
(トランプ氏 HPより)
トランプ氏が大統領選に勝利して以降、「トランプ氏がどんな政権を実現していくのか」が注目されています。
もちろん、アメリカがどんな政治を行うかは、トランプ氏が政権の中枢に誰を据えるかの人選によって大きく変わってきますが、それだけではアメリカ政治の未来は決まりません。
「大統領」と対等なパワーを持つ「連邦議会」がどう動くかによって、トランプ政権の行方が決まってきます。
あまり報道されませんが、大盛り上がりだった大統領選と同時に、連邦議会選挙も行われていました。そして選挙の結果、共和党が上院と下院の両方で多数派になりました。「大統領も議会も共和党なのだから、何も問題ないじゃないか」と思うかもしれませんが、実際はそうはいきません。
まず、トランプ新大統領は公約にかかげていたメキシコとの国境に壁を作れない可能性が非常に高いと言われています。
それは、技術的に大きすぎて作れないというわけではありません。大統領は予算を伴う政策を勝手に行うことはできないためです。
予算を伴う政策は全て議会を通す必要がありますが、大統領には議会に法案を提出することすらできません。トランプ新大統領は、議会に向けて壁の建設を訴える演説はできます。しかし、そこから先は議会の自発性に任せるしかありません。トランプ氏が大統領に当選したとはいえ、議会にトランプ氏のような政治家がいるわけではありません。そのため、賛否両論を巻き起こしている「メキシコとの壁」が実現するかは不明です。
さらに「メキシコとの壁」はもう一つの意味で非現実的です。それは、壁の建設には巨額の予算を伴うものだからです。そもそも、共和党は政府の財政出動や経済活動への介入に反対する政党です。そのため、巨額の予算が伴う政策全般に反対するのが普通です。
例えば、壁を造るのがメキシコからの移民を防ぐためではなく、雇用を生み出すためだとしても、これまでの共和党を考えると簡単には賛成しないと予想されます。
共和党が議会で多数派を握ったということは、インフラ整備などを国が積極的に行い、雇用を作り出すといった財政出動政策は減ることになるでしょう。
トランプ氏は選挙で「インフラ整備による経済成長」を訴えていました。しかし、予算を伴うこの政策は、議会の承認が必要であり、多数派を占める共和党が反対することはほぼ確実だと言われています。
一方、金融規制についてはトランプ氏と共和党の立場は同じく批判的です。リーマン・ショックに始まる金融危機以来、アメリカ政府は金融機関への規制を強めてきました。規制のための重要な法律が「ドッド=フランク法」と呼ばれる法律で、急な金融破綻を防ぐために普段から「政府による金融機関への監視」を強めるものです。
民主党や消費者団体などは、この法律は社会的正義のために必要なものだと考えてきました。一方、共和党や金融界は「政府からの監視や規制は、経済活動への妨げになる」として批判し、縮小を主張してきました。
トランプ氏は、景気回復の遅れはドッド=フランク法によるものだとして共和党に歩調を合わせるかのように縮小を主張しています。トランプ氏と共和党が同じ意見を持つ場合は、議会の承認によりドッド=フランク法は縮小されることになります。
金融規制撤廃のようにトランプ新大統領と共和党の意見が一致した政策はスムーズに実行されるでしょう。しかし、インフラ整備のように意見が一致しなければ、その政策は実行できないことが予想されます。
つまり、結局トランプ新大統領は議会に妥協せざるを得なくなります。しかし、そうなると「変化を求めてトランプ氏に投票したのに… 何もできないじゃないか!」という批判が上がる可能性も高いでしょう。
期待が高いだけに、目玉政策を実行できなければ、支持率はすぐに低下してしまいます。果たして、トランプ新大統領は議会と協調しながら選挙で訴えた政策を実現できるのでしょうか。
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