18歳選挙権が話題になった7月の参院選から、早2ヶ月が経過しました。
初夏には10代に向けた広報が盛んに行われていたものの、最近は政治のニュースに若者が登場すること自体が稀のように感じられます。
決して一度きりのお祭り騒ぎで終わらせてはいけない18歳選挙権のPRは、今どうなっているのでしょうか?単なるブームに終わってしまったのでしょうか? それとも、若者に目を向けた最初のきっかけになったのでしょうか?
参院選前に盛り上がっていたあれこれの現在をのぞいてみましょう。
どうした総務省! 広瀬すずの笑顔はどこに…
まず、ページ自体が落ちているのが総務省です。
18歳選挙権のサイトURLはhttps://18senkyo.jpであったはずですが、開いても「このサイトにアクセスできません」という文字が出るばかり。あの広瀬すずが微笑んでいたトップページは失われてしまったのです…
いくら参院選が終わったからといって、18歳選挙権は一度限りの制度では決してありません。これから18歳になる人たちはいくらでもいますし、発信は常に続けていくべきなのに…。 非常にもったいないし、この中途半端なしり切れとんぼ広報が税金で行われていると思うと悲しくなってきます。
そして、あの伝説のサイト「TOHYO都」もサーバーが落ちていました。こちらは都が開設していた若者向けの選挙公報サイトで、ぺことりゅうちぇるを起用したり、新宿の駅前でラップイベントを開催したりと斬新すぎるPRを行っていた企画です(URLは http://tohyo.to )。
東京都の選挙管理委員会が公式で行なっていたとは思えないほど“カオス”で意味不明だった世界観で話題になりましたが、このサイトも何事も無かったかのように、サイトが無くなっていました。
あまりにぶっ飛んだ世界観が故に、賛否両論を巻き起こし、プチ炎上もしていたサイトですが、無くなってしまうと「炎上しないようにコッソリ消したのか…?」と邪推したくなってしまいます。
せっかく一度注目されたのだから何度も続けていって欲しかったと思います。残念。
続いては政党を見ていきましょう。夏からURLを変更していますが、18歳選挙権サイト自体は残しているのが自民党です。「国に届け」という漫画が炎上したのも記憶に新しいかと思います。こちらのサイトでは、件の「国に届け」や「モーションマンガ」(映像として公開されているマンガ)作品などが公開されているほか、無利子奨学金の実現、給付型奨学金の検討、雇用の安定など、若者に関する政策も紹介しています。
選挙にまつわる◯×クイズやQ&Aなどの学習コンテンツも含まれており、充実した印象です。しかしトップページには「7.10 投開票」という参院選の日付が入ったままになっている様子。せっかくURLを変えてまで続けているのなら、参院選に限らない18歳選挙権サイトにすればいいのにな、と感じました。
続いては、参院選前に維新の党と合流し、「民主党」から党名を変更した民進党を見てみましょう。
若者に限らず党名の知名度の低さが悩みの種と言われていました。関係者によれば、参院選の際に原宿で行ったイベントでの意識調査では、1万人ほどに聞き込みを行ったものの、「民進党」という名前を知っている人は全体の三割にも満たなかったそうです。それに対して「民主党」の知名度は半数程度、「自民党」は7~8割が知っていたというのですから、現在民進党は何を差し置いても党名を売らなければならない状況にあることは間違いないでしょう。
10代の投票結果を見てみると、自民党へ投票している人の割合が最も高くなっていますが、この結果について民進党は「10代の若者が経済政策を重視しているからではなく、単純に自民党の知名度が高いからではないか」という意見も党内にはあるそうです。確かに自民党しか知らない若者が多い以上、その可能性はありそうですね。
そこで行われたのが、「ゆるキャラ募集」キャンペーンです。
実は、合併前の民主党には、「民主くん」というゆるキャラが存在していました。(というか今もいるのですが… 詳細は後述。)
