昨年11月の大統領選挙で勝利したトランプ氏は、1月20日に大統領に就任しました。大統領就任式では、新大統領が宣誓を行うとともに就任演説を行うことが慣例となっています。アメリカ国民や世界は、その演説に注目することで、新大統領がこれから何をしようとしているのかを知ることができるのです。
今回のトランプ大統領の演説の特徴は、「とりたてて新しいことは言わず、これまで言ってきたことを分かりやすくまとめた」というところに最大の特徴があります。加えて、日本の中学生が学ぶレベルの英文法や単語を多用し、一言一言はっきり言うので、外国人からしてもかなり理解しやすかったと言えるでしょう。
今回の記事では、そんなトランプ大統領の就任演説と、トランプ氏がこれまで言ってきたことを復習してみましょう。
演説の冒頭でまず言ったのは「人々の手に政治を戻す」ということでした。
Today’s ceremony, however, has very special meaning because today,… we are transferring power from Washington, D.C. and giving it back to you, the people.
For too long, a small group in our nation’s capital has reaped the rewards of government while the people have borne the cost. … Politicians prospered, but the jobs left and the factories closed. …Their victories have not been your victories
…
The forgotten men and women of our country will be forgotten no longer.今日の式典は特別な意味を持つ。それは、権力をワシントンからあなたたち人民の手に取り戻す日だからだ。
これまでずっと、我々の国の首都における小さな集団が政治から利益をむさぼる一方、人民がそのツケを支払ってきた。政治家は栄えたが、雇用はなくなり、工場は閉鎖した。彼ら政治家の勝利はあなたたちの勝利ではない。
これまでの政治に忘れられた人たちはこれ以上忘れられることはない。
トランプ氏は事業家やTVタレントとして活動し、政治家としての経験はこれまで一切ありませんでした。
これまでの大統領で「アウトサイダー」と呼ばれていた人たちも州知事などは経験していたことがありましたので、政治家としての経験を一切持たないトランプ氏はまさに「アウトサイダーの中のアウトサイダー」と言えるでしょう。
トランプ氏は大統領選の中でも何度も政治経験がないことを前面に押し出し、連邦議会やホワイトハウスの政治家を批判し、共和党や民主党の主流政治家を打ち負かしてきました。
今回の就任演説では最初に「ワシントン批判」を展開しました。大統領に就任してもなお、そうした姿勢を重視していると言えるでしょう。
From this day forward, a new vision will govern our land. From this day forward, it’s going to be only America first, America first.
Every decision on trade, on taxes, on immigration, on foreign affairs will be made to benefit American workers and American families. We must protect our borders from the ravages of other countries making our products, stealing our companies and destroying our jobs. Protection will lead to great prosperity and strength.
America will start winning again, winning like never before.
We will bring back our jobs. We will bring back our borders. We will bring back our wealth. And we will bring back our dreams.
…
We will follow two simple rules; buy American and hire American.今日この日から、新しいビジョンが我々の国を治める。今日この日から、アメリカ・ファースト、アメリカ・ファーストがこの国を治めるのだ。
貿易、税、移民、外交、すべての決定はアメリカ人労働者やアメリカの家族に利益をもたらすように行われる。我々は他国が我々の製品を作り、会社を盗み、雇用を破壊することから国境を守らなければならない。保護貿易は大いなる繁栄と強さをもたらす。
我々は雇用を取り戻す、国境を取り戻す、富を取り戻す、そして夢を取り戻す。
我々は2つのシンプルな原則に従う。それは、アメリカ製品を買い、アメリカ国民を雇うということだ。
「アメリカ・ファースト」もトランプ氏が大統領選の中で言い続けてきたことです。具体的には、貿易協定によって関税が安くなった製品ではなく「アメリカ製品を買い」、賃金の安い移民労働者を排除して「アメリカ国民を雇う」といった意味になるでしょう。
「貿易協定によって関税が安くなることで、賃金の安い発展途上国の製品を輸入しやすくなり、国内の雇用が奪われる」といった主張自体は、トランプ氏に限ったことではありません。かつて民主党予備選挙でクリントン氏と争ったサンダース氏も同様の主張を展開しており、最近でもTPP反対という点について支持を明言しています。
しかしトランプ氏は、自由貿易反対という立場から、移民排除や差別にまで発展するという点において、サンダース氏とは大きく異なります。そして、この点が根強いトランプ批判の原因と言えるでしょう。
Together, we will make America strong again. We will make America wealthy again. We will make America proud again. We will make America safe again. And yes, together we will make America great again.
共にアメリカを再び強くしよう。アメリカを再び豊かにしよう。アメリカを再び誇れる国にしよう。アメリカを再び安全にしよう。そして、そう、共にアメリカを再び偉大にしよう。
トランプ氏の発言の中で最も有名なフレーズといっても過言ではありません。似たような言い回しを繰り返していることからも、トランプ氏自身が気に入っているものと思われます。
問題なのはその手段です。アメリカをどうやって偉大にするのか、あるいは何が実現したら偉大になったことを意味するのか、その具体的な中身がこれまでの発言から一切見えてこないのです。そして、今回の演説においても詳しくは語られませんでした。
果たしてトランプ大統領が続々と展開する政策は、いかなる未来を思い描いてのことなのでしょうか。日々、大統領令への署名が話題となっていますが、今後の動きも誰にも予想できない状況です。
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