本目 さよ ブログ

役所にデザインが入ると、何が変わるのか。北区の視察に行ってきました

2026/8/13

「前例踏襲」「縦割り」。役所を語るとき、あまりいい意味では使われない言葉です。でも、その役所の内側から変えようとしている自治体があると聞いて、会派のメンバーを半ば無理やり誘って、東京都北区に視察に行ってきました。わたしがどうしても行きたいと言い出して実現した視察です。

テーマは「デザイン思考の行政への導入」。実はわたし、以前からこの分野に関心があって、2024年には「Systemic Design Day」というイベントにも参加してブログに書いたことがあります(そのときの記事はこちら)。「今日の問題の多くは、昨日のソリューションから生まれている」という話が印象に残っていて、いつか実際に行政の現場でどう使われているのか見てみたいと思っていました。今回はまさにその現場の視察です。

デザイン思考って、チラシの話じゃなかった

北区は令和6年度から、区民の視点で課題を解決する「デザイン思考」を行政の実務に取り入れ始めました。担当しているのは、区長室のしごと連携課。庁内に横串を刺す(部署をまたいで調整する)役割の課です。

説明してくださった担当課長の言葉で腑に落ちたのが、「デザイン思考って、要は設計なんです」というひとことでした。デザイナーがデザインを考えるときの頭の中のプロセス、つまり「そもそもこれは誰のためのものか」から考える進め方を、行政の企画段階に持ち込む。だからファッションデザイナーでも建築家でもよくて、大事なのは新しいものを生み出すまでの考え方なんだそうです。

料理でいえば、できあがったお皿を盛りつけ直すんじゃなくて、そもそも誰に何を食べてほしいのか、というところから一緒に考えてもらう感じでしょうか。以前イベントで聞いた「対症療法が新しい問題を生む」という話が、こういうことかと現場でつながった気がしました。

「老い」を、3つの課で横断して考えた

北区が最初に選んだテーマは「老い」でした。

高齢者福祉って、介護が必要な人は介護保険課、社会参加は介護予防課、生活支援は高齢福祉課、というふうに、部署ごとに担当が分かれています。でも住民の暮らしは地続きです。「まだ介護は要らないけど、なんとなく将来が不安」という人は、どの窓口の担当でもない。制度の狭間に落ちてしまいます。

そこで北区は、この3つの課を横断するチームをつくりました。しごと連携課がハブになって、バラバラだった支援を区民の「生活」を真ん中に置いてつなぎ直したわけです。

面白かったのは、問いの立て方でした。最初は「介護人材をどう確保するか」から始まったのに、対話を重ねるうちに「そもそも50代から70代向けの取り組みって、行政に薄くないか」というところにたどり着いた。高齢者と呼ぶには早い、でも若者でもない。この世代を北区は「そろそろこれから世代」と名づけて、3日間の対話イベントを開いたそうです。

現金派だからキャッシュレスのお店に行きづらくなった、地域で活躍したいけど接点がない、家族には頼りたくないから自分でできることだけやりたい。そういう生の声が、対話の中から出てきたと聞きました。

 

 

課長がいちばん嬉しそうに話していたこと

いろいろ伺った中で、課長がいちばん嬉しそうだったのが、成果の数字の話ではありませんでした。

「デザイン思考をやってみて、前向きな職員が誰なのかが分かってきたんです」

いつもの決まった業務は、ミスなく正確に進めることが大事です。でもデザイン思考のプロジェクトは、正解のない問いに試行錯誤で挑む。使う筋肉が違います。その新しい進め方を「面白い」と感じて自分から動く職員が、部署をまたいで浮かび上がってきた。しかもその人たちが、プロジェクトが終わっても「変化を起こす仲間」としてつながっている。

これは聞いていて、いいなと思いました。台東区でも、業務改善やDXをいろいろ仕掛けています。でも各課はもう手一杯で、新しいことに前向きになれる余白がなかなかない。そんな中で「この人は前のめりだ」という原石が見つかるのは、それ自体が財産だと感じます。

うまくいった話だけじゃない

北区がいいなと思ったのは、うまくいかなかったことも年間報告書に正直に書いていたことです。視察でも隠さず話してくれました。

課をまたいで新しい課題が見つかっても、「最終的にどの課が責任を持つか」が決まりにくい。既存の事務分掌(どの課が何を担当するかの割り振り)にない仕事だからです。それに、こうした活動が正式な担当業務になっていないので、結局「熱意のある職員の自主的な努力」に頼ってしまう。予算や計画を年度単位でガッチリ決める行政のやり方と、途中で方向が変わる前提のデザイン思考とは、時間の流れが合わない。

このあたりは、台東区で新しいことを進めようとするときにぶつかる壁とまったく同じで、聞いていて何度もうなずきました。

伴走している一般社団法人「公共とデザイン」への委託費は年間1,200万円ほど。デザイナー3人が定期的に入って、会議の途中で「それってどうしてですか」とふと問いを投げかけてくれる。流れていきそうな話をいったん止めて、立ち返らせてくれる。課長は「あの人たちがいない状態で自分たちだけでできるようになったらいいんですけど、問いの立て方からしてまだまだ学ばないと」と話していました。

 

 

台東区に持ち帰りたいこと

視察を終えて、自分の街で試すなら、と考えたことが3つあります。

企画が固まってからデザイナーを呼ぶのではなく、「そもそも誰のための事業か」を問い直す最初の段階から入ってもらうこと。いきなり大きな予算をかけず、小さな対話や試作をすばやく繰り返せる「安全に失敗できる場所」をつくること。そして、住民のためにもっと工夫したいと思っている前向きな職員を見つけて、部署の垣根を越えて小さくつなぐこと。

役所にデザインを入れるって、市民に優しいサービスをつくるだけの話じゃないんだな、と思いました。職員自身が「問いを立てる面白さ」に気づいて、縦割りの組織をやわらかくほぐしていく。組織の体質改善に近いのかもしれません。

議員になってからずーっとこのあたりのことについて手法を探している気がしています。

フューチャーセンターや、ファシリテーション、ワークショップ。
どうやったら前例踏襲じゃなくて、アジャイル(システム開発で作りながら考える、修正していくこと)で施策ができるのか?

視察を受け入れてくださった北区議会と担当課のみなさんに感謝します。同じような課題を持つ自治体の方がいたら、どう感じたかぜひ聞かせてください。

この記事をシェアする

著者

本目 さよ

本目 さよ

肩書 台東区議会議員 /一般社団法人 WOMANSHIFT代表
党派・会派 無所属

本目 さよさんの最新ブログ

ホーム政党・政治家本目 さよ (ホンメ サヨ)役所にデザインが入ると、何が変わるのか。北区の視察に行ってきました

icon_arrow_b_whiteicon_arrow_r_whiteicon_arrow_t_whiteicon_calender_grayicon_email_blueicon_fbicon_fb_whiteicon_googleicon_google_whiteicon_homeicon_homepageicon_lineicon_loginicon_login2icon_password_blueicon_posticon_rankingicon_searchicon_searchicon_searchicon_searchicon_staricon_twitter_whiteicon_youtubeicon_postcode