さとう しゅういち ブログ
沖縄──東シナ海周辺で最も低い所得の現実と、新知事が直面する“険しい道”
2026/9/15
沖縄──東シナ海周辺で最も低い所得の現実と、新知事が直面する“険しい道”
沖縄県の一人当たり県民所得は全国最下位であり、東シナ海を囲む主要地域と比較しても最も低い水準にある。台湾や上海はもちろん、九州本土と比べても大きな差がある。この「構造的な低所得」は、観光依存と基地依存が重なる沖縄経済の脆弱性を示すものであり、県民が生活不安を強く抱く背景となっている。今回の沖縄県知事選挙で古謝玄太氏が大差で初当選したのは、こうした生活不安に真正面から応えようとした点が県民の支持を集めたためだ。古謝氏が掲げた「所得倍増」は、県民の切実な願いを象徴する政策である。しかし、沖縄の財政構造は国庫依存度が高く、産業基盤も観光と基地に偏っている。所得倍増の実現には、国の大規模な予算措置と産業構造の転換が不可欠であり、県単独で達成できる領域は限られる。道のりは険しいと言わざるを得ない。
一方、前知事の玉城デニー氏は、辺野古移設という象徴的な争点に比重が寄りすぎた結果、物価高や所得、子育て支援といった生活争点での訴求力が弱く見えた。
辺野古での転覆事故をめぐる一部運動団体の不適切な対応が県政全体の信頼に影響したことも否めない。また、県外からのネット攻撃が過熱し、陣営の対応が後手に回った点も今回の選挙戦に影を落とした。ネット上の誹謗中傷は象徴争点と結びつくと一気に燃え広がる。反論すれば火に油を注ぐだけであり、必要なのは感情ではなく証拠で処理する司法的対処である。広島県議選2023で筆者が経験したように、発信者情報開示請求から損害賠償請求へと進む法的ルートは全国共通で使える。沖縄の政治環境こそ、こうした手続きの体系化が求められる。
今回の選挙は、象徴的な争点(辺野古)と生活争点(所得・物価・子育て)の比重が大きく揺れ動いた選挙だった。基地整理縮小という生活争点では両候補の方向性は近く、県民が求めたのは象徴ではなく生活の安定だった。新知事は、象徴争点の熱量に引きずられることなく、沖縄の低所得という構造的現実を直視し、制度的現実に根ざした政策運営を進めるべきである。
さとう しゅういち
サトウ シュウイチ/50歳/男