者はみんな八方美人に政策言い過ぎて信用できないし、他の候補者との違いがわからない』との仲間の声を受けて、各候補者の話から政策面でもそれぞれの個性がはっきりとでるように工夫をしました。
選挙区ごとに構成は異なるものの、候補者の主張と人柄の紹介はどの区でも設けています。
例えば杉並区選挙区は、政治活動の実績と公約をまとめた「ここがポイント♪」のほかに、「アナタが当選したら?」「オリ&パラ(東京五輪・パラリンピック)、どうしよ?」「こんな人」の計四コマがあります。
そして他の大きな特徴は、候補者ごとのキャッチフレーズ。
「江戸っ子おばあちゃん」「戦う歯医者さん」など候補者を一言で表すキャッチフレーズは、今回の目玉の一つです。このキャッチフレーズも、学生団体「ivote」の皆さんで考え出したもの。
その理由として別木さんは「候補者が自分でつけるとみんな『都民のために』なんてなるから、つまらない。」と言います。確かに個人に焦点を当てたいのにみんなが一緒のキャッチフレーズですと、なかなか差別化できませんよね。
数あるエピソードの中でも、候補者の恋バナはかなり盛り上がったそう。奥様との馴れ初めなどを知ると、一気に親しみやすくなりますね。
「話を聞いてみると、入れたい人がたくさんできた。」と、別木さんは話します。
候補者一人一人の入念なリサーチが必要となるので、規模が大きくなる国政選挙では展開は厳しい、とのことですが、その代わりに区の選挙などでどんどん展開していきたいと話します。
若い世代だけではなく、幅広い世代から好評であった「やわらか選挙公報」。しかし別木さんはまだまだ頑張れる余地があると話します。
「いいものをつくっても、政治に興味がない人までにはなかなか届かない。何とかその壁を乗り越えていけたらいいなと思います。」
「やわらか選挙公報」と学生団体ivote。これからの活躍にも期待です。
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