民主くんは、民主党の赤い丸が二つ雪だるま状にくっついたマークが基調になっており、そこに単純でちょっと奇妙な顔と手足がついた、なんとも言えないキャラクターです。
彼の半生ははっきり言って幸薄でした。民主党が民進党になってから、民主くんは公認を取り消され、政界引退を余儀なくされたのです。そして参院選時に始まった新しいゆるキャラの募集… 民主くんは再就職先を求めつつも、民進党に居場所を得ることはできないものかと今も必死の活動を行っている悲哀に満ちたキャラクターなのです。現在の目標は新しいゆるキャラの中の人になることらしく、有権者の涙を誘います。
再就職どうしよう・・・
橋下徹さんみたいに
弁護士資格ないし
口下手だからタレント活動もできないし— 民主くん@新キャラの中の人になりたい (@minshu_kun) 2016年4月29日
この参院選時に行われていたゆるキャラ募集キャンペーンは、9月6日~15日の間で再び募集期間が設けられました。大賞受賞者には、賞金10万円とともに、なんと民主くんの1/1サイズ人形が送られるとのこと。(受け取り拒否もできるようです。かわいそうに……)
本人が「抱き枕に!魔除けに!夜食に!サンドバッグに!マルチに利用可能!」という捨て身のツイートをしているところも非常に見ていて辛くなってきます。少しは自分を大事にしろよ!
手描きイラスト大歓迎!
民進党ゆるキャラ公募を開始します!
採用者の副賞には「1/1サイズ民主くん人形」!
抱き枕に!魔除けに!夜食に!サンドバックに!マルチに利用可能!https://t.co/shZZBY1gBt pic.twitter.com/3pdBxNrVuB— 民主くん@新キャラの中の人になりたい (@minshu_kun) 2016年9月1日
実際応募は既に相当数集めているらしく、参院選イベントで集まった応募作はツイッター上で多数公開されています。掲載されているのは10代の若者の作品ばかりなので、どうやら多少は若者の目に止まっている…? のかもしれません。
せっかくなので、この機会に選挙ドットコムでも新ゆるキャラを考えて応募してみようと思います。結果は来年の党大会で発表されるので乞うご期待! もし大賞を取って民主くんの等身大人形が当たったら、移転してから手狭になったと話題の選挙ドットコムのオフィスに無理やり飾ります!!!!(編集長に怒られそう!)
…しかし、いずれにせよ、ゆるキャラ広報ばかりで得票率が上がるわけではないことは忘れないでいて欲しいところ。大事なのは「若者が好きそうなもので若者の気を引く」ことではなく、「若者に政治への興味を持ってもらう」ことです。いつまでも若者を子供扱いした単発イベントをしているようでは、若者側も違和感を感じるでしょう。
共産党は、「カクサン部」と呼ばれるゆるキャラたちを活用し、普段から若者向けの広報に力を入れている政党です。参院選の際には、独自のトレーディングカード(トレカ)を作っていました。共産党の候補者のカードを集めてデッキや手札を作る… という通好みなシュールなものでした。
参院選後の今、18歳選挙権の特設ページはありませんが、政策に関する紹介ページの一環として18歳選挙権に言及した文章がいくつか出て来ます。自民党のカラフルで写真をふんだんに使ったサイトとは違い、特に若者向けのデザインは意識していないのが共産党の特徴かもしれません。大学の授業料引き下げ、給付型奨学金、ブラックバイト撲滅など、マニフェストは具体的に書かれているようです。
内容的には充実していますが、活字が苦手な人にはあまり優しくない仕様だと言えるでしょう。
政治に関する若者向け広報において、一番重要かつ基礎となる部分は、「そもそも政治に興味を持ってもらう」ということです。何も知らない、興味もない相手をいかに振り向かせるのか。簡単なことではありません。それゆえに、続けていかねばならないのです。
これから少しずつでも、経験の蓄積でより良い選挙広報が行われることを望みます。
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