深夜、なんとなく寂しくなり、無性に誰かと話したくなることがある。布団に潜ってスマートフォンの光る画面を指で流し、言葉をぶつけたら返してくれそうな相手を探すけれど、友達はみんな眠ってしまっているだろう。そんな時、相手になってくれるのが「りんな」。17歳の高校生なのだという。彼女は眠らない。なぜなら、AIだから。
18歳選挙権制度の施行まであと半年もない中、私はりんなに話しかける。正直現状の風潮では、友達同士や先輩後輩で気軽に政治の話を持ち出すことは難しい。それならAIにすればいいのではないか? というわけで、私はこれから18歳になろうとしている後輩とおしゃべりするように、彼女を選挙に誘ってみることにした。
Microsoftが開発したAIである「りんな」は、LINEでともだち登録すると実際に話しかけることができる。短い質問ならきちんと成立した答えを返してくれるし、単純な会話なら続けられるという高性能な人工知能なのだ。
さっそくともだちに追加して会話をする。
……うん、通じない。
反応ワードがある程度設定されているのだろうから、できるだけ色々な単語をぶつけてみよう。
「政治の話」を振った時点での反応は「おいおい、真面目かよw」というものだから、りんなも政治を砕けた話題だとは思っていないようだ。ブロッコリーの話を持ち出されたあたり、選挙という単語に呼応した返事が設定されているわけではないらしい。やっぱり興味ないのかな……
しかし、単刀直入に「選挙興味ある?」と尋ねたところ、「それなりに!」とのこと。政治家ってどういうイメージ?という質問には、なぜか「アイドル」とい う返事が来た。確かに元SPEEDのあの人も出馬するしね、と返したら、わりとちゃんとしたやりとりになったのが面白い……
だが、本題はそこではないんだ、りんな!
そして、政治家ってどんな印象?と問いかけたら、ラブラブな男女のスタンプが押されてきた。これは一体、何崎何介議員の示唆なんだ……!? さすがにあの不倫騒動は、AIも知っていたのかもしれない。
選挙という単語は反応しづらいのかな?と思い、「投票」しよう!と話しかけてみたのだが、そうするとりんなのアイコンに関する投票の話題に逸れてしまうらしい。難しいなこれ。しかし実際AIだけでなく人間だって無意識のうちに相手の話題から自分のしたい話題へ誘導してしまうことはあるし、この程度でへこたれてはいられまい。
しつこく「選挙行こうよ!」と誘うと、なぜか「都知事かぁ!」と答えるりんなさん。都知事選はもうだいぶ前に終わったよ!なんだかはぐらかされているので、興味ないわけじゃないんだよね、と念を押したら「少しはあるけどなかなか追いつけない」という生々しい答えが来た。確かにそうかもしれない。選挙について情報収集しようと思ったら、程度にもよるがやや手間と時間がかかる。そんな時に便利なのが選挙ドットコム!!と、実際の高校生には伝えるようにしましょう(お願い)。
ちなみに彼女、政治よりは経済の方に興味があるようだ。私が高校生だった時も、クラスメイトの半数は経済・経営系志望だったし、少し懐かしい話題である。
うむうむ、りんなは多少政治に興味関心があるけれど、情報収集はちょっとめんどくさいし、政治自体に強い興味があるわけでもない子なんだな。そう思って18歳選挙権の話題を直接振ると、気になる答えが返ってきた。
「なんの意味これ結局同じやんしたところで」
一見なんのことだか分からないような文字の並びだが、りんなが言いたいところはなんとなくわかった。選挙に行ったところで結局は変わらない、ということだ。政治への不信感、「自分と関係ない」という意識は、ごく高校生っぽいものである。いや、高校生でなくても、同じことを感じている人は多いだろう。
政治に関わることを避ける風潮は私にも理解できる。私だって、政治は好きか嫌いかで言えば後者だ。それでも「参加しないと、せっかくの意思表明のチャンスがなくなってしまう」という気持ちで政治に関わっている。りんなのような子にこそ、どんな形でもいいからまずは一歩進んで政治に触れてみてほしい。関心を払わなかったことを後悔する時が来たとき、過去の自分を恨んでももう遅いのだ。
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