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60年総選挙は自民党の圧勝、勝因は?(1960年安保と2015年安保②)

2015/9/19

今井亮佑

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1960年総選挙

首相官邸ホームページより

首相官邸ホームページより

7月に行われた総裁選挙で勝利し首相の座に就いた池田勇人は、「寛容と忍耐」をキャッチフレーズに、前任者とは打って変わって、低姿勢で政権運営に臨んだ。そして、国民の視線を、「対立争点」である政治・外交から「合意争点」である経済・内政へとシフトさせることで、自民党政権に対する国民の安定した支持を取り戻そうとした。いわゆる「チェンジ・オヴ・ペース」である。

信を問う必要があると考えた池田首相は、安保闘争のほとぼりが冷めた頃合いを見計らい、10月に衆議院を解散した。11月20日投票の第29回総選挙で、自民党は大勝する。解散時を13上回る296(選挙後の追加公認を含めて300)議席を獲得したのである(その他、各党の獲得議席数は次のとおりである。社会党145(解散時122)、民社党17(40)、共産党3、諸派・無所属6(計467))。

自民党の勝因

あれだけ激しい安保改定反対の闘争が繰り広げられた後にもかかわらず、1960年総選挙で自民党が大勝を収めることができたのはなぜか。重要なポイントは次の3つである。

第1に、行われたのが参院選ではなく総選挙であったということである。総選挙は第一院の選挙であり、政権選択の意味を持つ。国会内外での安保反対闘争を主導した社会党を中心とする野党が総選挙で勝利すれば、政権交代が起こる。しかし、当時の多くの国民は、自民党以外の政党に政権担当能力を認めていなかった。このため、総選挙後にどの政党が政権を担当するかを考慮に入れて、野党への投票に二の足を踏んだ有権者が多くいたと考えられる。

第2に、一点目とも関連するが、衆議院の選挙制度としていわゆる「中選挙区制」が採用されていたということである。中選挙区制とは、1つの選挙区に3から5の定数を割り振る選挙制度のことである(1960年総選挙時は、1人区(奄美群島区)が1、3人区が40、4人区が39、5人区が38)。この制度の下では、衆議院の過半数議席の獲得、単独での政権担当を目指す政党(自民党)は、1つの選挙区に複数の候補者を擁立し、複数の当選者を出す必要があった。同じ選挙区に自民党の公認を受けた複数の候補者が出馬する場合、所属政党のラベルや掲げる政策によって差別化を図ることができないため、自民党の各候補者は、地元への利益誘導や個人後援会組織の維持拡大によって、「候補者本位」の選挙を展開することで、他の自民党候補との「同士討ち」を勝ち抜こうとした。このため、政策争点が有権者の投票行動に及ぼす影響の度合いが中選挙区制下では相対的に小さかったのである。

第3に,岸から池田への交代がいわゆる「擬似政権交代」として機能したということである。憲法を改正して自衛軍を創設し、ゆくゆくは対米自立を果たすことを旨とする岸と、現行憲法の下で必要最小限度の軍備にとどめ、日本の防衛は日米安保条約に委ねる、そうすることで何よりも経済成長を実現することを重視するという吉田茂流の考え方に立つ池田とは、政治信条が大きく異なる。このため、岸から池田への首相の交代は、政権を担当する政党が自民党のままであるため文字通りの政権交代ではないものの、政策的立場・政策目標の大転換を伴うため、擬似的ではあるものの政権交代の意味を持った。そのことが、安保反対闘争を通じて離れた国民の支持を自民党が取り戻すことに寄与したのである。

これらの点は、安全保障関連法案(成立)後に迎える国政選挙を考える上で貴重な示唆を与える。

>> 2016年参院選はどうなる?(1960年安保と2015年安保③)へ続く

 

 

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今井亮佑

1977年京都府生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。現在早稲田大学現代政治経済研究所主任研究員。主な論文に「国政選挙のサイクルと政権交代」(『レヴァイアサン』第47号)、「選挙動員と投票参加―2007年〈亥年〉の参院選の分析」(『日本選挙学会年報 選挙研究』第25巻第1号)など。

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