2026/7/29
2024年6月、ヤングケアラーが法律上初めて定義されてから2年が経ちました。
板橋区でもNPOカタリバとの連携など支援体制は前進しましたが、法律の定義に潜む「過度に」という言葉の壁、そして区独自の条例・指針が存在しないという課題が残っています。連載第4回では、法制度の現在地と、板橋区が次に取るべき一手を考えます。
2024年6月5日、国会で子ども・若者育成支援推進法の改正案が成立し、6月12日に施行されました。改正法は、ヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と初めて定義し、国・地方公共団体等が支援に努めるべき対象として明記しました。
対象は「子ども・若者」とされ、おおむね30歳未満、状況によっては40歳未満まで支援対象に含まれます。18歳を過ぎても切れ目のない支援が続けられるようにしたことが、この改正の大きな特徴です。
これにより、相談・助言・指導や医療・療養支援など、国と自治体がヤングケアラーへの支援を行う努力義務が新たに定められました。板橋区でも令和6年度から「ヤングケアラーアドバイザー」(NPOカタリバ受託)を設置しています。これは連載第3回で詳しく報告した通りです。
一方で、この法定義には当初から懸念の声がありました。日本ケアラー連盟は、定義に「過度」という言葉が入ったことについて、周囲に気づかれていないが本人が苦痛を感じている可能性のある「要配慮レベル」の子どもが支援の対象から排除されかねないと訴えています。
こども家庭庁が示した施行通知でも、「過度に」とは子どもの健やかな成長・発達に必要な時間が奪われたり、ケアに伴う身体的・精神的負荷がかかったりして負担が重い状態を指すとしつつ、都道府県・市区町村が支援対象かどうかを判断する際は「その範囲を狭めることのないよう十分留意する」としています。
つまり法律をつくった国自身が、「過度」という言葉が支援の網を狭めてしまう危険性を認識しているのです。この線引きの難しさが、現場の判断に重くのしかかっています。
法改正を追い風に、独自の条例で支援を後押しする自治体が全国で増えています。埼玉県は2020年3月、全国で初めてケアラー支援条例を制定しました。
さらに同じ埼玉県の入間市は2022年、市区町村としては全国初となるヤングケアラーに特化した支援条例を施行し、2025年11月には制定3周年を記念する全国シンポジウムを開催しています。日本ケアラー連盟によると、この15年間で埼玉県をはじめ33の自治体がケアラー支援条例(ヤングケアラー支援を含む)を制定しました。
条例には、家庭・地域住民・関係機関それぞれの役割を明文化し、早期発見と支援の仕組みに法的な裏付けを与える効果があります。入間市の条例は、保護者や地域住民等の役割を明記し、地域全体で支える枠組みを制度化した点が特徴です。
板橋区は現在、ヤングケアラーに特化した条例や独自の支援指針を制定していません。区が公式に打ち出している取組は、ヤングケアラーアドバイザーの設置と、当事者向けの啓発動画・チラシの作成が中心です。
板橋区の「高齢者保健福祉・介護保険事業計画2026」には、高齢福祉分野に限らずヤングケアラー支援など分野別の垣根を越えた連携を図り、重層的な支援体制の構築に向けて検討を進める、との記述があります。ただしこれはあくまで検討段階の一文であり、条例や独自指針の策定を約束するものではありません。
制度の土台づくりは、まだこれからの課題だと私は考えています。
私は、板橋区にもヤングケアラー支援の理念と施策を明文化する条例、あるいは少なくとも区独自の支援指針が必要だと考えています。
アドバイザー事業や啓発動画は現場の努力として評価すべきものです。しかし担当者や予算配分が変われば、取組が細ってしまう可能性も否定できません。条例や指針という形にしておくことで、支援の継続性と財源の裏付けを担保できます。
また「過度に」という定義の運用にあたっては、板橋区が独自に、支援の対象を狭めない姿勢を明文化することが重要です。国の通知が示す「範囲を狭めない」という考え方を、区の現場マニュアルや相談基準に具体的に落とし込むべきだと、今後の議会質問でも訴えていきます。
ヤングケアラーの問題は、法律や条例だけで解決するものではありません。ですが、制度の土台がなければ、支援は担当者の熱意や年度ごとの予算状況に左右されやすくなります。
板橋区がどのような制度を選ぶのか、住民の皆さんにも関心を持っていただきたいと思います。板橋区子どもなんでも相談(0120-925-610、通話料無料、24時間365日受付)のような身近な窓口の存在も、ぜひ周囲の方に伝えてください。
もちろん、私でよろしければ話を伺います。現場からの情報提供などもありがたいです。
連載最終回では、当事者の声を軸に、板橋区が目指すべき支援の姿を提言します。
出典:
こども家庭庁「ヤングケアラー支援の強化に係る法改正の経緯・施行について」(PDF)
福祉新聞Web「ヤングケアラーを初めて定義 改正子ども・若者育成支援推進法が成立」
福祉新聞Web「ケアラー支援法制化を 15周年記念イベントで改めて決意〈日本ケアラー連盟〉」
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