2026/7/21
消費減税、自民に慎重論-財源不透明、議論不足:「財源が不透明だ」「党内の議論が足りない」。食料品の消費税減税に対し、自民党の要職経験者から相次ぐ慎重論である。だが、この理屈は数字に照らせば成り立たない。
〇減税規模は「巨額」ではない
対象は酒類と外食を除く飲食料品、すなわち現行の軽減税率8%が適用される品目に限られる。減税額は五兆円弱に過ぎない。一般会計の税収が84兆円規模、歳出が115兆円規模に達する国家財政において、5兆円弱は全体の数%にすぎない。恒久ではなく2年間の時限措置なら、総額でも10兆円程度にとどまる。
しかもこの減税は、一般世帯に年約8.8万円の負担軽減をもたらす。物価高で最も重くのしかかるのは食費であり、その還元は逆進性の緩和という点でも筋が通る。
〇「代替財源」という発想がそもそも倒錯している
減税に代替財源を云々する前提自体が誤っている。2025年度の国の一般会計税収は84兆2226億円、6年連続で過去最高を更新した。前年度から約9兆円もの大幅増である。しかも年末の見込みからの上振れだけで約3.5兆円、使い残しと合わせた決算剰余金は2兆6088億円、赤字国債は3兆円分の発行を取りやめている。法人税に至っては前年比21.4%増と、バブル期の1989年度を超え、36年ぶりの過去最高となった。
つまり、想定を超える自然増収が毎年数兆円規模で発生しているのが実態だ。食料品減税の約5兆円は、この上振れと剰余の範囲で吸収できる。増税や歳出削減で新たな「財源」をひねり出す必要など、どこにもない。
景気が過熱し、需要超過でインフレを煽る局面ならいざ知らず、コストプッシュの物価高で家計が疲弊している今、取りすぎた税を還元するのは、むしろ当然の政策判断である。
〇「議論不足」は減税を止める理由にならない
食料品の消費税減税は、2月の衆院選で自民党自身が公約に掲げたものであり、高市首相は「私自身の悲願」と訴え、2026年度中の実現を目指すと明言して有権者の信を問うた。選挙こそ、あらゆる党内手続きに優越する最大の「議論」である。それを経た公約を、税調の調整が難航しているという内向きの事情で先送りするなら、それは有権者への背信にほかならない。森山前幹事長は「財源なき減税は市場に大きな影響を与える」と述べた。だが、5兆円弱の時限減税で長期金利が制御不能に陥るという根拠は乏しい。むしろ、明確な公約を反故にすることの方が、政治への信認を深く損なうのではないか。
〇外食との税率差は「やらない理由」ではない
食料品と外食は本来別の財である。外食はただ食べるだけではなく、立地、サービス、雰囲気を消費するものであり、単に食料品と直接比較すること自体、外食産業の存在意義を否定するものではないか。
食料品に限った消費減税は年5兆円弱。税収が毎年数兆円も上振れる現状において、代替財源など不要である。衆議院選挙の公約である以上、直ちに決定し、実行に移すべきだ。いや、2年間の時限措置にとどめるのではなく、恒久減税への道筋を描くことこそ本筋であろう。輸入エネルギー価格高に苦しむ家計への還元を、これ以上先送りする理由は、どこにもない。

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