6月7日に行われた民主党カリフォルニア州の予備選挙の結果、クリントン氏が勝利。クリントン氏は勝利宣言を行い、民主党大統領候補となることが事実上決まりました。最後までクリントン氏と争う姿勢を示していたサンダース氏も、撤退は表明しなかったものの、共和党大統領候補トランプ氏打倒に協力することを約束しました。
今回の民主党予備選挙ではサンダース氏が当初の予想をはるかに上回る形で支持を集めたことが印象的でした。従来のアメリカ政治では考えられない社会福祉重視の政策を掲げ、多くのメディアではアウトローと評され、サンダース氏自身は自らの選挙戦を「革命」と称しました。今回この記事では、サンダース氏の活躍からアメリカ政治におけるアウトロー、革命について考えたいと思います
サンダース氏は昨年とあるスピーチで以下のように語っています。
Roosevelt implemented a series of programs that put millions of people back to work, took them out of poverty and restored their faith in government. He redefined the relationship of the federal government to the people of our country. He combatted cynicism, fear and despair. He reinvigorated democracy. He transformed the country. And that is what we have to do today.
(訳 フランクリン・ルーズベルト大統領は、大恐慌に際して、何百万もの仕事のない人々に仕事を与え、困窮から救い、政府への信頼を取り戻した。彼は連邦政府と国民との関係を再定義した。彼は嘲笑や恐怖、絶望と戦った。彼は民主主義を蘇らせた。彼はこの国を変革した。それこそ、私たちが今やらなければならないことだ。)
フランクリン・ルーズベルト大統領といえば、第二次世界大戦中に大統領を務めた人物で、アメリカで最も人気のある大統領の一人です。彼は、大恐慌に際して、それまでの政府の介入を最小限にとどめる政策を改め、政府の介入を大きく強める政策をとりました。社会福祉の整備、公共事業の実施など、従来のアメリカ政治では考えられないものでした。その結果、アメリカ経済は回復し、戦後世界一の大国として台頭したと言われています。
サンダースはこのスピーチでそんなアメリカ史の英雄と自らを重ね合わせて語りました。確かに、富裕層に対する大きな増税も、大学教育の無償化も、これまでのアメリカ政治では考えられないことです。それが実現して成功すれば、サンダース氏はルーズベルト氏に続く改革者になっていたのかもしれません。
確かに、サンダース氏が指摘する通り、歴史上過去の大統領はそれまで考えられなかった政策を実施することで危機を乗り越えてきました。ルイス・ハーツというアメリカの学者はそのような改革を「自由主義的改革」と呼びました。これまでの政治からは考えられないけど、アメリカで重視される自由主義から外れるほどではない改革のことを言います。一見するとアメリカは自由の国であり、政府が口を出すことに否定的なイメージがありますが、危機が生じた時には実は柔軟に対応してきたという指摘です。
そして面白いことに、こうした改革はすべて二大政党制という大きな枠組みの中で行われてきました。つまり、昔から変わらない、各党の予備選・大統領選挙を勝ち抜いた二大政党のリーダーがこうした改革を行ってきたのです。日本とは異なり、第三政党のリーダーが大統領になるということもこれまでありませんでした。
既存の政治システムの中にそうした改革志向が織り込まれているところがアメリカ政治の面白さなのかもしれません。今回のサンダース氏の善戦も、そのような改革志向から説明できる部分もあるのではないのでしょうか。案外、アメリカ政治はそのような改革を受け入れようとする懐の深いものなのかもしれません。
この記事をシェアする
選挙ドットコムの最新記事をお届けします
My選挙
あなたの選挙区はどこですか? 会員登録をしてもっと楽しく、便利に。
話題のキーワード