2026/5/5
武雄アジア大学の閉校と補助金13億円の返還を求める署名6,188筆の提出は、奇しくも武雄市役所の現状を確認する場になった。
5月1日の署名提出、場所は武雄市役所4階の応接室だった。
昨年夏に「武雄の未来を守る会」が武雄アジア大学への補助金13億円を市民が求める事業に使うことを求める署名を提出した際は、担当課のカウンター越しに担当者が受け取るという、いわば単なる「受領」に近い対応であった。この点については、今回の武雄市の対応は以前より丁寧であったと感じた。仲介にあたり、お骨折りいただいた朝長勇市議のご尽力もあった。感謝申し上げたい。
ただし、問題はその後である。
署名簿を提出した後、短い意見交換の時間があった。
冒頭、朝長勇議員からは、武雄アジア大学の大幅な定員割れが現実のものとなり、市民の間にも心配や懸念がさらに広がっていること、そして武雄市の説明が市民の意識(知りたいこと)とズレていることが指摘された。
これに対し、庭木淳副市長は「市としても説明を尽くすとともに、来年度は定員を充足するよう武雄アジア大学に求めている」という趣旨の回答をされた。
これは過日、小松政市長が記者会見で述べた内容とほぼ同じである。つまり、「学生募集はあくまで武雄アジア大学の責任である。市は説明を尽くす。大学には来年度の定員充足を求める」というお決まりの論法。
しかし、13億円もの補助金を支出した自治体として、それで済むのだろうか。
大学誘致を進めた責任。
公費投入を決めた責任。
学生確保の見通しをどう検証したのかという責任。
それらを大学側の学生募集責任へと切り分けてしまう。私はここに、武雄市の「切り離しロジック」を感じた。
そこで、ひとつ確認のための投げかけをしてみた。
「4月30日の読売新聞1面の記事は読まれましたか」
4月30日付の読売新聞1面には、「私立大学250校削減案、財務省が2040年目標」という記事が掲載されていた。少子化が進む中、私立大学の統廃合や定員削減をどう進めるのか。特に、定員割れが目立つ地方私大の廃校、休校、募集停止がクローズアップされた記事である。大学関係者の間では今もなお大きな話題になっている。
ところが、庭木副市長も松尾謙一企画部長も、回答はこうであった。
「あいにく読んでおりません」
正直、驚いた。武雄市は大学誘致を進め、13億円を補助し、その大学が開学初年度から定員140人に対して入学者37人という大幅な定員割れを起こしている自治体である。しかも、今まさに国では、私立大学の規模縮小、統廃合、募集停止が議論されている。この状況で、大学誘致を担当する副市長と企画部長が、当該分野で大きな意味を持つ読売新聞1面の記事に目を通していない。
これは小さな話ではない。
さらに、もうひとつ大事なことを確認してみた。
「文部科学省の内部で、武雄アジア大学の大幅定員割れが今現在どのように見られているか、ご存じですか」
庭木副市長も松尾企画部長も、答えは同じであった。
「存じ上げません」
これにも、かなり驚いた。
松本洋平文部科学大臣が4月3日の記者会見で、武雄アジア大学を名指ししたうえで、設置計画に定めた定員を集める責任を大学として果たせなかったことについて「文部科学省として大変遺憾である」と述べている。さらに、「設置計画の履行状況を調査し、必要に応じて入学者数の実績に応じた定員規模とするよう厳しく指導する」、「必要に応じて計画の見直しを求める。経営改善が必要な状況に陥った場合には経営指導の対象法人として集中的に指導する」とまで明言している。
新設大学が、開学直後に文部科学大臣の記者会見で名指し「遺憾」とされる。
それだけでも異例である。まして、定員規模の見直しや経営指導にまで言及される。異例中の異例である。
さらに、私が把握している限り、文科省の最高幹部の間では、武雄アジア大学の大幅定員割れが明らかになって以降、「旭学園に僅かでも財政的な余力があり、初年度入学者に影響が出ないうちに、(募集停止を含めて)一定の結論を出させる」という認識に立っていると伺っている。
そして、この重要情報は、武雄市内在住の有識者の方を通じて、小松政市長にも伝わっている(この点も確認済)。
ところが、5月1日の意見交換の場で、庭木副市長と松尾企画部長は、その認識について「存じ上げません」と答えた。
ここで問題になるのは、単に読売新聞を読んでいなかった、文科省内の認識を知らなかった、ということだけではない。
市長に伝わっている重要情報が、大学誘致を担当する副市長や企画部長に共有されていない。共有されていないのだとすれば、武雄市役所の情報共有はどうなっているのか。仮に共有されているにもかかわらず、この場で「存じ上げません」と答えたのだとすれば、それはそれで住民に対する説明姿勢として問題である。
どちらにしても、事態は深刻だ。短い意見交換の中身を振り返る限り、武雄市役所がこの問題の重大性を本当に把握しているのか、強い疑問を抱かざるを得なかった。
武雄市民の多くが武雄アジア大学や武雄市に対して抱く不安や懸念は、感情的なものではない。むしろ、市民のほうが現実を見ている。
定員140人に対して入学者37人(定員充足率26%)、武雄市から13億円、佐賀県から6.5億円、合計19.5億円もの公費が投じられた大学が、開学初年度からこの状況にある。にもかかわらず、市はなお「来年度の定員充足を求める」「説明を尽くす」「学生確保は大学側が行う」と繰り返すのみ。
この説明で、市民が納得するはずがない。
小松政市長は、ご自身が仰るところの「大学を誘致した責任」をどうお取りになるのだろうか。








この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>こんどう けんじ (コンドウ ケンジ)>武雄アジア大学の閉校と補助金13億円の返還を求める署名6,188筆の提出は、奇しくも武雄市役所...