民進党の代表選、9月15日に投開票が行われ、国会議員、公認候補者、地方議員、党員・サポーター票503ポイントを獲得して、蓮舫氏が代表に選出された。公認候補者票こそ蓮舫氏の50ポイントに対して前原氏の44ポイントと僅差であったが、党員・サポーター及び地方議員票で蓮舫氏が293ポイント獲得、他候補を大きく引き離しての当選である。これは別の見方をすれば、非議員の大きな期待を集めて代表に選出されたということである。
その「非議員の大きな期待」とは何かと言えば、蓮舫氏の主張や政策の中身、実行力に対する評価や期待よりも、個人的な「人気」の延長線上にある「期待」であるようだ。蓮舫氏の政策能力のなさや知識の浅薄さは、これまで拙稿において指摘してきたとおり。キーワードを選んだり作り出したりするのは上手だが、その後に続くものがない。つまり政策に期待しようとしても政策の中身がないのだから、期待しようがない。
そうした点から考えれば、今回の民進党代表選は政策論争、政治力競争ではなく、人気投票であったと言ってしまってもいいように思う。実際、今回の代表選においては明確で具体的な政策論争は行われたとは言い難く、途中から蓮舫氏の二重国籍問題が話題の中心となってしまった。政策や民進党のこれからと直接的には関係のない問題が争点のような存在になってしまったため、いくつかの政策的な争点を軸にした3候補の主張の比較は影を潜め、代表選は、蓮舫氏が好きか嫌いかの選択にすり替わってしまった。少なくとも筆者の目にはそのように映った。
結果、蓮舫ファン、蓮舫大好き連合、その人気に乗っておいた方が得と判断した国会議員、地方議員が雪崩を打って蓮舫氏に投票し、蓮舫氏の圧勝となったということであろう。
先の参院選の同氏の選挙戦を見ていても、有権者の動きはタレントとしての蓮舫氏のファンの動きであり、選挙と言うより人気投票と言った方がいいような状況であった。(選挙については、有名政治家ともなれば多かれ少なかれ人気投票的な性格はあるが、蓮舫氏の場合は特に顕著である。)
ただし、ファンや人気投票の上に立っていると言うのは、砂上の楼閣に等しい。二重国籍問題はなんとか乗り越え、うまい具合に蓮舫氏の祖母や両親の苦労物語にすり替えられて、同情まで集めるようになったが、国会議員としての職務の本旨である国会論戦においてボロが出れば、同情やファンは潮が引くように離れていくだろう。(無論、信者のような熱狂的なファンは除く。もっとも、そうした信者でさえも一人また一人と離れていった政治家を見ているので、行き着くところまで行けば話は別だろうが。)
そして二重国籍問題、台湾と日本の歴史的経緯や国籍法の現行規定に鑑みるに、単純に違法・不当と評価することはできない。なんといっても二重に国籍を有していたとして、それを罰する規定は同法には存在しない。同法においては、国籍の選択と外国籍の離脱は別々に規定されており、二段構えの手続になっている。そして前者は「しなければならない」が、後者は「努めなければならない」とされている。つまり、国籍の選択はしなければならないが、そのことと外国籍の離脱とは別物であって、離脱は強制されていない。
すなわち、蓮舫氏の二重国籍問題の本質は、二重国籍であるかどうかではなく、同氏の発言や説明が二転三転したことにある。要するに、自らの事情について明確に答えられない者が野党第一党の党首たりうるのか、発言がコロコロ変わる者が、仮に政権の座に就いたとして、一国の総理たり得るのかということである。
そしてこうした発言が二転三転するというのは、別の言い方をすればブレているということである。与党をただ追求していればいい立場のうちは、発言のブレも目立ちはしなかったが、今度は野党第1党の党首として様々な質問を投げかけられ、発信もしていかなければいけない立場にもなるとそうはいくまい。間近に迫る臨時国会は、補正予算、TPP関連法案、日露関係の法案、労働規制関連法案と重要法案が目白押しである。また、消費税率引上げの延期に伴う関連法の改正案も提出される。代表選でも党内で個別の政策への考え方の大きな違いがあることが明らかとなったところ、しっかりと軸を持って対応することができるのだろうか。
筆者は、そうした対応において徐々に綻びが出て、旧民主系お得意の党内での足の引っ張り合いが始まり(既に代表選は無効だと場外乱闘が始まっているが。)、個別政策への対応を巡って党内をまとめきれないどころか、発言が二転三転し、党内に亀裂が生じ、党分裂という時限爆弾の導火線に、蓮舫氏が火をつけることになるのではないかと見ている。(もちろん党役員人事をどうするのかという点も重要な点だが、旧民主党のこれまでの執行部を見る限り、忍耐強さを感じられたことはほとんどない。)
とりあえず所信表明演説に対する代表質問はなんとか乗り切るだろう。したがって最初の関門は補正予算の審議だが、与党からすれば、待っていれば勝手に相手がこけてくれるということになれば、これ程楽な国会はないということになる。懸念されるのは民進党云々よりも、与党側の慢心と質の低下か・・・
※本記事は「政治・政策を考えるヒント!室伏謙一 (公式ブログ)」の9月16日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。
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