その土地に長く住む人が多い地方では同じ苗字の人ばかりということもあります。実際に、同じ苗字の人が何人も立候補した町村議会選挙も過去、たくさんあります。
そんな選挙で、投票用紙に苗字だけが書かれている票が投じられた場合、「按分(あんぶん)」という処理が行われます。
例えば、」「山本A」候補と「山本B」候補が出馬している選挙で投じられた「山本」とだけ書かれていた票は、それぞれの得票数に合わせて分けられます。
「山本A」と書かれた票が800票、「山本B」と書かれた票が200票あったとすると、「山本」とだけ書かれた票は「山本A」候補に0.8票、「山本B」候補に0.2票と按分されます。
この差によって当落が分かれることはめったにありませんが、ごく希にドラマを演出することがあります。
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定数14に対して17人が立候補した2001年の神奈川県足真鶴町議会議員選挙。候補者のうちなんと6人の苗字が「青木」さんでした。これは割合にして35%。3人に1人が「青木」という珍しい事態が起こっていました。
さらに極めつけは、同姓同名の「青木透」氏が2名立候補していたこと。何とも珍しい選挙です。
そして投票が終わり、投票用紙を確認している時に事件は起こりました。最下位での当選となったのは青木照夫氏。そして惜しくも15番目の得票数で落選となったのは黒岩宏次(ひろつぐ)氏でしたが、この2人の票差はわずか「0.006票」。
これは先述の通り、「按分(あんぶん)」の結果、0.006票という小数点以下の票が生まれ、この票差で明暗が分かれることとなりました。
当然、落選した黒岩氏としては納得がいかず、票を精査すると「黒岩ひろし」と書かれた票があることが判明。これは「黒岩宏次(ひろつぐ)を書き間違えた。自分の票だ」と主張するも、選挙管理委員会の判断としては「別に出馬している青木浩(ひろし)候補と黒岩候補の名前を混ぜ書きした無効票」であるという判断をして黒岩候補の訴えは退けられました。
ちなみに、2名いた同姓同名の「青木透」候補については、選挙管理委員会は投票用紙に住所まで書くよう呼びかけをし、50歳元職の青木透候補は356票で当選、72歳現職だった青木透候補は158票で最下位での落選、とこちらも明暗が分かれる結果となりました。
さらにもっと珍しい選挙も起こっています。
2004年に行われた沖縄県北中城村長選挙では、現職の喜屋武馨(きゃん・かおる)氏と、元村議会議長の喜屋武薫(きゃん・かおる)氏が出馬しました。苗字だけならまだしも、まさかの同姓同名の選挙。選挙管理委員会だけではなく、有権者、そして候補者自身も頭を悩ませたでしょう。
選挙ポスターには混同を避けるためそれぞれ「キヤン村長」「ギチヨカオル」(ギチヨは議長の意味)と書いて選挙を戦いましたが、結果はまさかの、両者ともに落選。
2人の「キャンカオル」と新垣邦男氏による三つ巴の結果、2人の「キャンカオル」票を合わせた数よりも多い約6割の票を新人の新垣邦男氏が獲得して当選しました。
先日行われたアメリカ大統領選挙では、一部の候補を除いて選択式になっている投票用紙を使用していますし、台湾の総統選挙では候補者につけられた番号を投票することで知られています。一方、日本では「鉛筆で紙に、候補者の名前を書く」ため、書き間違えなども多数起こっていると思われています。
日本でも一部地域で始まっている選択式の投票用紙や電子投票の普及が進めば按分票での泣き笑いや開票所での煩雑な処理は少なくなるかもしれないですね。
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