さとう しゅういち ブログ
NPT再検討会議開幕──核大国の二重基準と“平和利用”の限界を直視せよ
2026/4/27
広島瀬戸内新聞・社説
NPT再検討会議開幕──核大国の二重基準と“平和利用”の限界を直視せよ
本日、核不拡散条約(NPT)再検討会議が開幕する。
しかし、国際秩序が揺らぎ、核大国が自らの都合で条約を踏みにじる現状の中で、会議は極めて厳しい環境に置かれている。
NPTの信頼性そのものが問われる会議である。
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◆ 核大国の二重基準が条約を空洞化させる
NPTは「核軍縮」「不拡散」「平和利用」の三本柱を掲げる。
だが現実には、核大国の恣意的な運用が条約の根幹を揺るがしている。
米国はNPT加盟国であるイランには強硬姿勢をとる一方、条約外で核保有するイスラエルや北朝鮮には実効的な圧力をかけられていない。
ロシアは核威嚇を伴うウクライナ侵攻を続け、国際社会はこれを十分に抑止できていない。
「加盟国には厳しく、枠外の核保有国には甘い」という二重基準は、非核国に不信を植え付け、核保有の誘惑をむしろ高める。
NPT体制の空洞化は、すでに危険域に達している。
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◆ 欧州の不安がフランスの核軍拡を招く
米ロ間の新START失効により、世界最大の核保有国同士を縛る枠組みは消滅した。
その結果、欧州では安全保障不安が高まり、フランスが核戦力の増強を表明するなど、核依存の逆流が起きている。
核軍縮を義務づけるNPTの理念に逆行する動きであり、今回の会議でも大きな火種となるだろう。
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◆ 唯一の戦争核使用国としての米国に求められる姿勢
米国は、世界で唯一、戦争で核兵器を使用した国である。
ヒロシマとナガサキの惨禍は、核兵器の非人道性を示す決定的証拠だ。
だからこそ、米国が核の先制不使用(No First Use)を明確に掲げることは、国際的な核リスクを下げるうえで大きな意味を持つ。
核大国が率先して行動しなければ、NPTの信頼は回復しない。
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◆ 原発攻撃の頻発──「平和利用」の前提が崩れている
ウクライナでは原発が攻撃の対象となり、世界は「原子力施設が戦争の標的になる」という現実を目の当たりにした。
これは、NPTが掲げる「核の平和利用」の前提を根底から揺るがす。
核と人類は本当に共存できるのか。
この問いを、被爆地ヒロシマを持つ日本が国際社会に突きつけることには大きな意義がある。
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◆ 国家だけに任せない──広島・長崎が担う市民外交
日本政府は安全保障条約や外交上の制約から、国際会議で踏み込んだ主張を行いにくい局面があると指摘されている。
その一方で、広島・長崎が主導する平和首長会議(Mayors for Peace)には世界8,000を超える自治体が参加し、国境を越えた市民社会のネットワークが広がっていると報じられている。
国家間外交が停滞する時代にこそ、自治体と市民の「横のつながり」が重要性を増す。
被爆地の都市が、
- 核兵器の非人道性
- 原発攻撃の危険性
- 先制不使用を含む核リスク低減の必要性
- 核と人類の共存可能性という根源的問い
を国際社会に継続的に発信することは、国家の立場とは別の次元で国際議論を動かす力を持つ。
ヒロシマとナガサキは、核の惨禍を知る都市として、政府だけに任せず、市民と自治体が主体となって世界とつながり、声を上げ続ける責務を負っている。
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◆ 結び──ヒロシマから世界へ
NPTは半世紀以上、核拡散を抑える役割を果たしてきた。
しかし今、核大国の暴走と国際緊張の高まりによって、制度そのものが崩壊の瀬戸際にある。
ヒロシマは沈黙してはならない。
被爆地からの声こそが、揺らぐ国際秩序の中で、核なき未来への道しるべとなる。
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さとう しゅういち
サトウ シュウイチ/50歳/男