さとう しゅういち ブログ
特集:ブレグジットの二重のオウンゴール ──“最強の特権”を捨て、移民構造を逆転させた英...
2026/5/13
🇬🇧 特集:ブレグジットの二重のオウンゴール
──“最強の特権”を捨て、移民構造を逆転させた英国の迷走
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■ 1. EUにいながら「財政出動も通貨主権も維持」できた英国
ブレグジット前の英国は、EU加盟国の中でも極めて特異な“特権ポジション”にいた。
- ユーロ非参加(ポンド維持)
- 財政規律の縛りが緩い
- 単一市場へのフルアクセス
- 金融サービス(シティ)の特権的地位
つまり英国は、
「EUのメリットだけ享受し、デメリットは回避する」
という、他国が羨む“最高の座”にいた。
それを国民投票で自ら捨てた。
これが第一のオウンゴールである。
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■ 2. ブレグジットの逆転現象:EU移民が減り、非EU移民が爆増
EU離脱の最大の理由は「移民を減らす」だった。
しかし、離脱後に起きたのは真逆の現象だ。
- EU市民 → 激減
- 非EU(インド・ナイジェリア・中東・アフリカ) → 過去最大規模に増加
- 総移民数 → 史上最高レベル
英国はEU離脱後、移民制度をポイント制に一本化したが、
労働力不足を補うために非EU移民の受け入れを拡大せざるを得なかった。
> EUを出て欧州人が来なくなり、代わりにより遠い地域からの移民が増えた。
> これは制度が生んだ“構造的逆流”である。
これが第二のオウンゴール。
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■ 3. なぜ逆転現象が起きたのか:英国経済は移民なしで回らない
英国の労働市場は、すでに移民依存が深く根付いている。
- 介護職の40%以上が外国人
- NHSはインド・ナイジェリア・フィリピン人材に依存
- 農業・物流・建設はEU離脱後に深刻な人手不足
移民を減らせば経済が止まり、
移民を増やせば支持層が怒る。
この矛盾が、英国政治の“詰み”を生んでいる。
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■ 4. Reform UKが政権を取っても、同じオウンゴールの罠
Reform UKは「移民削減」「国境管理」を掲げるが、
英国経済の構造はそれを許さない。
- 移民を減らす → 労働力不足で経済が崩れる
- 移民を増やす → 支持層が裏切られ、政権が崩れる
つまり、
どちらを選んでもオウンゴールになる構造がすでに出来上がっている。
ブレグジットの失敗は、
Reform UKが政権を取っても再現される可能性が高い。
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■ 5. なぜ英国は“自分で良いポジションを捨てる”のか
背景には、英国特有の歴史的・心理的要因がある。
- 島国意識:地理的には近い欧州を心理的には“外”と見なす
- 帝国の記憶:「英国は特別」という感覚
- タブロイド紙のEU敵視報道
- 政治家の短期的ポピュリズム
合理的判断より、
感情的なナショナリズムが優先される政治文化が、
ブレグジットの決断を後押しした。
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■ 6. 結論:英国は「二重のオウンゴール」を抱えたまま進む
あなたの指摘を総合すると、英国は次の二つのオウンゴールを抱えている。
● オウンゴール①
EUにいながら財政出動も通貨主権も維持できた“最強の特権”を自ら放棄
● オウンゴール②
EU移民を減らした結果、非EU移民が爆増し、総移民数は過去最大に
そして今、
Reform UKが政権を取ったとしても、
同じ構造的矛盾により、再びオウンゴールする可能性が高い。
英国は、
「移民を減らしたい国民」と
「移民が必要な経済」の板挟みで、
抜け出せない迷路に入り込んでいる。
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さとう しゅういち
サトウ シュウイチ/50歳/男