2026/6/3
この春の佐賀県武雄市議会議員選挙戦。マイクを握り、武雄の街を駆け回り、有権者と語り合う候補者たちの姿があった。
あの熱気から2ヶ月。いよいよ武雄市議会の6月定例会が開会した。
定数20で新人5名当選、議会に新しい風が吹くのか、注目が集まる。
そして、新しく議席を得た新人議員にとって、市民の声を市政に届ける最初の公式な舞台。それが一般質問である。
一般質問とは、議員が市長や執行部に対し、市政の課題や政策の方向性を質す場である。議員が何を問題と考え、何に取り組もうとしているのか。市民にとっても、その姿勢が見えやすい機会となる。
ところが、今回の質問通告一覧を眺めていて、ふと手が止まった。
新人の中原賢智議員(42歳)と川口真砂雄議員(54歳)の2名の名前が見当たらない。
今回は質問に立たないようである。
20代から地方議員を経験し、現在は某自治体で首長を務める友人は、こう話していた。
「初当選直後の一般質問は、新人議員にとってのデビュー戦。有権者や行政に対し、その議員が何を考え、何を重視しているのかを示す最初の機会でもある。その機会を自ら放棄するとは残念だし、正直理解できない。有権者から何のために議員になったのか、と問われかねない」
たしかに、一般質問は自分に一票を投じてくれた有権者に対し、そして選挙で汗を流してくれた支援者に対し、「私は議員として、こういう問題に向き合う」と行動で示す場でもある。
もちろん、一般質問に立たないことだけをもって、議員活動のすべてを評価することはできない。
委員会での審査、地域での聞き取り、行政との調整など、表に見えにくい仕事もある。
ただ、今回一般質問を見送った2人は日頃からSNS等で市政や政策に関する発信を積極的に行っている様子もほぼ見ない。
議場でも語らず、日常の場での発信も見えづらい。
そうなると、有権者や支援者は、彼らが今、何を考え、何のために活動しているのかを知る手がかりを持ちにくくなる。
長く地方政治の現場を見てきた立場からすると、ここには率直に違和感を覚える。
選挙に立候補するということは、本来、現在の市政に対して言いたいこと、変えたいことがあるからこその決断だったはずである。
選挙期間中、何百、何千という市民と握手を交わし、地域の課題や願いを直接聞いてきたはずである。
その声は、どこでどう市政に届けられるのだろうか。
また、武雄市は5年で30億円の財源不足という状況にも関わらず、武雄市議会議員には月額41万円の報酬が支払われている。期末手当を含めれば年間約650万円。4年間の任期中に1人2,600万円が払われる。さらに調査研究のための政務活動費が年額20万円、議会や委員会への出席には1日1,800円の費用弁償も支給される。
有権者から託された一票。
税金で賄われる報酬。
そして4年間という限られた任期。
その時間は、当選した翌日からすでに始まっている。
地域で聞いたはずの声。選挙戦で託されたはずの思い。
それは、いつ、どこで、どのように市政へ届けられるのか。
新人議員の初陣だからこそ、そこを見たいと思っていた市民も少なくなかったのではないか。


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