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SMAPよりも深刻、アメリカ共和党も不仲でトランプ氏がキムタク化

2016/8/18

選挙ドットコム編集部

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11月の決戦に向けて議論がヒートアップしているアメリカ大統領選挙。そんな中、共和党内で異変が起きています。共和党公認候補であるトランプ氏に対して不支持を表明する共和党員が続出しているのです。

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分裂を防ぎたい派と、それでもトランプ氏を許せない派

この動きは今に始まったことではありません。トランプ氏が公認候補に決まる前から、予備選を戦ったジェブ・ブッシュ氏や、その兄で前大統領のジョージ・W・ブッシュ氏など有力な議員が不支持を表明しています。一方、共和党議会リーダーであるポール・ライアン下院議長を中心としたグループは、共和党の分裂を避けようとしていましたが、相次ぐトランプ氏の問題発言を批判しない訳にはいかず、亀裂の修復が上手く行っていないというのが実情です。

そんな中、トランプ氏がイラク戦争で息子を亡くしたイスラム教徒の夫婦を侮辱したとして問題に。その結果、8月8日には1970年代から1990年代にかけて共和党政権で安全保障を担当した元政府高官50人が公開書簡を発表し、トランプ氏は危険だとして、トランプ氏に投票しないことを表明しました。ま
た、9日には、元政府高官2人が民主党公認候補ヒラリー・クリントン氏を支持することを表明しています。さらには、共和党穏健派のコリンズ上院議員も不支持を表明するなど、トランプ氏の周辺から離れる人が続出しています。

 

 

連邦議員は「良心的」だからトランプ不支持を表明するのか?

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このように、共和党公認候補であるトランプ氏を公然と批判する動きが出ていることについては、内外問わず様々な反響があります。とりわけ多く見られるのが、不支持表明した共和党議員らを「良心的」として賞賛することです。例えば、映画監督の想田和弘氏はtwitterで「日本の封建的価値観で「造反」とか呼ぶべきではない。アメリカでは議員がそれぞれの判断で支持や不支持を決めるのが当然。党幹部に従うだけの議員はむしろ軽蔑される。」として、不支持表明をした議員を引き合いに出しつつ、法案の賛成反対について所属政党の方針に従うことの多い日本の政治家を批判しています。
しかし、議員が所属政党の意向に反した振る舞いをするのは、その議員が「良心的」かどうかの問題なのでしょうか。意向に反した振る舞いをしない議員は「良心的」でないのでしょうか。とりわけ、今回の離反はコリンズ氏に限られた話ではありません。そうであれば、もっと根本的な要因があるのではないでしょうか。日米の制度の面から少し考えてみましょう。

 

 

総理大臣と大統領は大きく異なる

まず重要なのは、議員が行政のリーダー(首相や大統領)と一体となって行動することがどれだけ期待されているかという問題です。その鍵を握るのが、大統領制か議院内閣制かという問題です。

アメリカが採用する大統領制では、行政のリーダーである大統領を有権者が直接選挙によって選びます。一方で、立法を担当する連邦議員は、それとは別の議会選挙によって選ばれます。このように、大統領制では、大統領と連邦議会議員は異なる選挙によって選ばれるため、その正当性の根拠が異なります。
一方で、日本が採用する議院内閣制では、行政のリーダーである首相は、衆議院の選挙が終わった直後に、国会議員の投票によって決められます。その国会議員は選挙によって有権者に選ばれます。つまり、有権者が国会議員を選び、その国会議員が首相を選ぶわけです。衆議院選挙が本来国会議員を決める選挙でありながら政権選択の選挙と言われるのはこうした理由によります。議院内閣制のもとでは、首相と国会議員は同じ選挙で選ばれるため、その正当性の根拠は同じだという訳です。

つまり、制度的には、大統領制では議員と大統領は明確に分かれている一方、議院内閣制では議員と首相が一体となることがある程度想定されています。このことが、アメリカの議員を「良心的」にすることを可能にする一方、日本の議員を「良心的」であることを難しくしていると言えます。

 

 

公認候補を誰が決めるか 予備選と党執行部

そして、アメリカと日本で決定的に違う点がもう一つあります。それは、「党執行部がどれだけ偉いか」という問題です。アメリカでは連邦議員の政党公認候補は、大統領選と同様に予備選挙で決定します。つまり、有権者が候補を直接決めるということです。そのため、政党のリーダーは候補にしたい人を応援することはできても、公認する権限は持たない訳です。その結果、仮に議員が党執行部の意向とは異なる振る舞いをしても、公認を得られるということは当然あります。議員が党執行部に従うモチベーションは高くないと言って良いでしょう。
一方、日本ではどうでしょうか。日本では、自民党にしろ民進党にしろ、公認候補はほぼ全て党執行部が決定します。このプロセスに有権者が関わることは基本的にはありません。そのため、党執行部に認められるかどうかは、所属議員にとって死活的に重要になります。有権者に気に入られる振る舞いをしても、それが党執行部の納得を得るものでなければ、公認は得られません。公認を得られなければ日本の選挙ではなかなか勝てません。そのため、議員が党執行部に従うモチベーションは高いと言ってよいでしょう。
つまり、議員候補者選定において、予備選を行うアメリカでは党執行部に従わなくても公認を獲得できる一方、党執行部が決める日本では党執行部に従わなければ公認は獲得しにくくなります。このこともまた、アメリカの議員を「良心的」にすることを可能にする一方、日本の議員を「良心的」であることを難しくしていると言えます。

 

 

制度をどうアレンジするか 何が一番大事か

このように、日本とアメリカでは、「良心的」に振舞えるかを決める制度が大きく違います。つまり、アメリカのような制度を採用すれば、日本の政治家もある程度は「良心的」になれると言って良いでしょう。
しかし、忘れてはならないのは、日本の制度にも長所があるということです。それは、議事進行の効率性です。日本や同じような制度のイギリスでは、首相と与党が一体となって立法作業を行います。そのため、法案の議会の通過が速くなることが期待されます。一方、アメリカではそうは行きません。オバマ政権を見ればわかるように、オバマ個人が通したい法案であっても、まずは所属する民主党で賛成票を集めなければなりません。民主党議員はオバマ大統領と同じ意見である必要は全くないわけですから、当然賛成・反対の交渉は厳しいものになります。時には、民主党議員が賛成してくれなくても共和党議員が賛成してくれるということもあります。このように、アメリカの制度は効率性を犠牲にしている部分があります。アメリカでTPPの議論が一向に進まないのはこういう背景があるわけです。

以上のように、ある制度を選ぶということは、何かを優先するということです。ざっくり言えば、日本では法案審議の効率性、アメリカでは議員の自律性を優先させていると言って良いでしょう。当然、どちらがいいか悪いかという話ではありません。日本では安保法案が思いの外あっさり通過したことに批判的な声が上がっている一方、アメリカでは銃規制の法律が一向に成立しないことに批判的な声が上がっています。私たちも制度の良し悪しについてじっくり考えたいものです。

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2023年に年間1億PVを突破した国内最大級の政治・選挙ポータルサイト「選挙ドットコム」を運営しています。元地方議員、元選挙プランナー、大手メディアのニュースサイト制作・編集、地方選挙に関する専門紙記者など様々な経験を持つ『選挙好き』な変わった人々が、『選挙をもっとオモシロク』を合言葉に、選挙や政治家に関連するニュース、コラム、インタビューなど、様々なコンテンツを発信していきます。

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