先週末29日に投開票を迎えた佐賀県唐津市の市議選では2人の「青木茂」さんが立候補するという珍しい事態が起こっていましたが、開票の結果、2人の「青木茂」さんがともに当選を果たしました。
同姓同名のため、両方の「青木茂候補」は自分の支持者たちに、投票の際に「年齢」や「新人か、現職」などを書いてもらうように告知をしてきましたが、残念ながら「青木茂」とだけ書かれた投票用紙が800枚以上もありました。
こうした場合には、「按分(あんぶん)」という処理が行われます。
例えば、「山本A」候補と「山本B」候補が出馬している選挙で投じられた「山本」とだけ書かれていた票は、それぞれの得票数に合わせて分けられます。
「山本A」と書かれた票が800票、「山本B」と書かれた票が200票あったとすると、「山本」とだけ書かれた票は「山本A」候補に0.8票、「山本B」候補に0.2票と按分される仕組みです。今回は800票もが按分されるという状況でした。
同姓同名の場合は「肩書」や「職業」、他には「居住地域」「年齢」などを併記してもらうような対応を取るのが一般的であり、その他の内容を書くことは他事記載(たじきさい)を判断され、無効票扱いになってしまいます。今回の選挙では、両陣営とも「新人」や「現職」と書くように支援者に告知を行なってきましたが、「かっこいい方」「坊主の方」などの記載が見つかりました。
年齢などを補記して投票された有効票は現職候補が2,403票、新人候補は1,241票でした。「青木茂」とだけ書かれていた836票が案分票となり、両者の得票率に応じて現職544.697票、新人281.302票に分けられました。
北海道では、鈴木宗男さんと同姓同名の方が立候補したことがありました。しかも、この鈴木宗男さんは、本物の鈴木宗男さんに担がれた人物… 何を言っているの? と混乱してしまいそうです。
鈴木宗男さんは、「鈴木宗男事件」と呼ばれる汚職事件を受け、立候補することができない「公民権停止処分」という罰則を課されていた時期がありました。
「公民権停止」の状態では、自分自身は立候補できませんが、同姓同名の候補者を立候補させることで有権者に「あれ? 鈴木宗男さんて汚職事件で有罪になったと思ったけど、もう活動しているんだ」と思わせるような宣伝を行いました。
政治家の名前はなかなか覚えてもらえません。政治家が必死に街頭演説を行なっても、名前すら覚えてもらえません。選挙前になると各家庭に配らえる選挙公報を目にすることや、投票所に行って候補者名を目にすることで、候補者の名前を初めて知った、という方も多いでしょう。
鈴木宗男さんは自分の同姓同名の鈴木宗男さんを立候補させ、宣伝を行なったというわけです。
法律上では禁止されていませんが、まさかこんなマンガみたいなことを本当にやるなんて… 驚きの選挙でした。
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